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第八話 説明

 「以上が私がここに来た理由です」

 俺は病室から歩いて二分弱のところにある公共スペースで美月から一通り話を聞くことになった。ここにあるのはベンチ三台と自販機二台、点点とある観葉植物のみ。そんな少々寂しい場所は普段から人の通りもないのだろう。話している間一人も来なかった。

 さて、美月の話を要約するとこうだ。

 丁度二日前、俺と柳田が襲われた日、美月が所属するグループ『星の隠れ家』は吸血鬼対策としてペアでここら一体の見回りをしていたらしい。夜徘徊していると突然小規模だが魔力を感じ、すぐその場に駆けつけた。そこにいたのは地面に倒れこんでいる二人の少年。ただちにグループのトップ――神楽月姫かぐらづき ひめに報告、パートナーが救急車を呼んだという事だった。

 本来は美月が関わるのはそこまでだったはずだったが、その被害者の中に知人がいるとなればまた別の話。気になった美月は神楽月に『被害者の一人が知り合いで、しかも魔術師だから何かしらの情報を得ているかもしれない』と言い、俺への事情聴取をやらせて貰えるように説得、許可を得た後俺の病室へ直行したのだそうだ。そして今に至る。

 「なるほど。にしてもよくそんな理由で通ったな」

 「はい。これでも四、五年グループにいますから。古株なんですよ私」

 これまでの実績が評価されているから、ということだろう。少々頼りない気もしなくはないが、真面目そうだし信頼されていることに違いない。

 「でも、理由はこれだけではないんです」

 美月は座りなおして、ふぅと息を吐くと眼を閉じた。その動作だけで、きっと重要なことを話すのだろうと直ぐ察知できた。俺にとって良いものか悪いものかは判らないが。

 「悠太くん」

 透き通った星空のような瞳がこちらを見る。じっと見つめていると吸い込まれてしまいそうで、何だか照れくさくなった俺は少し眼を逸らす。

 「なんだ」

 「実は今日、頼みごとがあって来たんです」

 

 「頼み、ごと」

 私がそう言うと、桜井は少し難しそうな顔をした。何か妙な事に巻き込まれそうだなとでも言いたげだ。けれど伝えなければいけない。

 私は桜井の目をしっかりと見て、

 「私の、私達のグループに入って貰えませんか」と伝えた。

 大体予想していたのか、特に反応せず、ただに額に組んだ指を当て考え込んでいた。

 「それはグループとしてのお前の頼みか? それとも風流美月としての?」

 数十秒の後、桜井は私に確認するかのように訊いて来た。私はこの問いへの返事に悩み、戸惑う。純粋な戦力として、街を護るために必要としているのか。それとも今までの桜井を見た上で、ただ純粋に桜井に来て欲しい、仲間になってほしいのか。きっとそう訊いているのだと思う。私は前者の可能性を頭から消した。吸血鬼の捜索、退治に協力してもらう事はあるけれども、ただ戦力としてしか見ないというのは無い。なら後者の方なのか? 

 桜井のことを整理する。まずは魔術師として腕。あの草原での事を鑑みるに、基礎や地盤は尋常じゃないくらいしっかりとしている。教えたことに対しての吸収力も、身体能力も申し分ない。

 それに、私は自分の胸に手を当て、草原で話していたときと先の病室でのことを思い起こす。自分は確かに桜井と話しをするだけで、桜井がそばにいるだけで言い様のない安心感を感じていた。心がほんのりと温まる。何故かはよく解らないけど、多分彼と同じような空気を桜井は持っているからなんだと思う。だからこんなにも懐かしく、温かい気持ちになるのだろう。ぜひ来て欲しい。私達の仲間になって欲しい。一緒の時を過ごしたい。いつの間にか桜井はこちらを見ている。返事は既に決まっていた。あとはそれを伝えるだけ。

 「私はあなたに仲間になってほしい。・・・・・・風流美月として」

 まるで告白するみたいな恥ずかしさと緊張感が自然と生まれていた。心臓の鼓動が大きくなっていくのを感じながら桜井の返事を待つ。出来ればいい返事が聞けたらいいなと思いながら。

