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えっ、それないの?

トムトム様主催、「バカンスに行くザンス」参加作品です。


「僕と先輩の異世界とりかえばや物語」(旧道の先には……)の宮本美久と絵梨紗の新婚旅行譚。

 僕は先日、絵梨紗ちゃんと7年越しの恋を実らせて、やっと結婚に漕ぎ着けた。いや、別に僕らの結婚に障害があった訳じゃない。……いや、あったと言えばあったんだけど、それは僕らがどんなに逆立ちしたって解決できるものじゃなく、時間だけがそれを解決する唯一の手段だったと言うだけ。で、僕たちは絵梨紗ちゃんが高校を出たこの春、晴れて夫婦となった。(ね、これじゃ僕がどんな魔法を使ったってムリでしょ)

 で、新婚旅行はどこにしようかと言う話になった時、真っ先にあがったのがリヒテンシュタイン。

 このリヒテンシュタインは、絵梨紗ちゃんのお母さん、クラウディアさんの故郷。もちろん、クラウディアさんの家族は招待したよ。でも、おじいちゃん、おばあちゃん(でも、そう言うには抵抗があるほど若々しい人たちなんだけどね)は来てくれたけど、銀行の頭取で国会議員でもある伯父さんは、時間の都合がどうしてもつかなかった。

【ヨーロッパなら最悪日帰りもできるが、日本ではな】

だそうだ。なので、こちらから顔を見せますということになったのだ。伯父さんは喜んで、

【迎えの車を寄越すよ。ミュンヘンとチューリッヒどっちが良い】

と言ってくれた。けど、迎えに来てくれるところが変。僕の記憶に間違いがなければ、ミュンヘンはドイツだし、チューリッヒはスイスだと思うけど。 僕が首を傾げていると、

「決まってるよ、リヒテンシュタインには空港ないもん」

絵梨紗ちゃんが当然のことのようにそう言った。えっ、国の中に一つもないの? 

 それもそのはず、リヒテンシュタインは小豆島に毛の生えた程度の面積しかない。ムリに空港を作らなくても、2時間ほども走れば、ドイツかオーストリアあるいはスイスの空港にたどり着くので、存在しないのだ。

 とは言え、車で迎えに来てもらうのは伯父さん本人じゃなくてもさすがに気が引けるし。せっかくの新婚旅行だもん。二人で旅したいでしょ。

 後お義父さんも、

「じゃぁ、チューリッヒに置いてある私の車を使うか?」

と言ってくれたんだけど、それもありがたく辞退した。

 だって、それって確実に左ハンドルだもん。国産軽自動車愛用の僕に運転できる訳がない。しかも車線まで反対だなんて、事故らない自信なんて全くないから。

 だからここは、日本の観光客がフツーに使う手段、チューリッヒから電車とバスを乗り継いででリヒテンシュタインを目指すことになった。

「ま、方向音痴の宮本は、その方が迷わなくていいだろ」

とニヤニヤ笑う、今は社長の先輩の言葉に送られて、僕たちは成田からチューリッヒ行きの飛行機に乗り込んだ。それも、わざわざ直行便に乗るために、丸2日待っての出発だよ。どんだけ信用されてないんだか。

 ま、良いけどね。飛行機の乗り換えって地味にウザいしさ。

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