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愛守戦隊 ラブレンジャー!

作者: 谷崎みのる

拙いですが、どうぞお楽しみ下さい。誤字脱字の報告は大歓迎です。

 青く晴れ渡った空に響く、重厚な鐘の音。そう。この鐘の音は……。



「美保子ちゃんとの結婚式の鐘の音!?っだぁ!?」

 ベッドから勢い良く転げ落ち、打ったらしい頭を押さえているのはまだ若い青年だった。涙目どころかすでに涙すら零れているが、情けないとは言わないでいてあげて欲しい。痛々しい音がさして広くも無い部屋とはいえ、響き渡ったレベルに勢い良く彼は頭をぶつけたのだから。

「くっ……。夢、か」

 ふぅ、と小さくため息をつき、青年はジリジリとうるさい目覚ましを止める。そして窓の外を見た。夢ほど青くは無いけれどそれでも十分に清々しい、良く晴れた朝がそこにある。

「今日こそは……美保子ちゃんに告白するぞー!」

 今日は大安吉日の上にいい天気!これは天が俺に味方してくれているんだ!

 そんなことを叫びつつ、拳を突き上げる青年の名は愛田護あいだまもる。今年21歳、大学3年生というまだまだ夢と希望に満ち、でもちょっぴり就職難の時代に不安なんかを持っている、どこにでもいるような青年だった。






 闘志(?)を漲らせつつ身支度を整えていると、玄関から明るい女性の声が聞こえてきた。

「護ー?まだ寝てるの?」

「うげ!?もうそんな時間か!あと一分待ってくれー!」

 ちょうど焼きあがったトーストにバターを適当にぬり、食べながら鞄をつかんで玄関目指して走る。勢い良くドアを開けると、そこには明るい茶髪を肩で切りそろえた美人がいた。まぁ、どれほどの美人だとしても、今の護の眼には件の美保子ちゃん以外は美人に見えてはいないのだが。

「悪い、桃香ももか!遅くなった!」

「急いでよ。遅刻しちゃうわ」

 頭を下げつつ2人は足早に大学へと向かう。

「護、あんたそろそろ部屋汚くなってるでしょ。片付けてあげるからさ、夕飯…」

「オッケーオッケー。部屋片してくれるなら和でも洋でも作っちゃうぜ!」

 軽口を叩きながら2人は笑いあう。彼らの関係は生まれた病院から、大学の学部までまったく同じ道を歩いてきた幼馴染だ。20をこえてもその関係は幼馴染から動かず、一人暮らしの際には、親たちも「この方が安心だからねぇ」と、隣同士のアパートを用意するぐらいに、2人の関係は幼馴染である。もう兄弟と言ってもいいかもしれない。

「じゃ、中華で」

「え、中華?うーん……回鍋肉ホイコーローとか?あんまり得意じゃないんだけどなぁ」

 料理が出来ない桃香と、掃除が出来ない護。大学に入ってから二年強経つが、2人の部屋を隣同士に用意した親達の目は確かである。互いに持ちつ持たれつの関係を保ちつつ、今日も2人は大学へ向かう。

 その後ろ姿が完全に見え無くなってから数分も過ぎていない廊下に、ポツリと声が落ちた。

『…ここに、居たはずなのに…』







「愛田ー夢宮ゆめみやー。古賀教授が呼んでたぜ。今すぐ教授室に来いってさ」

 今日の全ての授業が終わり、急いで荷物をまとめている護の背中にかかった友人の声。振り返ったはいいが、その顔は凶悪としか言いようの無いくらいに恐ろしかった。声をかけた友人が、思わず一歩引く。

