第三章 二次試験
ミユキは本試験に臨みます。果たして結果はいかに?
ラスト一か月はさらに猛勉強をした。それでも自信はなかった。二次試験当日はなんか気が重い感じがしたが、やめるわけにもいかない。2度目の東都大学の校門をくぐった。
英語はともかく、理科と数学はやはり難易度の高い問題だった。しかし、一次試験の時と同じように、どこかで記憶のある事項が頭の中にあふれ出てきてなんとなく鉛筆が進み、それなりの回答にはなっていった気がする。
それなりの解放感で帰り道の足取りは今まで以上に軽かった。合格発表までのわずかな時間ではあるが、私には行っておきたいところがあった。
試験翌日は、久しぶりにたくさんの睡眠をとった。休養もできたので、その翌日私は電車に乗って茅ケ崎まで出向いた。
そこは、東都大学の研究室で教えてもらった、史郎さんの帰省先。つまりはご両親のいる実家である。お線香だけでもあげさせてもらいたいと、黒目のワンピースを着ての訪問である。
史郎さんの実家は茅ヶ崎駅から山のほうに向かってしばらく歩いた住宅地の中にある一軒家だった。
住所を確認して、「三村」という表札を確認して、少しためらいながらもインターホンのボタンを押した。
しばらくして、年配の女性の声がインターホンから帰ってきた。
「どちら様ですか?」
「中園ミユキと申します。」
一瞬間があって、「どのようなご用件でしょうか?」
「三村史郎さんにお線香をあげさせていただきたいと伺いました。」
「史郎とはどのようなご関係でいらっしゃりますか?」
「あの飛行機事故で史郎さんに助けていただいた者です。」
そういうと、インターホンからは回答がなくなった。
しばらく時間が経過して、玄関が開き女性が出てきた。史郎さんのお母様と思われる。軽く会釈して、
「初めまして、中園ミユキと申します。」
「早くこちらに、」
女性は、玄関に入るよう手招きをした。
玄関に入るなり、女性は、堰を切って質問してきた。
「あなたが生き残った女性の方ね。史郎は、史郎は生きていたんですよね。」
「墜落後に爆発事故があったということは、伺いましたが、どうして史郎は死んでしまったの?」
「あなたと史郎との関係は何なの?」
ミユキは、ゆっくりとあの山中であったことを話した。もちろん史郎の研究のことは話さないし、ましてや史郎さんが自己犠牲で食料を分けてくれていたことは話せなかった。
母親はぽつりと言った。
「少ない食料を分けていたんですね。優しい子だったから。」
「爆発が食料を探しに行って巻き込まれたのなら、あなたのせいで史郎は死んでしまったのね。」
それを聞いてミユキは血の気が引いた。
「違います。史郎さんは、史郎さんは・・・・」
ミユキは史郎の研究のことを話してしまおうかと思ったが、話を閉ざされてしまった。
「現にあなたは生きている。でも私の史郎は帰ってこない・・・」
「帰ってください。二度とこないでください。」
持って行った手土産こそ受け取ってはくれたものの、けんもほろろに追い返されてしまった。
「やはり印象は悪いよな・・・」
覚悟はしていたものの、帰りの足取りは久々に重い。
このことがのちの大問題になることはまだミユキの知る由もないことであった。
合格発表までは、気の抜けた生活だった。空虚感の中にあの史郎さんの母親の言葉だけがこだましていた。
少し、周辺の動きが出てきました。ミユキと三村家の関係は今後どうなるのか?それはしばらく先の話になります。
今後をお楽しみにしてください。




