表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/11

第二話 

あくる朝、俺は鈴木おじいさんと一緒に、祖父母の家を出た。


両親は笑顔で見送ってくれた──とは聞いた話だ。

実際、その時の俺の胸は複雑だった。


都会にいた頃は裕福だったというが、すべてを捨ててここに来たために生活は苦しくなり、家族は人数を減らしたがっていたらしい。つまり、俺は邪魔者扱いだったのだ。


ひどい話だと思った。だが不思議と、心のどこかでこれでよかったのだと感じている自分もいた。



舗装の端に停められた黒い車が目に入ったとき、俺は固まった。


あのエンブレム、見覚えがある。ベンツだ!


鈴木おじいさんは普段着のままだったから、その組み合わせがどうにも不釣り合いで、胸の中に疑問符が増える。


車に乗ると、専属らしい運転手が座っていた。

「車を呼んでおいたんだ。さ、乗りなさい」


おじいさんは涼しい顔で言う。俺の頭の中は混乱していた。


まさか、この人、金持ち――いや、富豪なのか。



長い道のりを走り、俺はいつのまにか眠ってしまった。目を覚ますと、すでに鈴木家の門前にいた。

外観は一見すると普通の一軒家で、期待していた「豪邸」ではなかった。


都会で暮らしていた頃の家と大差ないくらいのサイズだ。

だが、運転手付きのベンツを持つ人物が「一般人」のはずがない。ますます正体が分からなくなった。


家に入ると、おじいさんはにこりと笑って言った。

「お前さんはわしの養子だ。だが条件がある。今日から詰めて勉強してもらう。」


「急ですね。いいですが、どんな勉強ですか?大学受験のための……」


おじいさんは肩をすくめた。

「いや。組織のこと、投資のこと、金の使い方から帝王学までだ。社長になるための勉強ともいえるが、要は世の中の仕組みを知るということだ。」


「組織の勉強って……僕は社長になるつもりは――」


「細川への見返しがしたいんだろ?」


「はい。もしかして、細川を倒す手助けをしてくださるんですか?」


おじいさんは冷静に言った。

「ちと違うが、まあそんなところだ。だが覚えておけ。恨みを晴らすのは力でなく、正しい力でだ。」


その日から、俺の生活は一変した。

家の留守を任される代わりに、書類の読み方、会計の基礎、組織の意思決定の流れ、投資理論の初歩を詰め込まれた。


最初は訳が分からず疲れたが、学ぶうちに面白さが芽生え、気づけば没頭していた。

おじいさんは遠目から微笑み、時折ぽつりと助言をくれた。

「よしよし、これでわしの後継ぎが決まったな」──おじいさんのそんな独り言が、夜の縁側に小さく響くのを聞きながら、俺は未来を夢想した。


一年後、俺は課されたノルマをすべてクリアしていた。

おじいさん自身が驚いている様子だった。

「驚いたぞ。まさかこんなに早く終わるとはな。では褒美だ。今夜、私のよく行く店に連れていこう。」



〜夜〜

店は噂に聞く高級店「天藍てんらん」だった。料理の一皿一皿が芸術のように出され、空気が違う。

俺は緊張と嬉しさで胸がいっぱいだった。


おじいさんは遠慮なく薦めてくれる。

「遠慮なく食べなさい。お前は私の孫だ」

その言葉に、温かさと重みが混じった感情が胸に広がった。俺はただ、感謝しかなかった。


だが、丁度その瞬間だった。店の入り口から聞き慣れた低い声がした。「おい!」

振り返ると、そこには細川社長と、あの日俺を襲った細川徹の姿があった。


まるで運命の嫌がらせのように、最悪のタイミングだ。

「鈴木さん、細川です。失礼します」俺は一瞬、体が固まった。

逃げたい。


だがおじいさんが俺の肩に手を置き、静かに言った。

「大丈夫だ。あんな連中は放っておけ。冷めちゃうぞ?」


細川社長が根太い声で言う。

「お前の孫とやらに用がある。ちょっと場所を空けてもらおう」


──その声に、黒服の男たちがぞろぞろと店内に入ってきた。

場の空気が一瞬で変わる。


「おい、あの男を連れてこい」

細川社長の声に、俺は反射的に立ち上がろうとした。


すると、鈴木おじいさんが立ち上がり、低く言った。

「私の孫に手を出してみろ。きっと後悔するぞ。」


俺は震えながら止めた。

「おじいさん、やめてください。彼は細川社長だ。僕を狙ってるはずです。巻き込まないでください」


「お前を養子にした時点で、私もこの問題の責任を取る」

おじいさんの瞳は真剣だった。


それだけ言うと、おじいさんは静かに腕を組んだ。

細川社長は罵声を浴びせ、部下に命令した。


店内は騒然となり、ウェイトレスが必死で制止する。

だが勢いは止まらない。



俺の周りで男たちが動き出し、俺の肩に手が伸びたその時──







「待ちなさい!」

誰の声かは分からなかった。

だがその声には、店内のざわめきを一瞬で止める力があった。

「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるの!?」





と思ったら


下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当にうれしいです。


何卒よろしくお願いします。



これから毎日3つずつ投稿していきますので『田舎者の大富豪』どうぞお楽しみ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