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第四話 謝罪

 「本当にすみませんでした!」

 少女は頭を何度も下げ謝っていた。

 こちらの思惑が当たり、うまく俺が魔術師であることを認めさせた後、本当に申し訳ないことをしてしまったと、ずっとこんな調子で謝られ続けていた。頭を下げるたびに長い髪が前に来て、なんだか貞子みたいな感じになっている。後ろから月明かりで照らされているのもあってか、かなり怖い。目が必死なのも原因の一つだ。

 「頭を上げて。全然怒ってないから。怪我も全くしてないし」

 俺はそう何度も言っているが、なかなか止めようとしない。

 「いえ。でも」

 それでも謝罪をしようとする少女に、はぁと溜息を吐く。真面目というか頑固というか。

 まぁしょうがない。俺は軽く手を握りコンと少女の頭を突いた。

 「あた」

 「人の話を聞けよ。俺が良いって言ってるんだからいいじゃねぇか。それにそんな謝られても逆にこっちが済まない気持ちになってくる」

 俺が悪いことをしたみたいじゃないか。

 「さっきの事で罰ほしいなら今ので十分だろ。さっさと髪を直してしゃきっとしろ」

 「あ・・・・・・はい。ありがとうございます」

 またペコンと少女は頭を下げた。今のは謝罪ではなくて感謝の意味だろうし、いいか。

 顔を上げた少女の顔にはさっきまで陰鬱さは微塵も含まれておらず、晴れ晴れとした表情は彼女によく似合っていた。

 「あ、名乗るのを忘れてました。初めまして。風流美月ふうりゅう みつきといいます。高校一年生です」

 「あ、どうも。俺は桜井悠太。俺も高一なんだ」

 いきなり自己紹介をされ思わず驚いたが、こちらも名乗り返した。こういう事はあまりしたことがない分なんだか照れくさい。慣れていない所為か顔がほんのりと熱いのはごく自然なことだろう。

 「同い年ですね。私藤咲高校に通ってるんです」

 「俺も同じところ通ってる」

 「そうなんですか? うわあ! 奇遇ですね!もしかしたら廊下とかですれ違ってるかもしれませんね」

 風流は目を輝かせながら話していた。へぇ。そうだったんだ。これだけの美人で廊下ですれ違ったら振り向かずにはいられない、そんな美少女が同じ学校にいたことに俺は純粋に驚いた。

 「あの、桜井さんはどうしてここへ?」

 取留めもないことを考えているとそんな疑問をぶつけられた。

 「俺か? いつも通り魔術の練習をしに来ただけ」

 「へぇ。桜井さんはいつもここでやってるんですか」

 「そうだな。ここは周りに障害物もないし、誰にも見られない。それにこの光景が結構気に入っててな。と、それより座らない? このまま立ち話っていうのもなんだし」

 その場に倒れ込むように座ると、風流もそれに倣うようにして座った。

 「あとお互い『さん』付けは止めようぜ。同い年なのに変だろ」

 「それもそうですね。分かりました。それでは悠太君」

 「なんだ美月」

 早速お互いを呼んでみた。・・・・・・うん。思ったより恥ずかしくない。いきなり馴れ馴れしすぎているかもしれないと不安に思ったけれど、相手も気にしていないしいいか。

 「悠太君って、初対面の人にもこんな風に話せるんですか?私引っ込み思案だからうまく喋れなくて」

 「いやそんな事ないんじゃないか? 十分喋れてるぞ。それに俺は初対面だったら固まって今みたいに話せない」

 「それじゃあどうして私とは普通に喋れるんです?」

 「この場と風流の雰囲気だな」

 「あ、ありがとうございます」

 実際は襲撃されたとき敬語を使うとか考える時間がなかったし、そのままなりゆきで敬語を使わずに気軽に話そうとなっただけだ。ただ、これを言うとまた落ち込ませてしまうかもしれないから言うのを止めた。

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 話題がなくなり話が途絶える。お互い初対面と言うこともあってか未だぎこちなさが抜けきっていないのもあるかもしれない。

 そうだな。ここは――――

 「なぁ。さっきやってた魔術。あれってどんな時に使おうと思ってるんだ?」

 「さっきのというと散弾のあれですよね。あれは法外者に使用する威嚇、捕獲のための魔術です」

 「あれを人に向けて?」

 「え~と。そうです、ね。人と言っても相手は魔術師ですし、あれくらいなら打ち落とされるか、打ち消されるでしょう。そういう意味では『威嚇』用ですね」

 「と、いうことは。美月は魔術師相手に戦闘をすることがある、またはしているのか」

 「はい。それに最近は特に通り魔が現れるようになりましたから」

 通り魔。通りすがりに人に危害を加える法外者。そういえば新聞の見出しにそんな言葉が並んでいたな。

 「ここ最近巷を騒がせているあれか。その口ぶりからすると、その犯人は魔術師だってことか」

 美月は首を縦に振りそれが正しいことを示した。

 同じ神秘を行使する者の中にもこういうバカをするヤツはいるのか。そう思うと自分の中から嫌悪感のようなものが湧き出てくるのを実感した。全く、気味が悪いことこの上ない。そんな事をしてまで手に入れたいものって何だよ。

 「マスコミも『吸血鬼の再来』なんて大仰なタイトルを掲げて。事はそんな軽々しいものじゃないのに」

 そこで初めて美月は苦々しい顔を見せた。どうしたのか訊こうという考えが浮かんだが、すぐに打ち消した。そのかわり当たり障りのないよう返答する。

 「向こうも仕事でやってるんだし仕方がないんじゃないか? そうしないと自分も家族も養えないし」

 「そうなのかも、しれませんね。けれど、それで傷ついたり大切な人を亡くした人々がいるってことを知って貰いたいです」

 美月はそれを言うと立ち上がって遠くを見る。丁度隠れて表情を見ることは出来ないが恐らく・・・・・・。

 「ねぇ、悠太君」

 「何だ?」

 「お願いがあるんだけど」

 「お願い?」

 「そう。お願い」

 美月は黒く絹のような髪をなびかせ振り向く。


 「私のグループに入ってくれないかな」


 凛とした綺麗な声でそう訊いた。


 そろそろ本題に入ってきました。長かったです。ここにいくまでに二ヶ月。ノートに書いて、パソコンに打ち込んで、手直しして。書いてる途中で何度泣きかけた事か。あぁ、登場人物のキャラが変わっていく。安定してない。泣きたい。

 とそんなこんなで、今回は早めに投稿することが出来ました。今まで投稿したものも少し修正したので、前より読みやすくなっていると思います(読みにくかったらすみません)。

 それではまた。

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