第四話
夜の騒動から一夜が明けた。
俺はまだ信じられなかった。
昨日まで「田舎に逃げた落ちこぼれ」だった俺が、突然「鈴木家の後継者」として紹介されたなんて。
頭の整理がつかないまま、リビングでおじいさん――いや、“鈴木会長”と呼ぶべきか――を待っていた。
新聞を読んでいた彼（鈴木会長）は、ゆっくりと視線を上げ、笑った。
「おはよう、優斗。昨夜はよく眠れたかね？」
「……正直、全然です。鈴木家の“グループ”って、どういう意味なんですか？高橋社長まで頭を下げてましたけど……」
おじいさんは新聞を畳み、少しだけ間を置いて言った。
「まあ、そろそろ話しておく時期かもしれんな。」
その声は柔らかいが、どこか重みがあった。
〜 鈴木邸への帰還〜
昼前、俺はおじいさんに連れられ、郊外の丘を車で登った。
霧の奥に見えてきたのは、巨大な屋敷だった。
昨日泊まった“普通の家”とは別の場所だ。
「……ここが、鈴木邸だよ。」
おじいさんは静かに言った。
門が開くと、ずらりと並んだ黒服の執事たちが一斉に頭を下げた。
整然とした動き。訓練された軍隊のようだ。
「お帰りなさいませ、会長。」
「お帰りなさいませ、若――いえ、“優斗様”。」
俺は凍りついた。（い、今、“若様”って言ったか？）
おじいさんは俺の肩を軽く叩いた。「ここでは、そう呼ばれる立場になる。遠慮はいらん。」
〜鈴木財閥の正体〜
屋敷の中央ホールは、まるで美術館だった。
壁一面に飾られた絵画と、並ぶガラスケース。
中には海外の勲章や各国首脳との記念写真が収められていた。
その一枚に目が止まる――そこには、細川社長ですら頭を下げる“首相”が、鈴木おじいさんと握手している写真があった。
「……これ、もしかして本物の……？」
「そうだ。わしは経済界の表と裏、両方に足を置いておる。
戦後から続く鈴木財閥は、今や日本最大のコングロマリットだ。
高橋の会社も、細川のグループも、元をたどればうちの“傘下”にある。」
「傘下……？ 細川グループが、ですか？」
「そうじゃ。奴らは元々、うちの資本で成り立った。
だが三十年前、当時の当主が裏切り、独立したのだよ。」
おじいさんの声が低くなる。「そして、わしの息子を――お前の父を、陥れた。」
〜真実の影〜
その言葉に、鼓動が跳ね上がった。
「……父さんを？ どういうことですか？」
おじいさんは歩みを止め、窓の外を見つめた。
外には、都市を一望できる広大な庭園が広がっている。
「お前の父は、本来この財閥を継ぐはずだった。
だが細川に裏切られ、事業の責任を押しつけられた。
彼はすべてを失い、家族を守るために“田舎”へ逃げた。――その息子がお前だ。」
頭の奥で、何かが弾けた。退学の屈辱、いじめ、貧しさ、そして両親の沈黙。
全部、ひとつの線で繋がった。
「……だから、俺を養子に？」
「そうだ。お前が“本来の鈴木家の血”を継ぐ者だからだ。
そして――お前には、帝王の器がある。」
おじいさんはゆっくりと笑った。
「今日から、お前は“鈴木優斗”だ。ここで学ぶのは金儲けではない。“支配の仕方”だ。」
〜 導かれし者〜
廊下の奥から一人の人物が歩いてきた。
黒髪の美人な女性、俺と同じくらいの年頃だろうか。
静かな瞳に、確かな意志の光が宿っている。
「紹介しよう。彼女はレナ。私の秘書であり、後継者教育を担当する。」
レナは軽く会釈した。
「お会いできて光栄です、優斗様。明日からの“帝王学講義”、ご一緒させていただきます。」
（帝王学……？ 本気なのか？）
おじいさんは背を向け、広い廊下をゆっくりと歩き出した。
その声が、静かに響く。
「さあ――目を覚ませ。“田舎者の大富豪”が、ここから始まる。」
「面白かった！」
「続きが気になる、読みたい！」
「今後どうなるの!?」
と思ったら
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星５つ、つまらなかったら星１つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です！
ブックマークもいただけると本当にうれしいです。
何卒よろしくお願いします。
これから毎日３つずつ投稿していきますので『田舎者の大富豪』どうぞお楽しみ!!
