No.2_選評会&王子とのご対面!
改稿作業ひとつ終了!
今は休憩中。
試験は4日後!!
アルベルト様に引き取られて約1年。
私は立派なメイドになるべくさまざまなことを身につけた。
メイドの基本となる掃除・洗濯はもちろん、この国の礼儀や教養、情勢など。
それから王子に関することも。
誕生日や年齢などの一般的なプロフィール、それから何が好きで何が嫌いか…とか。
生まれや育ちは非公開。もしかして幼い頃の記憶がないんじゃないかって話もある。
というのも王様と王妃様の間には子供が出来ず、勉学に秀でてていた王子は養子として引き取られたそう。
本当の親子のように仲がいいけど、姿を見れば一目瞭然。茶髪が主流であるこの国の髪色は王族も例外ではなく、皆美しい茶髪。
その中で1人、王子の髪も同様に美しいけれど色が決定的に違うとのこと。
聞くところによると王子はかなりの美青年で、国民に「天使」と形容される程の人気ぶり。その理由は容姿にある。
輝く金色の髪に、深い海を思わせる青い瞳。端正な顔立ちと、柔らかい声。笑顔は破壊力満点。
背はおよそ179cmで華奢な体つき。性格は穏やかだが、時折見せる表情に残るあどけなさ。
噂だから信憑性に欠けるけど、国民の絶大な支持率を見たところどうやら本当らしい。
金髪と青い瞳と言われてハルを思い出した。でもハルが王子なんてありえない。
なんてったって行方不明中なんだから。
☆*。☆*。☆*。☆*。☆*。
————今日、ついに王子の専属メイドの選評会が行われる。
場所はお城の大広間。
選評会は一般にも公開され、投票は国民投票と王族投票で行われる。
この国である行事のなかでも有数の盛大なお祭りの1つで、広間には豪華な飾り付けが施されている。
第一次審査の参加者は1万2679万人。第一次審査はいわゆる筆記試験のようなもので、地方各地に試験会場が設置された。
これで個人の礼儀や教養の知識を量るのだ。
通過者は8945万人。それと同時に第二次審査の参加者でもある。
第二次審査は例えるなら実技試験。第一次審査と同じ会場で3日間にも渡って、審査が行われた。
合格条件は満点のみ。かなりのプレッシャーで、体調が悪くなって途中棄権する人もしばしば。
実際私も途中で棄権しそうになった。
アベルト様の「何もしなかった後悔で涙するより、最後まで全力でやりきって涙するほうがよっぽどいい」という言葉でなんとか持ち直せたけれど。
途中棄権者は146人。その中でふるいに掛けられ、最後まで残ったのはたったの15人。
もちろん私もその中の1人。
主催者である王様と王妃様は中央奥の玉座に。王子は王様の横の席。
だけど姿は警備に囲まれていて見えない。
「静粛に」
ざわめいていた広間が一瞬で静かになる。しんとした広間に響き渡る王様の声。
「これよりカイル王子の専属メイド 最終選評会を行う」
今までの審査ですでに必要な知識は調べられていた。今回の選評は容姿と接待。
私の周りにいるのは茶髪できれいな瞳を持った女の人ばかり。
銀髪にすみれ色の瞳を持つ私は、その中で浮いていた。
この国の投票というのは投票者が直接メイドと関わることで決められる。
つまり国民や王族を相手にどれだけ誠意を持って接することが出来るかが重要なのだ。
そして私は今日の一週間前から、アベルト様を相手にこの練習をたくさんしてきた。
何度も何度も同じような質問や話題を繰り返し、それを笑顔を持ってして対応出来るように練習を重ねた。
実際、いろんな人に髪や瞳の色のことを聞かれた。もともとだと言っても信じてくれない人もいた。
少し苛立ったけど、アベルト様の努力を水の泡にしたくなくて一生懸命笑顔を作る。
「これより投票を行う。国民投票は1人につき10点、王族投票は1人につき20点とする。また、王子による異論があればそれらは無効。王子の意向に従うものとする」
王様の厳かな声が始まりを告げる。
正直、最終的に王子の意向に沿うなら投票なんかしなくてもいいじゃないとは思ったけど。
説明のあと、投票が行われた。最初に国民が、その後に王族が箱に選んだ人の名前を書いた紙を入れていくらしい。
開票の時間がかなりかかりそうだから解散するのかと思ったら、違った。
人海戦術でどんどん片付けて行く。その間に休憩時間がとられ、やっと一息。
他の専属メイド候補の子と目が合った。笑顔で返すと、少し睨まれた。
–——どうやら嫌われてるらしい。他の子を見ても、目を逸らされたりするだけ。
気分が落ちたからずっと静かに結果を待った。
王様が壇上にあがる。
「これより投票結果を発表する。」
発表は投票番号の順位順。私は2番。
「5位、3番。4位、5番。3位、1番。2位、2番。1位、4番。よって王子の専属メイドは投票により4番、エナータ・メイストとする。」
拍手が沸き起こり、祝いの言葉が頭上で飛び交った。
そんな中、私は呆然としたまま硬直していた。
嘘……せっかくアベルト様が練習に付き合ってくださったのに……。
「王子、異論は?」
もし、王子が私を選んでくださるのなら、私は生涯をかけて王子のために尽力いたします……!
