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優しい不幸~ハイファンで定番の追放されたら美少女と出会う冒険者の話

作者: 山田 勝
掲載日:2026/05/02

「お兄ちゃん・・・・」



 犬か?狼の耳が頭の上から出ている美少女が手を差し出す。

 お腹がすいているらしい。食べ物を寄越せというのだ。


 背後の森を見ると人の気配を感じる。少女1人でこんな森の中にいる道理がない。



 だから、俺は・・・


「あっちに行け!」


 追い払った。


 すると、俺の後方にいたパーティーの一員、女魔道師ルーザーが割って入った。


「可哀想でしょう!ほら、パンだよ!」

「お姉さん。有難う・・・」



 その日、キャンプで断罪された。



「・・・マツナガは冷たい。よって我が『銀翼』に相応しくない。追放する!」

「本当よ。小さい子を追い払ったのよ」

「ヒドい・・」

「高潔な冒険者にあるまじき行為だ」


「ああ、分かった。でも良いのか?帰り道の案内は?」

「来た道をたどれば良いのだろうが!」


 俺はそのままテントを出た。

 森で追放されるという事は・・死ぬ確率が高くなる。見張りがいない・・・となると、およそ100キロを寝ないで歩くことになるな。二日三夜か・・・

 俺はコンパスを取りだし歩く。


 ここは魔の森の深層部、魔物や獣人族が出没する地域だ。



 しばらく歩くと、開豁地で剣の斬撃の音が聞こえる。

 二本足で歩くドラゴンと女剣士が戦っている。



「姫様!」

「ハイデン!黙って見ていなさい!キャア!」


 苦戦しているようだ。

 俺は脇を通る。

 従者が俺に話しかけた。


「そこの冒険者の方、助勢をお願いします!」


 どうするかな。依頼だったら受けよう。


「ハイデン、これは私の試練よ!邪魔しないで!」



「ああ、分かった」

 求められていないのだから仕方ない。


「えっ?!」

「ちょっと」



 俺はそのまま去った。しかし、こんな森の奥に人が入るようになったな。


 しばらく歩く。



「助けて!助けて!助けて!」


 また、美少女か。キツネの耳と尻尾が出ている。


「はあ、はあ、はあ、熊獣人に追われています」

「ああ、そう・・・」


 15.6歳くらいか。やたらぎっちりと腕を掴んでいるな。

 奥からガサガサと音が聞こえる。


「離れろ!」


 俺は肩から銃を外し構え。数発森の奥に撃った。草が切れ。枝が飛ぶ。


「な、何だ。風魔法か?」

「いや、何か飛んで来た。魔道師か?」

「一端、村に戻るぞ」


 ドタドタと重量級の足音が遠ざかっていく。

 キツネ耳の美少女は・・・感謝しなかった。



「えっ、何故、殺さないのですか?とても悪い奴らですよ」


「それは俺には分からない・・・ただ、少女1人に大人数人で襲うのはやり過ぎだと思ったから撃退しただけだ」


「なら、村に来て下さい!歓迎します」


「それは冒険者ギルドか、傭兵ギルドに依頼するのだな」

「ちょっと待って、ほら、お礼をするからぁ!」



 しばらく、キツネ耳の少女は追いかけて来たが、縄張りの外に出たら追うのをやめたようだ。


 今日で出発した日を入れて二夜目、後、一夜か・・・

 転移前を思い出す。



 ☆☆☆



「各人の距離二メートルを維持せよ!」

「はあ、はあ、はあ」


 自衛隊の行軍訓練だ。20キロから30キロの装備を抱えて夜間歩く。

 アンビ車と言われる赤十字のマークのある車両が後をついてくる。

 歩けなくなった者を収容するのだ。


 しかし、それに乗ったら立場は悪くなる。外出も出来なくなる。

『ほお、歩けないほど負傷しているのに遊びにいけるのか?』

 いわゆる外禁だ。



 だが、まだ陸士は良い。陸曹・・幹部は・・


「10分休憩だ!」


 皆はどかっと腰を落とす。しかし、陸曹や幹部は・・・


「負傷者はいないか?確認して報告せよ」

「「「了解」」」


 たった10分の休憩を犠牲にして部下を見る・・・


 まさか、異世界転移しても行軍をするとは思っても見なかった。




 ・・・・・・・・



「あっ・・・」


 また、少女がいた。ボロをまとっている・・・道の脇によけて休んでいる。



「はあ、はあ、はあ」


 歩いて体力を消耗したのだろうな。

 脇を通る。


「はあ、はあ、はあ・・・」


