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2-2

「これ以上何か余計なことを考える前に部室行くか……」


 たった今帰りの支度を始めた宝船を除いて、僕以外のクラスメイトはほとんど教室を出払ってしまっていた。いや、ほとんどと言うか全くいない。教室を最後に出る人になるのは嫌である。何故なら、教室を最後に出ると自動的に教室の扉を施錠する役割を押し付けられてしまうからだ。


 鍵を掛けるだけならいいんだけど、その後に教室の鍵を職員室まで持って行かないといけないというのが面倒臭い。


 という訳で急がなければ、宝船が帰り支度を終わらせてしまう前に。


 なんてことを思っていたら、不意に立ち上がった宝船が鞄を肩にかけて教室の出入り口へと向かい始めた。既に僕と宝船以外にこの教室には生徒がいない。


「鍵閉めか……面倒だな」


 溜息をついて、僕は呆然とその場に立ち尽くす。


 そんな時だった。


「萩嶺君」


 突然、僕は宝船から名前を呼ばれた。顔を上げると、教室の出入り口からこちらを見ている宝船の姿がそこにはあって。


「まだ帰らない? 今すぐに帰るなら、私が鍵を閉めて職員室に持って行くけど」



 ◆ ◆ ◆



 宝船からの突然の申し出に急いで帰り支度を整えた僕は足早に教室から出た。


 現在、僕の目の前では宝船が教室の施錠を行っている。教室の出入り口である扉だけに飽き足らず、窓の鍵も全てチェックしているところを見ると、やはり宝船という人間は良い意味で真面目な人間なんだなあ、と思ってしまう。こういう真面目さが日々の好成績が教師達への良い評判に繋がっているのだろう。


「よし、これで全部チェック終了、っと……あれ? 萩嶺君、私のチェックが終わるまで待っててくれたの?」


「ああ、いや、何と言うか……」


 教室全体の施錠点検を終えた宝船がこちらに歩いてくる。基本彩楓以外の女子との会話の経験値が少ない僕としては、そういう風に歩み寄られるとどうすればいいのか分からない。ていうか近付かないで下さいお願いします。


「きょ、教室の施錠が面倒臭かったから……その、宝船が全部やってくれて、お礼を言おうかな、って」


「そうなの? お礼なんて、別に良かったのに」


 少し驚いたような口ぶりの宝船。彼女は今どんな顔をしているのだろう。宝船と全く視線が合わせられないため、彼女が今どんな表情を浮かべているのか分からない。僕のコミュ障ぶりに引いていないといいのだが。


「そう言えば、萩嶺君って部活入ってるんだっけ?」


 おいおいまだ会話を進めるのか。正直もう限界が近いのだが。


 しかし、話しかけられてそれを無視できるほど僕の心は強くなかったので。


「そ、そう、だけど?」


 と、宝船に返事をした。少し噛んだ。何だろう、物凄く恥ずかしい。

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