表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/11

第十一話

入社して三ヶ月が経った。



昼休憩中、

さやかさんとすずかさんが理天商事の食堂で楽しそうに談笑していた。

俺はその輪に混ざろうと歩み寄った――が、そこへ昼食のお盆を持った部長が現れた。


部長「二人とも、混ぜてくれないかな?」


油の抜けた笑顔。おじさん特有の馴れ馴れしい口調だった。


二人は苦笑し、さりげなく席を立とうとしたが――

部長「どこ行くの? いいじゃないか、一緒に話そうよ」


さやか「このあと、頼まれていた資料をまとめないといけなくて」すずか「私はこのあと、面談の予定があるんです」


部長「へぇ、わざわざ予定を作ったんじゃないのか?」

語尾に嫌なねっとり感があった。


普段は女性社員に軽くあしらわれるだけの男だが、この日は機嫌が悪いのか、口調が妙に荒い。


部長「お前ら、他の奴より早く昇進したいだろ? だったら俺の言うこと、聞こうよ。な? 昇進は約束してやる」


さやか「いえ、結構です。失礼します」


部長「待てよ。いつもいつも俺の誘いを断りやがって……今日は強制だ。お前を夜の食事に連れて行く!」

そう言って、さやかの腕を強く掴んだ。


俺の中で、何かがプツンと切れた。

俺「おい、いい加減にしろ! あんたらはセクハラしか能がないのか? 訴えるぞ!」


部長「あぁん? 課長も言ってただろ。いくら訴えたって無駄だ。俺たちの後ろには細川グループがいるんだよ。警察だって簡単には動かねぇ。逆らえば、お前の方が消されるぜ」

その不遜な笑みの奥に、歪んだ自信が滲んでいた。


そこへ、さらに嫌な声が重なる。

課長「部長、こいつはもうクビにしましょうよ。生意気すぎますよ」


部長「そうだな。左遷だ。こいつ以上に俺たちに逆らった奴はいない」


課長「おい、左遷されたくなければ、俺たちに土下座して謝れ。そうすれば許してやる」


俺「断る! あんたらこそ、俺とさやかさん、すずかさんに土下座して謝れ!」


課長「まだ逆らうか! いい加減に俺たちの犬になれ!」

そう言って、課長が俺の頭を掴み、無理やり土下座させようとした――


その瞬間!!

??「やめなさい!」


低く鋭い声が、食堂中に響き渡った。

声の主を見て、全員が凍りつく。


理天商事・現代表、東三郎社長だった。


部長「え、な、なんで……」

課長「しゃ、社長!?」


二人の顔から血の気が引いていく。


東社長「前々からおかしいと思っていた。うちの評判が悪いのは、お前たちのせいか? 谷口! お前の取引先から、莫大な賠償金を要求されたぞ。一体何をやったんだ!」


谷口(部長)「そ、それは……」


東社長「しかも、課長の佐山。お前はまたセクハラで訴えられている! 毎度、細川大社長に頭を下げてなんとかしているのは誰だと思っている!? この前、『次はない』とまで言われたばかりだ! もう余計なことはするな!」


谷口部長「も、申し訳ございません……」


東社長「もういい。二人とも、持ち場に戻れ!」

二人は青ざめた顔で頭を下げ、食堂を後にした。


東社長はふぅ、と息をついてから俺に向き直った。

東社長「いやぁ、すまないね。君は――鈴木優斗くんだったかな? いつも勇敢にあいつらと戦っている姿を、陰で見ていたよ。……だから、君を常務に任命しようと思っている」


俺「えっ、本当ですか!?」


東社長「あぁ。うちの会社もな、金と権力だけを求める連中が増えてしまってな。だが君は違う。誠実に働き、人を守ろうとする心を持っている。そういう人間に賭けてみたいんだ。やってみるか?」