どうか、どうか王子に選ばれますように…
王子がゆっくりと口を開いた。
「僕は……2番のメイドを指名したい」
柔らかい声が広間に響く。会場が一気にざわついた。
私!?願いが届いた……!ありがとうございます……!!
「よかろう、訂正する。王子の専属メイドは、王子自身の意向により2番、ルイリア・コートンとする!ルイリア・コートンよ、前へ」
「はい……!」
足が震える。拍手が再び会場を包んだ。王様の前で跪く。
「これよりそなたをカイル王子の専属メイドに任命する。誇りを持って尽力するがよい」
「承知いたしました」
「終了後、城を案内させよう。王子のもとで早速世話をするように」
「はい」
閉会してすぐ、アベルト様のところへ向かった。
「ルイリアよく頑張ったね…!」
「ありがとうございます!アベルト様のおかげです」
「そんなことを言うんじゃないよ。全てはルイリアの力だ。しっかり頑張るんだよ」
「はい!」
嬉しくて、つい涙が流れた。男性が1人近づいてくる。
「私はガルイス・サイルス。ガルイスとお呼びなさい。城内を案内します。ルイリア」
「かしこまりました、ガルイス様」
いそいで涙を拭う。アベルト様に一礼してその場を去った。
ガルイス様についてお城をまわる。
廊下の壁には先代の王様や王妃様の肖像画がピカピカに磨かれて掛けられている。
城内は静かだった。まだ大広間の方で片付けが行われているようだ。
歩きながら簡単にメイドの仕事の説明を受けた。
私の仕事は主に王子のお世話。別邸の空き部屋に寝泊まりして一日中王子のそばで働かなければならない。
案内されたのは、食堂・浴場・リネン室・キッチンなどの仕事場から、王子の別邸、その中にある私の寝泊まりする部屋などなど。
ちなみに別邸というのは本当にそのままの意味で、王子のために何故か特別に建てられたらしい。
私が働くのは基本的にこれだけだけど、一応ということで他の王族の部屋も教えてもらった。
「以上で案内は終了です。他に何か分からないことがあったら私にお聞きなさい」
「分かりました。ありがとうございます、ガルイス様」
「当然のことをしたまでですよ。それより王子が呼んでおられます。急いで向かいなさい」
「はい」
お城の位置関係はすでに頭に入っている。走らないように気をつけながら、王子の部屋へと急いだ。
5分程でたどり着いた。扉を2回ノックする。
「……誰?」
「カイル様の専属メイドに任命されましたルイリア・コートンでございます」
「あぁ、君か。入って」
「失礼いたします」
なるべくドアノブの音を立てないように扉を開く。
室内は書類や分厚い本で散らかっている。王子は奥の机に腰掛けていた。
顔は、逆光でよく見えない。すらりとしたシルエット。
「今日からよろしくね」
発せられたのは、広間でも聞いた柔らかい声。
「それにしてもまさか玖羽とこんなところで再会するとは思わなかったよ」
………?今…玖羽って言った?どうして…
「どうして私の本当の名前を……?」
「酷いな、もしかして忘れちゃったの?姿と声で気付いたと思ってたのに」
姿と声。思ったよ、一瞬。もしかしてそうなんじゃないかって。でも話し方が違うから気のせいだと思ってた。
まさかこんなところにいるなんて……!
どこか変なところ、疑問に思ったところ等ありましたら
教えて下さいね^^!