ハジメさんを探そう
「そんなわけで、神楽くんにはハジメさんを探してきてほしいんです」
「ハジメさん?」
ダイニングフロアにおり、淹れたての紅色の茶を二人ですする。
鼻腔を抜ける南国の花のような香りを爽やかな味覚が心地いい。
「うん・・・・・・美味しいですね」
湯気が立ち上るティーカップを包むように優しく、潤う唇を当てて優しく飲む。
ユウキさんはオンオフ激しいが基本的に大人の女性、という事なのだろうか。
「自白強要剤の味はどうですか?」
「・・・・・・!?」
「うそです。・・・・・・ふふっ」
真顔で嘘をつくのでユウキさんは本当に読めない。年も20歳後半にも見えるし、50歳近くのようにも見える。本当に不思議な女性だ。
「果たして何歳だと思いますか」
「分かりませんし息を吐くように読心しないで下さい」
「日課なんです」
恐ろしい日課だ。
そんな他愛もない会話をしつつ本題への下ごしらえが終了。
樹齢も長い良質な木材で作られたであろう、柔らかい色目の椅子に深くこしかけ、会話を進める。
俺から話題を切り出した。
「それで、ハジメさんってどんな人なんです?」
そも名前がハジメさんて、まるで男みたいな名前だ。
「あぁ、神楽さんははじめてでしたね。ハジメさんはリラックの姫様の名前ですよ。まだ少女ですけどね。良く失踪・・・・・・お忍びでエンドに来ては好き勝手やっている方です。まあ、言うなればトラブルメーカーですね」
ユウキさんの口が悪くなっているという事は、過去相当にやらかした姫様なのだろうか・・・・・・。
「実は今日も王宮から精霊連絡が来たのですが、ハジメさんがエンドで発生中の海獣狩りに向かってしまったそうです。まあ、基本的に放ってても問題ないのですが、要人に近い人間というのはしがらみも多いものでして」
「・・・・・・ユウキさんとハジメ?さんは仲が悪いんですか?」
当然に思った疑問をぶつけてみる。
実際俺はハジメさんとやらとあった事もないし、事情はわからない。
そんな俺の感情を救ったかのように、ぽつりとユウキさんは呟く。
「いえ、仲が悪い訳ではありません。そう、人としては全然悪くないんですが・・・・・・」
「?」
「神楽くん、少し覚えていてほしいのですが、ハジメさんはリラックの楔なんですよ」
「くさび・・・・・・ですか」
「そう。私やマイと関わると言うことは、いずれ神楽くんにも生じてくる事。そして、ハジメさんがいることで私たちは平穏を保たれる。その事を心のどこかにとどめておいて」
いつになく真剣なユウキさん。きっと、どこかで本当に直面する時期が来るのだろう。なぜかそんな予感がした。
紅茶と思わしき飲料も飲み終わり、背をグッと伸ばした。体も温まったので、移動の準備も万全。
こちらの世界は徒歩が基本なので、最近どことなく体調ががいい。
「じゃあ散歩がてら、ハジメさんを探して来ますよ。どこら辺を探したらいいですか」
「そうですね・・・・・・では、いったんは歩いてすぐの騎士団宿舎にいってみてください。そこでマイが公務騎士を指揮していると思うので、手伝ってみるといいと思います」
「承知です」
身なりもささっと整え、玄関を開ける。
「いってらっしゃい、神楽くん。頑張って」
「・・・・・・いってきますね、ユウキさん」
「はい、気を付けて」
他愛もない挨拶。
数年振りに思えた他愛もない儀式が、なぜかすこぶる心地よかった。




