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第一話 日常

 実は俺、魔法使いなんだ。

 そんな戯言を言われて信じる人はそうそう居ないだろう。そもそも魔法なんて代物がこの世に存在するかどうか分からないわけだし信じろという方が無理だ。

 頭のおかしいヤツだ、と大体の人は一笑するんじゃないだろうか。それ程俺が言ってることは馬鹿げているんだ。けれど事実だから仕方がない。俺は魔法使いだ。


 人目を避けて裏、暗闇で魔術を行使する者。それが俺達「魔法使い」、いや「魔術師」だ。魔法使いというのは魔術師とは比べ物にならないくらい力などが違うのだけれど。ここでは説明を省かせていただこう。


 さて、魔術師を自称する俺が普段何をやっているかと言われれば、別に大して他の人と変わらない生活を送っているだけだ。

 桜井悠太さくらい ゆうた。十六歳。高校一年生。

 この三要素だけで説明が終わるくらい平凡な高校生。

 今説明した通り、二年後に受験を控えている身であるため、毎日学校と塾と言う牢獄に囚われながらも、それなりに仲の良い友達と共に楽しく暮らしている。

 何が言いたいかといえば魔術師だからといって別に大冒険するわけでも、殺し合いをするわけでもない、という事だ。だから俺は今日もいつもと変わり映えのしない一日を送る。そしてまた明日を迎える。いつまでもずっと続いていくサイクルに、何の違和感も覚えず死んでいくのだろうと、この時はそう思っていた。



 午前八時十分。皆が登校してくる姿がちらちらと見えてくる頃、俺は教室へたどり着いた。一番最初に教室に入ると何故か勝ったような気分になる。知人に言えば、

 「何に勝ったんだ」

 とか、

 「何競ってんだ」

 とか、

 「お前は小学生か」

 とかそういった手厳しいツッコミが来るのは目に見えているから言わないけれど。

 早朝とあってか、教室は閑散としており、昼間の喧騒とは全く逆の状況になっている。教室にはぼちぼち人が集まって来ているが、友人といえるヤツはどうやらまだ来ていないようだ。こういうときに何か暇つぶしになることを考え付く人には尊敬する。特に寝るか本を読むか、二つくらいしか選択肢が浮かばない俺にとっては。

 さてと、このまま暇を持て余すのも勿体ないし、今日は生憎本を一冊も持ってきていない。残る手段、睡眠を採ることにしよう。昨日はあまり寝ていないから丁度いいといえばそうなのだろう。そう考え机に突っ伏し目を閉じた。その時。

 「グッドおっはー! 悠太!」

 珍妙な挨拶が耳に入ってきた。

 「ん?疲れてんのか、悠太」

 「あぁ、たった今すごく疲れたよ」

 顔を上げ、声の主の姿を確認する。見慣れた、というかもう見るのを厭う程顔を合わせている友人がいた。柳田一やなぎだ はじめ。中学校からの腐れ縁で俺の悪友でもある数少ない親しい人の一人。イケメンとまではいかないが、カッコいいと言える顔をしており、背も175センチメートル以上と高く、外見はそこそこいい。外見はの話なので、内面がどうなのか、女子からの評判などはご想像に任せるとしよう。

 「そう連れない事言うなよ。んで本当は?」

 体をくねらせ、気持ち悪い動きを余裕の表情でこなす柳田に嫌悪感を抱きつつも、鞄からノートを二つ取り出し提示する。

 「昨日遅くまでこれ片付けてた」

 「ん? あぁ、数学と古文の宿題か。まだ出してなかったのか」

 「すっかり忘れてた。おかげで寝たの4時ぐらい」

 柳田が同情の目をしながら手を合わせてきた。こいつに同情されると何故かむかつく。殴るか。

 「今お前殴ろうとか考えなかったか?殺気を感じるんだけど」

 「ちっ」

 「『ちっ』って何!?やっぱりやろうとしてたな!」

 大げさにリアクションを取る柳田。鬱陶しいことこの上ない。

 「そんな顔するなよ。傷つくじゃないか。これでも結構ピュアな心の持ち主なんだぜ」

 「傷どころかボロボロに欠けた心のくせによく言う」

 「ひどい」

 柳田を軽くあしらい机に突っ伏す。うむ、バカな会話も一段落したし寝るか。あぁ眠い。

 「・・・・・・お休み」

 我が悪友は俺の気遣ってか、そんな言葉を掛けて行った。柳田に心の中で感謝しながら眠りに落ちていった。

 夏の暑苦しい空気の中。体力回復のために午前中のほとんどを睡眠に費やした。



 放課後、柳田たちと別れ帰路に着いた。郵便受けから新聞を取り出し、それを眺めながら家に入った。

 「ただいま」

 そう帰宅を告げると、奥の方からドンドンドンとあわただしい音と共に女の子が現れた。

 「おかえり~」

 妹の幸音ことねだ。セミロングの、綺麗な黒い髪を揺らしながらこちらにやってきた。

 「今日はどうする?ご飯はもう用意してあるけど」

 「それじゃあすぐ行く。一回部屋戻るから」

 「うん。分かった」

 そう言うと幸音は来たときと同じように髪を揺らしながらリビングに戻っていった。


 我が家は四人家族で、共働きだ。二人とも何の職に就いているのかは知らないけれど、唯一分かる事といったら二時帰りの五時起床だということだけ。何だか怪しい気がしなくもないけど、それで俺たちは養われているのだし不満は言えない。まぁ今まで大きなことも起きてないし不安に思うこともないだろう。


 自分の部屋で私服に着替えた後、リビングに行くと美味しそうな夕食が食卓に並んでいた。

 「今日は結構自信あるんだよ?」

 「そりゃ楽しみだ」

 時刻は六時五分。この分なら夜に向けて十分睡眠を取れるな。今日は充実した鍛錬が出来そうだ。

 「ん、見事な焼き具合。腕上げたな」

 「えへへ」

 それまでは妹の手料理を味わうとしよう。


 今回は主人公の日常のことを書いてみました。どうでしたか?

プロローグに出てきた少女は次回登場します。

 文章中に何かおかしなところや、アドバイスがありましたら、ぜひお願いします。

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