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3-3

「今帰り? てか、部活で帰るの遅れたあたしより帰るの遅いってどうなの?」


「寄り道してたからな、仕方ない」


 そう言葉を返しながら僕は彩楓の前で立ち止まった。


「そう言うお前はもう帰って着替えまで済ましてるのな」


 気付けば、彩楓は既に制服ではなく上から下まで淡いピンク色のジャージでその身を覆っていた。


「今からジョギングか?」


「そうそう。直斗も一緒に来る?」


「行く訳ないだろ。お前と一緒に走ったら体力もたねえよ」


「またそんなこと言ってー。何てことないじゃん、町内一周くらい」


「ジョギングで町内一周する時点でおかしいだろうが」


 そして、それを毎日難無くこなしているお前も充分におかしい。


「いつかは一緒に走ろうね」


「お断りします」


「ゲームもいいけど運動もしないと駄目だよ?」


「運動なら毎日してるよ、ステージのラスボス倒すの頑張ってる」


「それ頑張ってるの直斗じゃなくて直斗が操作してるキャラの方じゃん」


「……彩楓も賢くなったな」


「何それどういう意味!? あたしそんなにバカじゃないよ!?」


「とにかくジョギングには1人で行ってくれ。僕は今から帰って録画したアニメを昇華する作業に入らなければならないんだ」


「むーっ、まあいいけど。どうせ誘っても一緒に走ってくれないことは分かってたしね」


「だったら最初から誘わないでくれよ」


「もしかしてって可能性に賭けてみたの! 結果は大惨敗だけどね……あっ、そうだ直斗」


 ストレッチの一環だろうか、天に向かって伸ばした左腕を右手で引っ張りながら彩楓は背伸びをしている。


「今日の晩御飯、カレーだって。お母さんが」


「シーフード?」


「ううん、普通のカレー」


「それは良かった。最近のカレーずっとシーフードだったからな。今日もシーフードかと思って少し焦ったよ」


「私のお母さんもそこまで気が利かない訳じゃないよ。うーん……あたしも料理してみようかなあ」


「止めてくれ、まだ僕は死にたくないぞ」


「だからそれどういう意味!?」


 そのままの意味だよ。それ以上でもそれ以下でもない。


 と言うのも、僕は小学生の頃のバレンタインデーに彩楓から「はい、これ私の手作りチョコ!」とその名の通り手作りのチョコクッキーを貰ったことがある。あの頃の僕は非常に愚かであり、バレンタインデーという雰囲気に呑まれてしまい、何の警戒もすることなく彩楓からそのチョコクッキーを受け取ってしまったのだ。


 その後、帰宅し、箱を開封して取り出したチョコクッキーを食べた僕は何だか不思議な味覚に襲われたことを今でも憶えている。不味くもない、かと言って美味しくもないあの何とも不思議な味――小学生の頃の味覚を高校生となった現在でも憶えている、ということでそのチョコクッキーを不味さを分かって欲しい。不思議な味覚ゆえに、詳細な説明が不可能なのである。きっと、彩楓は何か特別な製造方法であのチョコクッキーを創造したに違いない。

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