魔王?一撃で決める
「も~…突っ込みが激しいよショコラちゃん泣」
「......」
「…えっ…!?まさか真面目に怒ってたり…!?」
「……」スタスタ
「え、ちょっ待ってよー!置いてかないで~」
…とにもかくにも、まずは魔王を倒せば良い。そうすればこの生活から抜け出せる!
俺はその一心で山の頂上を目指してひたすら登っていく。
二時間後ー
「……はぁ…頂上かな…?」
頂上らしき場所に到着。俺は辺りを見回した。
その時俺は誰かから肩を叩かれた。
「あ、もしかして君勇者かなっ?」
「え?」
振り向いた場所に居たのは角と、背中に翼の生えた少女。
「私クロエ!魔王だよ!これからよろしくね!」
彼女はそう言ってにっこりと笑った。
「え、いや…なんか根本的な事間違えてない?」
「えっ?何が?」
何がって……。
「や、だからさ、俺勇者なんだよ?」
「そうなの?ていうか君ってオレっ娘なんだねぇ」
…そこらへんに関しては説明が面倒なので省略しよう。
「で、君は魔王だよね?」
「うんっ!……あ、そっかそっか!」
クロエは思い出したようにぽんと手を打つと、俺から少し距離を取った。
「こほんっ……女神に選ばれし少女よ…我の前にその正義を見せてみろ…!!」
「いや今更キャラ作られても対応しにくいわ!」
「だってだって君が勇者だなんて知らなかったんだもーーん!ふえーん…」
クロエはあからさまな嘘泣きをしている。
「と、取り敢えず攻撃するから……な?」
そう言い、俺は右手を前に出した。右掌がブレイズの力でほのかに染まっている。
「えっ!ちょちょちょちょ!!やだよ!魔法とかずるいよ!!次の島に行かせてあげるから勘弁してぇ!」
「それじゃいみが…」
「まぁまぁショコラちゃん。彼女もきっとスライムのように爆ぜたくはないのだよ」
「あ、居たんだ」
「まさか本格的に見捨てられていたとは……まぁいい、取り敢えずここは鍵を貰うだけ貰って次の島に行かないか?」
魔女の提案…確かに間違ってはいない。クロエも戦闘する気はなさそうだし、鍵くれるそうだしまぁ…。
「…ふぇ…?」
俺はクロエの目の前へと進む。
「鍵くれよ、そしたら俺は危害加えないからさ」
「本当に!?」
「本当」
「…分かった!じゃあ今から取ってくるから待ってて!」
クロエは元気良くそう言うとそそくさとどこかへ行った。
30分後。
「お待たせー!ごめんね遅くなって」
「あぁ、...ん、それなの?」
クロエは華奢そうな右手に大きな鍵を握っている。
「うん!どうぞ?」
「おう、んじゃ遠慮なく……」
俺は何の躊躇いもなくクロエの手から鍵を取る。
…その瞬間、笑顔だった彼女の表情が突如としていたずらが成功した時の子どものような表情に変貌した。
「ふふ…放て、レグザヌス!!」
「えっ…」
その瞬間、激しい閃光と共に俺の体が2m程後ろへ吹き飛ばされるー
「あははは!馬鹿じゃないの!?そんな簡単に鍵渡すと思った???」
「な…っ!大丈夫かショコラ!?」
「……」
吹き飛ばされただけであんまりダメージは無い。俺は立ち上がると服についた砂を払い、ゆっくりとクロエの元へ歩み寄る。
「な…なによ」
「ブレイズ」
次の瞬間、目の前のすべてが炎に包まれるーーー
ティウンティウン
「きゅうぅー…」
「んじゃ、この鍵は貰っとくからな」
俺は気絶している魔王から鍵を取り、焼け野原と化した山頂を見回した。アマミヤがなんか言っていたが本当に一撃で倒せるんだなこれ…。まるでワ〇パンマンになったようや気分だ。