第三話
「待ちなさい!」
店内に響いたその声は、鋭く、重かった。
黒服の動きが一瞬止まる。俺も息を飲んだ。
次の瞬間、店の奥からスーツ姿の男が現れた。年の頃は四十代。
整った顔に冷たい光を宿している。
(なんだ、今度は誰だ……?)
俺が混乱している間に、細川社長の顔がみるみる青ざめた。
「こ、これはこれは……高橋社長!」
徹が目を見開く。
「えっ、高橋社長って、父さんの投資先の社長!?」
「そうだ。」
細川社長は慌てて立ち上がり、背筋を伸ばした。
「高橋社長には、うちのグループがどれだけお世話になっているか……。ほら、徹、挨拶しろ!
」
「は、はいっ。俺、細川徹っていいます。理皇大学に通ってます!」
(理皇大学――俺が本来、推薦で行けるはずだった場所だ。)
だが高橋社長は、徹を一瞥しただけで目もくれず、低い声で言った。
「細川さん。今回の投資案件ですが、撤回させていただきます。」
「……は? ど、どういうことです!? わたし、何か失礼を――」
「上の方の命令です。」その一言に、店の空気がさらに凍った。
「上の……方?」細川社長が震える声を出す。高橋は淡々と続けた。
「あなた、最近の下請けへの支払い遅延、圧迫交渉、粉飾決算。全部、報告が上がっています。これまでは“見逃してほしい”という声もありましたが……もうその必要はなくなりました。」
「な、何を言うか! この場で取引停止だと!? それに……なぜこの場所がわかった!」
「“上”からの知らせです。」
「上、上って……お前の上は一体誰なんだ!?」
「あなたに名を教えるほど安くはない。」
怒りに顔を真っ赤に染めた細川が叫ぶ。
「ふざけるなぁぁ! お前ら、あの裏切り者を捕まえろ!」
黒服たちが一斉に高橋に迫る。
だが――
「お前たち!」
高橋が短く命じると、入口からさらに倍の人数の男たちが現れた。
黒い波のように店を埋め尽くし、細川側の部下を一瞬で取り囲む。
「……くっ、仕方がない。今日のところは引いてやる。」
細川社長は悔しそうに唸り、歯を食いしばった。
「だが覚えておけ。高橋、そして……鈴木。貴様ら、必ず潰してやる。」
徹が唇を噛みしめながらつぶやく。
「父さん、あいつ(渡辺)は?」
「今は引くんだ。ここで恥を晒すわけにはいかん。」
二人は黒服を引き連れて去っていった。店に残った静寂の中で、ようやく息ができた。
高橋社長はすぐに鈴木おじいさんへ頭を下げた。
「遅れて申し訳ありません。もう少し早く到着できれば……。」
「いいのだよ。ここから高橋くんの会社までは遠い。仕方あるまい。」
鈴木おじいさんは穏やかに笑った。
(……ん? 待て、なぜ高橋社長が“頭を下げている”?)
細川グループと並ぶ巨大企業の社長が、なぜこの小柄な老人に敬語なのか。頭の中が混乱していた。
高橋社長は俺の方を見て尋ねた。「鈴木様。こちらの方は?」
「私の孫の優斗だ。うちのグループの後継者になる。」
「なっ……なんと!」
高橋社長の顔色が一変する。
そして立ち上がり、僕に深々と頭を下げた。
「大変失礼いたしました、優斗様。これからどうぞよろしくお願いいたします!」
……優斗様?ちょっと待ってくれ。何が起きてるんだ?
鈴木おじいさんって、やっぱりただの老人じゃなかったのか。
グループ? 後継者? 俺の頭の中は真っ白だった。
「面白かった!」
「続きが気になる、読みたい!」
「今後どうなるの!?」
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