消えた姫
俺が他人の能力を極限まで強化した上で、自身のものにする能力「他力本人」を獲得してはや数日。
「リラック」とよばれる世界に転生したばかりの俺に居場所はないので、ひとまずユウキさんのギルド兼酒場「赤き旗手」の一室を借りて生活を行っている。
転生後の生活は基本的にマイが手引きしてくれるそうだが、どうやら最近エンドの街に問題が多発しているそうで、騎士として鎮圧に赴く事が義務のためか、なかなか俺の生活まで手が回らない様子だ。
ひとまずマイ、ユウキさんと交渉し、「赤き旗手」が助っ人を欲した時に働く対価として衣食住をユウキさんから供給してもらう事とした。
マイはその事に罪悪感を感じているのか、会うたびに涙目で申し訳なさそうに謝罪するのがここ最近のルーティンだ。そんなに気にしなくてもいいのだが。
また、ユウキさんは基本的にハイスペックなので、助っ人を欲する機会も多くない。逆にこちらが手伝いを申し出ると大丈夫ですからまだゆっくりしてて、と言われる始末。
「ふぁぁ・・・・・・眠い」
そんなわけで、新生活を公式に始められないという大義名分を獲得した俺は今日も今日とて太陽が昇るまで惰眠をむさぼっていた。
小窓から差し込んでくる柔らかな光と鳥のさえずりごときでは俺の快眠を妨害することなどできぬ。
恐らく太陽はまったく頭上にあるが、未だ寝巻きでふかふかのベッドの上を陣取っている。ここは俺のサンクチュアリだ。
「我ながらクズみたいな事している気がするが、まあいいか・・・・・・眠いし」
眠気に身を任せ、再度の睡眠を試みる。
正直な所、このような生活を続ける事に不安がないわけではない。いつまでもこんな生活ができるわけでもないし、何より食いぶちになるであろうこの能力の使い方をよく分かっていないからだ。
「俺にできる事はまだ分からないが・・・・・・なるようになるか」
よし、寝よう。寝れば解決するだろう。
決断の刹那、寝室を守護するドアがきぃっと鳴いた。
ぴょこっと茶色のポニーテールが飛び出たと思えば、エプロン姿のユウキさんが現れた。
「あ、ユウキさ」
「神楽くん、起きてますか?・・・・・・よかった。姫様が消えたので探してきてくれません?」
眠気まとう俺の脳に容赦なく氷水をぶっかけてくるユウキさん。
飼い犬が消えたノリで姫様の失踪を相談されるとは・・・・・・。