 やべぇ。こえぇ。

 それが偽りようの無い友人の本音である。

「くそ……。俺と桃香、両方を呼ぶってことは今朝の遅刻の件か」

「古賀教授のことだから、きっと何かしら罰則をくださるんでしょうねぇ。休みの人にはお咎めないのに。5分も遅刻してないんだし、見逃してくれたっていいじゃないの」

「俺に愚痴るなよ。俺、ただの連絡役だし。じゃ、確かに伝えたからな~。さらなる罰則くらう前に教授んとこ行けよ、2人とも」

 俺は先に帰るぜ、と清々しい笑顔を見せる友人は、睨む護にわざとらしく手を振って教室を出て行く。

「ああああ……、美保子ちゃん……」

「仕方ないわ。行きましょ。古賀教授は時間に煩いし、待たせるとどんな無理難題言ってくるか分かんないんだから」

 頭を抱えつつもとぼとぼと教授室に向かう護の耳に、朗報が飛び込んでくる。それも告白する!とまで決意した、愛すべき女性本人の声で。

「今日は何食べる?」

「最近、学食の日替わり定食がメニューが一新されたって聞いたの。最近学食で食べてなかったし、久しぶりにどう?それに私――――だし……」

「きゃぁもう!美保子ったらー」

 きゃわきゃわと笑いあいながら去っていく、数名の女性陣。その中にいた愛しの女性の姿を見たとたんに、護の背筋が伸ばされる。

 それを見て桃香は小さくため息を吐いた。この後に続く言葉が予想できたからだ。

「行くぞ!桃香!急がないと間に合わない!」

 数瞬前までのやる気の無さがまるで幻か何かのような護に、桃香はもう一度大きなため息を吐くのだった。







 ピークは過ぎたもののまだお昼時といえる時間に、日が差し込まない為か薄暗い、古書特有の匂いのこもった部屋にうごめく影があった。護と桃香である。

「護。あんたの黒髪が白髪になってるよ」

 白髪は言い過ぎかもしれないが、遠くから見たら黒髪と分からないレベルに、護の頭上に埃が積もっていた。普段は使っていない書庫だとは聞いていたが、それにしても酷いと言わざるを得ないレベルの埃の積もり具合だ。マスクは持っていなかったので、応急処置としてタオルやハンカチで口を覆っているが、時折むせてしまう。

「そういう桃香も白髪だぜ?…お年はおいくつですかー?」

 バカにしたように笑う護の頭を叩いて、桃香はため息を吐いた。

 …終わりが見えないのだ。

「…いくら狭いっていっても、こんなに埃の積もった書庫の整理とか、無理でしょ…」

 思わず愚痴が零れる。一部埃の殆どないエリアはあるが、そこは教授や大学院の生徒が使っていたらしく、紐閉じの資料や分厚いハードカバーの本が乱雑に、床にまで積みあがっている。

「とりあえず、床とかに広がる本だけでも片付けちゃいましょ。掃除?言われてないじゃない。だったら余計な苦労は負わないのが懸命ってものなのよ」

 場所を分けて片付けを進める。と言っても、主に片付けているのは桃香だったが。

 だが桃香は何も言わない。護が本当に、とんでもなく掃除や片づけが苦手なことをよくよく分かっているからだ。床に広がる本や資料を渡してくれるだけで、マシだとさえ思っている。

「後は…あぁ。あそこの本を棚に戻したらおしまい、ね」

 桃香がようやく見えた終わりに、大きく息を吐いた。吸うことはしない。窓を開けていようとも舞う埃が多く、いくらハンカチで覆っていても吸い込んでしまいそうだからだ。とは言っても、息を吸わずに生きていける人間などいるわけがないので、実際には埃も含めて吸っているのだが。

「これぐらいで良いかしら……。護、そこの資料をちょうだい。それで終わり、でいいでしょうよ」

「おー了解。これな。……オッケー?もういい?いいよな?」

 護は期待を込めた目で桃香を見た。それを確認することもなく、桃香は左手をひらりと振った。

「…好きにしなさいよね」

「いよっしゃー!!行ってくる!」

「ちょ、走らないでよ!埃が舞…って、もういないし…」

 光を受けて室内がきらきらときらめく幻想的な光景の中(でも正体は所詮埃)、桃香は叫びながら振り返って、大きくため息を零した。諦めを含みつつも、どこか微笑ましげなため息を。

