朝起きたら、婚約者が可愛くデレてきた ~トーマス~
いつもより早く目が覚めた。
まだ、窓の外は暗い。
今日の事を思い浮かべ落ち着かない。もう一度眠るのは、とてもできない。
少しでも、気分を落ち着けようと部屋の外へ出た。
足は自然に、カナリヤの就寝している屋敷の隅の使用人部屋に向かう。
それでも起こさないように、そっと廊下を歩いていると突然の叫び声がした。
「イヤ~! トーマス、お願いだから、止めて!! 」
えっ、カナリヤ。
慌てて、扉を開ける。
部屋の窓際にある寝台。
彼女はそのうえで肩を抱き震えていた。
茫然として固まっていると、自分の叫び声に驚いたのか彼女は目を覚ました。
彼女は僕を見ると、ビックリした表情になった。
「カナリヤ、夢でもみたの? 僕の名前を叫びながら、何かを止めて欲しかったみたいだけど」
恐る恐る聞いた。
彼女はガタガタと震えていた。
僕はそれ以上聞くのが怖くなり、お茶を入れてくると言い残し部屋を出た。
湯を沸かしながら、考えた。
どうしよう。やっぱり僕と一緒にいるのが嫌だと、結婚式を辞めたいと言われたら。僕は了承できるだろうか? でも彼女の気持ちを尊重しないと……。
僕は怯えながら、彼女が待つ使用人部屋に戻った。
カナリヤは両手で肩を抱くようにして、うつむいていた。
そんな彼女に紅茶を差し出す。
ゆっくり飲み干すのを見届け、彼女にもう一度同じ質問をした。
彼女は口ごもっていたが、少しずつ話してくれた。
僕は彼女の夢の話を聞いて、見悶えていた。
可愛い。
えっ僕に要求した我儘ってお姫様抱っこ口づけ?
そんなの頼まれなくても……。
結婚式当日に、僕に逃げられそうになって必死に引き留めようとして拒否られた!?
誰だよ。彼女との結婚を断るなんて、僕と代わってくれよ。
夢の中の僕!?
カナリヤは僕の様子に気が付かず、膝の上で、手を握りしめながら夢の内容を説明していた。
カナリヤが深刻そうに語る告白の内容に、僕は見悶えが止まらなかった。
赤くなったであろう顔を、手で隠し見られないように下を向いた。
「……とっトーマス様……」
カナリヤが浮かべていたのは不安そうな表情。
思い切って彼女を抱き上げ膝に乗せた。
「っえええ!? 」
彼女は叫んだ。
「カナリヤが可愛すぎて、どうにかなっちゃいそう」
僕は表情を見られたくなくて、彼女の頭上に顔をうずめた
「これが噂に聞く、マリッジブルーってやつかな。それにしても反則だよ。可愛すぎる」
どんだけ、僕を慌てさせれば気が済むんだろう。
落ち着いたのか、カナリヤが腕の中でおとなしくなった
「久しぶりに屋敷に帰ってきたから混乱したのかな?」
我に返った彼女は、照れたのか耳まで赤くなった。彼女の気を紛らわすために、言葉を紡ぐ。
「朝だね」
カーテンの向こうはすでに明るくなっていた。
「もう朝食にしようか。新郎新婦が結婚式に遅刻したら、主催しているスミス夫人に怒られてしまうから」
カナリヤは僕の腕の中で、こくんと頷いた。
ウエディングドレス姿のカナリヤはとても綺麗だろうなと想像した。でも今の顔を真っ赤にしているカナリヤにはかなわないだろうなと思わずにやける。
僕の心を読んだのか、カナリヤは手近にあった枕を僕の顔に押し付けた。




