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第十九話 前夜

 ついにこの時が訪れた。拳を強く握り、この決意、歓喜の程を確かめる。手に赤みがかった部分がほとんどなくなり、私たちが黄色人種に区分された謂れを知らしめるように変色する。玄関を抜け家族に帰宅を告げた後、自室のベッドへと飛び込んだのは十時半過ぎ。最初の頃は門限がどうのこうの言われていたが、今では諦められたのか全くその事について触れてこない。心の中で陳謝し、いつか安心させるからと誰に聞いてもらうわけでもなくぽつりと呟いた。ベッド上で仰向けになり、ここ数週間の出来事を思い返す。

 何となく入っていった雑木林を抜けた先に広がっていた草原で、桜井悠太と邂逅した。病室での再会の場面がまず浮かび上がった。自分でもはっきりと分からない。何故悠太の事が気になるのか、あの時また会いたいと思ったのか。この気持ちを上手く表現する言葉が見つからない。別にかなり気になるわけではない。ただもやもやした気分が嫌だ、ただそれだけ。

 さて、そんな少年が提示した一つの問題。目的を果たした後、これからどう生きていくのか。夢を持たず、過去と現在に縛られていた私が道を歩む方法とは何か。今まで通り? 本当に出来るの?  まるで問われているようだ。告げられているようだ。

 本当に吸血鬼を殺したいの?

 実のところ君は吸血鬼という存在そのものを求めているのではないか?

 憎悪の対象となる、原動力となるかたきを。

 私の”今まで”は吸血鬼に成り立っていた。人生の軸が消えたら、恐らく築き上げたもの全て一切合財続かない。軸を無くした独楽はガタガタと音を立て、もがいて、もがいて、次第に勢いは衰え止ってしまうだろう。

 私は無意識に求めているのかもしれない。新しい軸を。そしてその為に足の動かし方を教え、道標となってくれる人を。

 だから、こんな淡い気持ちを抱いているのだろうか。

 いいよ。そこまで言うなら私を導いて。明るい未来へと導いて。全てが終わったら新しい始まりを一緒に探して欲しい。この胸に宿る万感の想いを告げよう。私のパートナー、桜井悠太。公私共に支えあっていきたい。そうした関係に、なれたら。私は……。



 自分の心境がここまで穏やかなものとは思ってもいなかった。俺はただただ自分自身に驚いていた。いつもと同じ、随分と殺風景になってしまった地元の町並みを特に考え事もせずにぼんやりと眺め、歩いていた。何故だか違和感が体に付き纏う。その正体は? 暇だったこともあり、自宅までの短い時間で黙考することにした。結果行き着いた一つの答えは、死地に赴くことになんら恐怖を抱いていない事だった。

 もしかして自分は恐怖に対して非常に鈍感なのか。いや違う。なら初めてアイツに襲撃されたときに感じたものは何だというのだ。無視していい議題ではないかと思うかもしれない。きっと以前の俺ならすぐに忘れて、次に集中するだろう。しかし、そうはしなかった。明確には分からない。でも理由を知らなければならない気がした。義務、魂レベルでの強制。魂が答えを求めさせている。本当に何なんだ。何故取り返しのつかないことになると、魂は言うのだ。

  尚も俺は考える。いや考えさせられた。恐れを抱かない理由。命を掛けた、得るものと失うものが明らかに釣り合わない賭博行為。あの人が生きていた頃はよく訓練という名の虐めを受けていたが、実戦での緊張がほぼ無くなるのはありえないことだろう。祈祷の術や治癒を扱えないこと、本来は習得することは無理と言われた集束系魔術が行使できたこと。治癒に特化した桜井家が他の魔術を行使する事は実質不可能だ。突然変異。様々なイレギュラーがこの身に発生しているのは明らかだ。深慮する。もしかしたら俺はこの家の生まれではないのか? 養子として別の所から貰われたのか? 解らない。判らない。一体俺は何者だ? 突然変異は俺の精神に何らかの異常をもたらしているのか? 混乱する。考えがまとまらない。いまいち思考回路が繋がらない。だが思考を止めたくない。

 結局答えは見つからず、玄関を潜ることとなった。


 求まらなかったことに後悔することはなかった。いや、後悔する機会なんて訪れなかった。何故なら俺は……。

久しぶりの投稿です。

長い間更新を止まってしまい住みませんでした。

なんと三ヶ月ぶりにPCに触りました。感動です。

せっかくなのでノートに書いておいた分の一部を載せました。

またしばらくPCから離れるので、早くて七月末に更新になると思います。

まだまだ稚拙で分かりづらい文章ですが、これからも読んでいただけるとうれしいです。

では、またいつか。

※意見、感想、修正点があれば、この小説の感想ページまでお願いします


7/18 加筆しました。結構重要なものです。

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