 「分かった。俺はグループに入る。これから宜しくな」

 桜井は十秒と経たないうちにそう返してくれた。その言葉に喜びや期待、安堵を感じる。私はあまりの嬉しさに思わず桜井の手を掴んでぶんぶんと勢い良く振る。

 「これから宜しくね、悠太君!」

 突然のことに桜井は目を丸くしていたけれど、すぐに柔和な笑みを浮かべる。少し照れたようなその笑みを、私は心のアルバムにそっと仕舞いこんだ。

 

 考えている間、俺はあの日の場面を呼び覚ましていた。

 体に悪寒が走るのを感じる。それでも、冷静に正確な判断をするために俺は無理やり心の扉を抉じ開けた。

 「――――――っ」

 その場を支配する狂気。

 外界から雪崩れてくる押しつぶされそうな不安と恐怖。

 何もかも黒に包まれた吸血鬼と呼ばれる男。

 不吉と言う言葉をそのまま形に表したような異空間とその存在は、思い出しただけでも足が竦んでしまう。

 そして何よりも印象に残っている血を吸う瞬間に、吸血鬼と呼ばれる所以と恐れられる理由を俺の脳に直接叩きつけられた。それと共にあれは相手にしてはいけないものの類だと知らしめられた。

 俺はまたアイツと対峙しなければならない。その度胸、確固たる理由を俺は持っているのか。

 『あ゛、が、あ゛ぁ』

 不意に呼び起こされた友人の苦悶の声。友人が果てようとする姿を目の当たりにしているにもかかわらず、俺は恐怖で身体が動かず、すぐに助けに行く事ができなかった。自分の身を守れるように、あわよくば近くにいる誰かを助けられるように。その信念の下で培った魔術は全く歯が立たなかった。俺の力が及ばなかった。もう二度と同じことが起きないように、また目の前の人が傷付かないように、俺がすべきことは何か。

 もっと強くなる。現状恐らく俺に出来ることはこれだけだろう。でも、どうしたらいい? 個人の鍛錬では恐らく今が限度。これからは他の人との模擬戦やより多くの知識が必要不可欠となるだろう。当然そういった組織や団体に属することを要する。しかしこれまで独りで行動してきたこともあってか、魔術師の世界での常識をあまり知らない俺は、今からそういったものに入るのを躊躇っていた。俺自身上手くやっていける自信がなかった。これからも一人でやっていくしかないだろうと、そう思っていた。

 けれど、

 『私の、私達のグループに入って貰えませんか』

 美月のあの言葉。それが俺の不安を吹き飛ばした。直感する。きっと美月がいるなら上手くやっていける。何の根拠も無いけど、そう言い切れる自信があった。けれど、一つだけ訊いておきたい事があった。意味が無いと言われてもおかしくない、けれどどうしても確かめたいこと。

 『グループ』としての美月の頼みか、それとも『風流美月』としての美月なのか?

 自分はどういう意味で必要とされているのか。例え如何なる返事をされたとしても俺は入ると答える。だが、今後――単純に戦力としてこの身を投じるのか。あるいは美月たちの仲間、グループのメンバーとして戦地に共に赴くのか。それを美月の言葉で判断しようと思う。前者なら唯ひたすらに鍛錬を、後者なら仲間としてグループの一端を担いたい。

 「それはグループとしてのお前の頼みか? それとも風流美月としての?」

 俺は少し恐れながら、けれど何処か期待しながら、訊いた。

 やっと、やっと書きおわった。

読み直してみるとアレですね。桜井のグループに入るくだりがなかなかおかしいですね。なんか力量不足という事実を叩きつけられた気がします。orz

 いろいろな人の作品読んでいると尚更それを感じますね。

どうしてこんな面白いネタ浮かぶんだろうとか。

なんでこんな素晴しいストーリーが浮かぶんだろうとか。

やっぱり執筆と読書するしかないんでしょうか。

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