プロローグ
「じゃ、また休み明けにな!」
友達に別れを告げて教室を出る。待ち合わせの時間ギリギリだった。
急いで昇降口に行くと聞こえてきたのは玖羽の声。
「ごめんね、ハルと一緒に帰る約束だから……」
どうやら友達に一緒に帰れないことを謝っているようだった。
ちょっとの罪悪感と満足。俺を優先してくれる玖羽の言葉が素直に嬉しかった。
「ごめん、待たせた?」
「全然だよ!それより用事、ちゃんと終わった?」
「あぁ。帰ろうぜ」
用事というのは日直の仕事のことだ。
それだけで済んだのならこんな時間になることはなかった。
ただ、職員室に日誌を出しに行った帰りに女子に告白されたのだ。
まぁ、謝って断ったけれど。
玖羽と連れて正門を出ると声が聞こえた。
「わぁ見て見て……!」「すご〜い!」
俺の金髪と青い瞳、そして玖羽の銀髪とすみれ色の瞳は一緒にいるとかなり目立つ。
今までさんざん騒がれてきたせいもあって流石に慣れたが、周りからするといつ見ても珍しいものらしい。
そんなのは無視して家へと向かった。
スーパーに寄って夕飯の材料を買う。その途中で学校に携帯を落としたことに気付く。
学校に戻るから先に帰ってろ、と伝えようとして思い直した。
荷物は多いし、玖羽にひとりで持たせるわけにもいかないよな……。
取りあえず家に帰ることにした。
がちゃ…という金属音とともに玄関のドアを開ける。
「「ただいまー」」
揃って声を出しても帰って来る言葉はない。いつものことだ。
家に両親はいない。2人とも仕事が忙しくて家になかなか帰れないと愚痴をこぼしていた。
それから夕飯の支度を玖羽に頼んで学校へ戻った。
グラウンドの方から大きな掛け声が風にのって聞こえてくる。
元気だなぁ、運動部。なんてことをぼんやり思いながら教室へ向かう。
携帯は俺の机の上に置き去りになっていた。
よし、家に帰るか。そう小さく呟いた矢先に頭が疼いた。
「っ……」
なんだ?突然。風邪を引いてるわけじゃないのに……
学校を出たところでもう一度。……ほら、まただ。
それは回数を増すごとに強く疼き、だんだんと視界がぼやけていった。
そのまま地面へ崩れ落ちる。
……はやく、帰らないと………玖羽がひとりで待ってる……
俺の思いとは反対に意識は遠のいた―———