「さて、終わったし帰ろ『ミツケタ…』っ!?」

 桃香が振り返った時、そこには光があった。







 護は必死に走っていた。お昼のピークを過ぎてずいぶんと人の少なくなった学食には目的の人物はおらず、友人に確かめるとつい先程食事を終えて出て行ったとのこと。総合大学であるために敷地は広く、生徒が使う門も正門の他に3つほど存在している上に学食からは遠い。急いだとしても追いつけない可能性もある。だが幸いな事に、護は目的の人物がいつも使っている門が正門であることを知っていた。正門なら学食から一番近い門である。まだ希望は残っていると護は自分を励ました。

「こっからなら…中庭を通り抜けた方が早い、か…!」

 ハードルの要領で背の低い植木を飛び越え、そこで護は急ブレーキをかけた。中庭に設置されている数個のベンチのそばに、女性が一人で立っていたからだ。かばんを足元に置き、腰まであるストレートの亜麻色の髪を風に遊ばせているその女性は、護が探していた人物『杉浦美保子』その人だった。

 思わずガッツポーズをした護はそこではた、と気付いた。

 急ブレーキをかけるために、護は近くのやや細い木に手を(ほとんどぶつかるような勢いで)添えてスピードを落とした。当たり前のことだが、木は盛大に揺れて大きな音をたてる。四方を校舎に囲まれている中庭で、木を揺らすほどの風など台風でも来ない限りは吹くはずもない。そして今日はよく晴れた風の穏やかな日。春と言うには緑も増え、初夏というにはまだまだ涼しい4月の終わりにそうそう木が大きな音をたてるはずもないし、かなり大きな音がしたため普通ならば振り返るだろうに、彼女は振り返るどころか肩をはねさせる事すらしなかった。

「あの…杉浦美保子ちゃん、ですよね…?」

 どこかおかしな雰囲気を感じ、護は恐る恐る声をかけた。

 それがきっかけだったのだろうか。彼女は唐突に、勢い良く上を見上げた。

「ああぁぁぁァァァァアァァ!!!」

「!?」

 響く叫び声。中庭に光が溢れ、突風が駆け抜けた。護は吹き飛ばされ、植え込みに頭から突っ込むはめになる。

「…え?何あれ?」

 なんとか上半身を起こし護はカパ、と口を開けた。

 中庭にいたのは杉浦美保子ではなかった。茶色と緑を基調とした体をもつ、どこからどう見ても人間ではないモノ。成人男性程の身長の何かがいた。

 意味のない言葉を叫びながら足を踏み鳴らしているところから、ソレは生き物であるのは間違いないだろう。だが明らかに人間ではなく、動物、というわけでもなさそうで…、

「おいおい…夢かよ…?」

 護は口元が引き攣っている自覚があった。口からこぼれた言葉も、無意識のうちにでた言葉で。

「グルォ…」

 ソレがピタリと動きを止め振り返った。そしてこちらに向かって走ってくる。思わず漏れた護の声が聞こえたのだろう。緊張していたためか、その動きは異常なほどゆっくりに感じられた。

「…ガァァァ!!」

「ぎゃあぁぁぁ!?」

 自身に向かって振り上げられた鋭い爪のついた腕。叫び声こそ上げたものの、動くことなど出来ずに強く目を閉じた。

「何してるの!さっさと動きなさいよ!」

「はい!」

 護は反射的に顔を上げた。覚悟していた痛みはなく、その怒鳴り声にはとても聞き覚えがあったために。

「…どちら様?」

 だが目の前に立つ人物に、思わず目を瞬かせた。

 護をかばうようにソレ…化け物の腕を押し返しているのは、ピンクの人だった。正確に言うならば、ピンクを全身に纏う人だった。ピンクのフルフェイスで顔はわからず、足の爪の先までピンクのブーツで。腰にはハートをあしらった短剣が下げられている。