俺「……ぜひ、やらせてください!」


東社長「うむ。明日から私の右腕として支えてくれ」


思わず息を呑んだ。まさか三ヶ月で常務にまで上り詰めるとは――予定より二ヶ月早い。こうして俺は、理天商事の中枢に食い込むことに成功した。




翌日、社長室。東社長と、その隣には息子の武弘が立っていた。

東社長「集まってもらったのは他でもない。この地区の利権を確保したいのだが、ライバルの新井システム株式会社が狙っている。……どうか力を貸してくれ」


俺「わかりました。任せてください」

俺は確信していた。

――なぜなら、その新井システムは俺の傘下だからだ。命じれば即座に手を引かせることもできる。


だが、武弘が不満げに声を上げた。

武弘「なぁ親父、なんでこんな入社したばかりの奴と組むんだよ? それに、常務にまで昇格させるなんて!」


東社長「武弘、今が勝負のときなんだ。彼のこれまでの実績を見たが、誰よりも優秀だった。文句は言わせん」


武弘「チッ……。おい、お前、俺の足を引っ張ったら許さねぇからな!」


俺「あなたこそ、足を引っ張らないでくださいね」


武弘「なんだと!?」


東社長「やめろ二人とも! 武弘、お前は四つ上だろう? 兄貴分として接しなさい」


武弘「親父、俺もう二十七だぞ! ガキ扱いするなよ!」

……この男、本当に副社長か? 中身は完全にガキだ。




その夜、俺は傘下の新井システム株式会社を訪れた。車を降りた瞬間、社長の新井義勇が深々と頭を下げた。


新井社長「これはこれは、優斗様。まさか直々にお越しになるとは。どういったご用件で?」


俺「少しお願いがある。中で話そう」


新井システム社内。重厚な応接室で、俺は率直に切り出した。

「今回のこの地区の利権だが――手を引いてほしい」


新井社長「な、なぜです!? あの地区には全力を注いでいるんですよ!」


「理天商事がライバルだろう? 実は俺、今その会社の常務をやっているんだ」


説明を終えると、新井社長は目を丸くした。

「なるほど……しかし、この利権だけは譲れません」


「ではこうしよう。もし譲ってくれたら――この地図の地区をあなたに渡す」

俺が地図を広げると、新井の目が輝いた。


「ここは……! “金鉱地帯”と呼ばれるほど利益が出る場所じゃないですか! 本当に、よろしいのですか!?」


「あぁ。それに加えて、さらなる支援も約束する」


「……あなたは神様ですか? こんな厚意を受けたのは初めてです。喜んで譲りましょう!」


「助かる。また今度、改めて訪ねよう」


「はい! 必ず、この会社を発展させてみせます!」


俺は満足げに頷いた。

――これで、この地区は理天商事のものだ。(もう、めちゃくちゃだな……笑)



翌日。

俺は東社長に報告した。

「昨日の利権の件、無事に契約が決まりました」

その言葉に、二人は凍りつく。


武弘「はぁ? 新井システムがたった一日で手を引くわけがない! 嘘だ!」


俺「本当です。これが証拠です」

東社長が資料に目を通す。


東社長「……信じられんが本当だ。優斗くん、君は天才だ。

褒美をやろう。何がいい?」


俺「そうですね――(少し考え)――では、細川グループとの提携を止めてください」


東社長「なっ……!?」


武弘「バカか!? 細川グループとの関係を切ったら、俺たちは終わりだ!」


東社長「そうだ。細川社長には莫大な融資金がある。逆らえないんだ」


俺は静かに笑った。

俺「だからこそ、俺が提案するんです。……鈴木財閥と繋がりのある者が、あなた方に100億を譲ると言っていました」


武弘「はぁ!? 鈴木財閥だと? 国家レベルの組織だぞ! そんな金、簡単に動かせるわけない!」


俺「じゃあ、あなた方の口座を確認してみなさい」


武弘「いいだろう。嘘だったらクビだぞ!親父、見てみてくれ。」


東社長が震える指で端末を開く。

東社長「……ま、まさか……本当に……100億が……!」


武弘「な、なんだと!?」



静寂。


その場にいた全員の視線が、俺に集まる。


俺「言っただろう、武弘。俺の言葉はすべて現実になる」


東社長「……あなたは、一体何者なんだ? この会社を、あなたに任せたい」


武弘「父さん!? この会社は俺に譲るって言ったじゃん!」


東社長「うるさい! 一日で利権を取り、鈴木財閥から100億を引き出した。すべて優斗くんのおかげだ。彼のような男は見たことがない。――武弘、お前はこれから、優斗さんを支えるんだ」


武弘「……そんなの、俺は認めない!」


叫び声を残し、彼は社長室を飛び出していった。

静まり返る室内で、俺はゆっくりと笑みを浮かべる。



――計画は順調だ。

どんどんと、楽しくなってきた。





……だが、この後に待つ“裏切り”を、俺はまだ知らなかった。


「面白かった!」




「続きが気になる、読みたい!」




「今後どうなるの!?」










と思ったら




下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。




面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!




ブックマークもいただけると本当にうれしいです。




何卒よろしくお願いします。






これから毎日3つずつ投稿していきますので『田舎者の大富豪』どうぞお楽しみに!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