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2-7

 ビルのエレベーターで3階まで上がった僕はまるで吸い寄せられるかのように通路を右へ左へ迂回し、『アニメテオ』へと難無く辿り着く。まあ、単に行き慣れているだけなのだが。


 店内は入り口からでも分かるほどに賑わっていた。『アニメテオ』はトレーディングカードの販売も行っており、店内にはそのカードをプレイするスペースも存在する。カードをプレイする人、友達と一緒にオタク話で盛り上がっている人、いそいそとレジ前に並んでいる客を1秒でも早く昇華するためにせっせとレジを打っている店員の客を案内する声――などなど、今日も『アニメテオ』は賑わいを見せている。


 僕は『アニメテオ』の中に入り、すぐさま左へ曲がった。それはライトノベルのコーナーがお店の左側に集中しているからだ。店内を行き交う人々の間をすり抜けて、僕はライトノベルコーナーの今週の最新刊だけを集めた場所に辿り着く。


 しかし、『銀翼の祈祷師』の新刊は見当たらなかった。


 ひょっとして売り切れたか――とも思ったが、売り切れたのならこの様々なライトノベルが山積みとなっているこのコーナーのどこかに穴が空いているはずだ。だが、『売り切れ』を表すその穴は存在しない。だとすれば、『銀翼の祈祷師』の最新刊はどこか別の場所に置いてあるのか。


 周囲を見渡してみる。すると、『それ』を僕はすぐに発見することが出来た。


 ラノベのコーナーの一角に『銀翼の祈祷師』のシリーズだけを一箇所に纏めたスペースがある。おそらく、特典付属の最新刊の発売に合わせて特設スペースを設置したのだろう。流石は『アニメテオ』、気が利く。


 僕はその『銀翼の祈祷師』コーナーに向かおうとして、その足を止めた。何故なら、また先程の見るからに怪しい女性が『銀翼の祈祷師』のコーナーの前に現れたからだ。どうやら、あの人物も僕と同じで『銀翼の祈祷師』の最新刊が目当てらしい。


「……どうしよ」


 出来れば近付きたくはない。だが、あんな不審人物のためだけに購入を遅らせる理由もない。


 欲しいものを目の前にした僕は普段よりアグレッシブなのである。この世で最も不要な豆知識の内の一つだ。


 そういう訳で、僕は止めていた足を動かし、『銀翼の祈祷師』のコーナーへ向かった。


 全身黒ずくめの怪しげな女性の隣に立つ形となる僕。『銀翼の祈祷師』の最新刊を手に取りながら一体こいつはどんな人物なのだろうと何度か視線をさり気無く横に向けてみる。しかし、顔のほとんどが隠れてしまっているため、やはりこの女性の素性を知ることは出来ない。


 無理か――そう思って5度目の視線を女性に向けた瞬間、あろうことか何とその女性と目が合ってしまった。


 これはヤバい。


 女性に視線を向けるだけで犯罪になったっけ? いや、あっちも中々不審な格好をしているし――などと僕が意味の分からない不安を感じていた時だった。


「げっ!?」


 不意にそんな声が僕の鼓膜を震わせたのである。そして、その声がどこから聞こえてきたのかと思えば、今僕の隣に立っている見るからに怪しい全身黒ずくめの女性からだった。

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