「んなこと今はいいから、ラヴィ!さっさとして頂戴!長くは持たないわよ!」

 化け物を蹴っ飛ばし、ピンクの人(声もしゃべり方も女の人)は叫ぶ。

『うん。少し、時間をもらうよ』

「急いで。…ラブレス、少し大人しくしてもらうわよ。ラブシャワー!!」

 ピンクの人の言葉と同時に短剣が降り注ぐ。それも、化け物の上にだけ。

 だが護が確認できたのはそこまでだった。

『僕の話を聞いてくれ』

 ふわりと降りてきた光に声をかけられ、護の意識は途切れた。







『聞こえる?僕の声』

 護は聞こえてきた声に閉じていた目を開いた。目の前にいたのは金髪碧眼の少年。年の頃は10歳位だろうか。辺りは真っ暗で、少年と己以外には誰も存在しないように思えた。

『僕の声は特定の人にしか届かない。だから僕の声が聴こえるキミに協力して欲しいんだ』

 少年の背中には2対4枚の純白の翼があった。

『今世界は愛に飢えている』

「愛…」

 許容範囲を超えてしまったのか、護はどこかぼんやりとしたまま少年を見つめてつぶやく。

『そう、愛。人間には愛が必要なんだ。でも…今、愛を見失う人が増えてきた。そして、それを利用して地球を好きなようにしようとしている奴らが、いるんだ』

 少年は祈るように握りしめていた手を開き、護に差し出す。その手の中には、あふれんばかりの暖かな真紅の光。

『愛を知る稀有なる者、愛田護。愛を見失った、忘れてしまった人々に愛を思い出させてほしい。もう、僕の声は彼らには届かない…。だから、キミの心に溢れる愛を、どうか…』

 泣きそうな表情を浮かべる少年を見下ろし、護は頷いた。

「よくわからないけどさ、お前は困ってて、俺はそれを何とかする手段を持ってるってことなんだな?だったら任せろ!困ってるやつを見捨てるなんてこと、絶対しないから!」

 に、と笑って護は少年の頭をやや乱暴になでた。

「もう知ってるみたいだけど、俺は愛田護!お前の名前は?」

 少年は護の手の下でぱっと笑う。明るい、迷子が親をようやく見つけたような笑顔だった。

『僕はラヴィ!愛を伝える天使!愛を守るために、これからよろしくね!』

「おう!」

 ラヴィの手の中の光が二人包み込む。今度は意識が途切れることもなく、護は再び中庭に立っていた。







護は心の奥底から力が湧き出てくるのを感じていた。こんこんと、絶えることなく湧き出てくるこの力は…そう!愛の力!

「愛とは素晴らしいもの…それを忘れてしまうのは、人生を棒に振ることだ!」

 護の体を中心に赤い光が生まれる。その赤い光は護の体を守るように包み込み、そして赤い全身スーツへと変わった。ヘルメットからスーツまで真紅で、その腰には銃が下げられている。その銃にはハートがあしらわれており、ピンクの人の短剣と何処か似ていた。

「桃香…いや、ラブピンク!遅くなってごめん!」

 化け物に一発蹴りを入れて距離を稼ぎ、護は軽く頭を下げた。今ならば彼女が誰なのかはっきりわかる。いつも一緒にいた、家族のような存在の桃香…ラブピンク。

 顔は見えないものの、ラブピンクは苦笑を浮かべたのがわかる。

「おっそいのよ、ラブレッド。…結構弱らせたから、あんたが終わらせなさいよね」

 軽く肩で息をしながら、ラブピンクは一歩下がる。入れ替わるように前に出た護…ラブレッドの手には腰に下げられていた銃が握られていた。

「あぁ。…ところで、あれって名前なんて言うんだ?俺、ラヴィから聞くの忘れてたんだよね」

「…呆れた。それぐらい聞いておきなさいよね…。ラブレスよ。愛無き者…ラブレス」

 肩をすくめながらも答えてくれたラブピンクに頷き、ラブレッドは銃を構えた。その視線が捉えるのは、ふらつきながらもこちらに向かって攻撃しようと走り込んでくるラブレスの姿。