 少女は何も言わない。思わず声をかけた。


「どうした?」

「・・・関係ない。森に薬草を採りに行く」

「こんな深い森に・・・あっ!」



 思い出した。関係大ありだ。


 少女を起す。


「何?」


 額に手を当て体温を測る。熱いな。


「これ飲め。PLという熱だけは冷ます薬だ。水も飲め」

「・・・お前が飲んでみろ」

「ああ、そうだな」


 自衛隊の薬だ。透明の袋に入っている。不思議そうに見ている。顔は汚れているが、ジトと凝視しているのは分かる。


「君、どうして森に入ってこられた?」

「橋が架かっていた・・・」


 そうだ。俺のスキルは『戦闘工兵』だ。戦闘工兵、爆破の他に架橋も担当する。

 森は谷というよりは狭く地隙というよりは広い。


 橋を架ければ近道で森の中に入れる。だから『銀翼』のパーティーのポーターとして橋を架けたのだ。


 橋が無ければ数倍の距離を迂回しなければならない。


 俺は強引に少女を抱き上げた。


「やめろ・・・」

「帰るぞ。また、君のように橋を渡って迷子になっては困る」

「迷子じゃない・・」

「分かった・・この橋は俺が召喚したものだ」



 橋を渡った。


「だから、まるで物語に出てくるような装いの姫騎士とか入ってこられたのだな・・・」


 少女に仕事を依頼する。


「ここで三日間、銀翼と姫騎士が帰って来るのを待つ・・・それまで交互に休憩する。給金を払うぞ」

「分かった・・・」


 俺はバタンと倒れた。

 結構、疲れていたのだな。




 ☆☆☆


 夢を見た。また、転移前だ。

 初めて部隊に配置されてからの行軍だ。


 近代戦、装甲車両で移動すれば良いが・・・行軍は兵士の基本だ。

 歩く体力が求められる。更に・・・



「はあ、はあ、はあ・・・」


「集結地に着いた!これより陣地構築をする!」

 やっと行軍が終わったと思ったら寝られないのかよ・・・


 わずかな仮眠で数日動ける体力が求められる。これはジムや体力錬成だけでは身につかないだろう。



 バタン!と誰かが倒れた。すると、隊列の一番後方にいた衛生科の陸士が救急箱を持って走って駆けつける。こいつは体力はあまりない方だが。


「誰か倒れたのですか?担架を!」


 この状況で走ってくる。


「いや、すまない。思わず立ったまま寝ちまった」

「フウ、良かった」


 この状況で人を気遣う。この差は何なのだろう。優しさか?いや、後に聞いたら責任感だった。

『衛生科でこの場で動けなかったらおかしいでしょう』だった。


 そう言えば・・・何故、今日出会ったばかりの少女に見張りを頼んだのだろう・・・まあ、いいか、殺されても・・・絶望は慣れている。


 あれ、何かユサユサ体が揺すられている。



 ・・・・・・・・



 目が覚めた。半日仮眠していたようだ。


「おっさん。おっさん。誰か来たよ」


「あ?魔道師ルーザと従者・・・」




 2人ともボロボロだ。


 女騎士は戦死した。何でも、子供の頃から民を助ける姫騎士の物語に憧れていたそうだ。

 銀翼パーティーは・・・



「グスン、ヒン、グスン、あの後、森の中から狼獣人族の子供達が100人以上出てきて、食べ物をねだったの・・・」


「やっぱりな」


「もう無いって言ったら罵倒されて、食料が尽きて私達は帰ったけど、森でキツネ族と熊族の戦争が始まって劣勢のキツネ族に味方をして・・・・・巻き込まれて、グスン、リーダーは死んだわ。私だけ生き残ったわ・・・」


「ああ、そうか・・・」


 皆、優しいから不幸になったのか。俺は仮設橋の召喚を解いた。


「じゃあな。ルーザ」


「えっ・・・助けてよ。同じパ・・・」

「もう、追放されたから同じパーティーじゃない。橋は責任あるから待っていただけだ」


 俺は自分の責任範囲だけで背いっぱいだ。


「おっさん・・・」


 見張りを依頼した少女が両手を差し出す。狼少女の記憶がよみがえる。だが、これは違う。正当な対価の要求だ。


「ああ、そうだな。仕事だったな。今、手持ちはない。冒険者ギルドまで一緒に行こうぜ」

「・・・うん。食事付ね」

「携行食しかないぞ」


 以来、少女は俺の相棒になった。

 湯浴みをさせたら美少女だから困る。




最後までお読み頂き有難うございました。

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