「思いだせ。君の中に眠る愛を。君が与え、与えられた愛があるはずだ」

「グ、ガァァ…!」

 ラブレスは苦しそうに息をしながらも腕を振り上げる。

「思いだせ!君の中の深い愛を!ラブ、ショットォォォ!!」

 白い光がラブレスの胸を貫いた。

 だが、その光はラブレスの体を損なうことなく貫通し…、

「…アあぁ…」

 柔らかな光がラブレスを包み、一瞬の後には地面に倒れ伏す杉浦美保子がそこにいた。







 駆けつけた救急隊員と警察に説明しているのは、護と桃香の二人だった。美保子はまだ意識がはっきりしていないのか、どこかぼんやりと中空を見つめたままである。

「んで、気がついたらそこで杉浦さんが倒れていた、と?」

手帳片手に首を傾げる刑事に二人はしっかり頷いた。

「…光った後に、倒れてた…ねぇ…。最近こういうの多過ぎるだろうよ…」

 大きくため息を吐いて手帳を閉じ、刑事は疲れたように肩を落とした。ぼそりと漏らした愚痴によると、外傷もなく唐突に光とともに倒れる人がここ一ヶ月で急増しているのだとか。季節が夏なら熱中症とかも有り得るが、この時期にそれはないだろう。

「まぁ光を目撃してるなら、念の為に一度検査してもらえ。何かあってからでは遅いしな」

 そう言って刑事は苦く笑い、離れていく。

 事件ではあってもあまりに謎が多すぎて容疑者などもいるはずもなく、目撃者である護達もすぐに開放されることになった。

「美保子!!」

 どこかぼんやりとしたままベンチに座り込んで救急隊員の問いに答えていた美保子が勢い良く顔を上げた。

「倒れたって聞いて…!」

 駆け寄ってきたのは護も知っている人物だった。話したことはないが同じ学部の青年で、所属ゼミが同じ友人らしき仲間と笑い合っている姿を何度か見たことがある。

「…柚希ゆずき…ど、して…」

「普通彼女が倒れたって聞いたら走ってくるだろ!」

 約束の時間になっても来ないしさ。

 息を切らしながらも走ってきた青年は救急隊員に状態を尋ね、笑う。特に問題もなさそうでよかったと、心底安心したように。

「念の為に一度病院で検査してもらいますので、良かったら君も一緒に乗るといい」

「あ、はい!そうさせて頂きます!」

 救急隊員や警察関係医者達の暖かな眼差しの中、青年は美保子に付き添って救急車に乗り込み病院へ一緒に向かっていった。

 それをばっちりしっかり目撃し、護はまさしくorzの格好をとった。

「…彼氏…いたのかよ…!!」

 桃香は何も言わず、ただ護の肩を叩くに留めた。







「多分だけど、彼女がラブレスになった理由は彼氏さんとのことが原因だと思う」

 校門で兄姉を待つ小学生のように護達にさらっと合流し、ラヴィは二人の疑問に答えていた。その手にはつい先程スーパーで買ったアイスが握られており、傍目には仲の良い兄弟以外の何者でもない。

「彼氏さんの愛に疑問を持ったんだよ。でも彼女の愛は深くて、深すぎたからその分、失ったと思った時の反動がすごかったんだと思う。愛を信じられなくなって、見失って…その身をラブレスへと変えた」

「…つまり、誰がラブレスになってもおかしくないのね…」

 ラヴィと手をつないでいる桃香は難しい顔でため息を吐いた。

「…間違いなく、裏で糸を引いている者がいるんだ。この世界を、ラブレスで満たそうとしてる奴が…」

 アイスを舐めるのをやめて地面を見つめるラヴィの頭が揺れた。ラヴィが頭を上げるとそこにはラヴィの頭をぐしゃぐしゃにかき回す、満面の笑みの護がいた。

「心配すんなって!愛ってヤツはさ、絶対に勝つんだ!無くなるようなもんじゃねぇし、もし無くしたって誰かと育てたりすることだって出来るんだぜ?」

「今日のあんたの愛は間違いなく育てる前に潰えたけどね」

 桃香の突っ込みに護は口をへの字に歪ませたものの、またすぐにラヴィに笑いかけた。

「とにかく!俺達がいる!もう心配すんなって!大船に乗ったつもりでどーん!って構えてろよ」

「……うん!!」




 ここから世界を守る戦士達の戦いが始まったのだ。

 頑張れ!ラブレンジャー!世界の明日は君たちに託された!




 ……のかも知れない。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 子供や特撮好きの大人をターゲットにした特撮作品と見れば、テーマがわかりやすく設定も面白いです。 [気になる点] 特撮好きでない人が読むにはきつい内容だと思いました。 また誤字脱字を見つけた…
2014/01/21 09:48 退会済み
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