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第五話
私はまず、自分が今神社のどこにいるのかを確認することにした。
近くには戌の像が建てられている。
像の瞳の部分には宝石が埋め込まれている。
宝石の白色の輝きのなかに青色が美しく輝いている。
「きれい……。」
私はその宝石に見とれてしまった。
こんなにも美しく輝く宝石を、私は今まで一度も見た事がない。
その時、後ろの方から物音がした。
後ろを振り返るとそこには鬼がいた。
鬼は持っている刀を振り上げる。
攻撃される。
そう思う暇もなく、私の体は勝手に動きだした。
鬼の刀はなんでも切り裂いてしまうのだろうか。
攻撃を避けた後に聞こえた音は石のようなものが崩れ落ちるような音。
石像が崩れた音なのだと瞬時に理解した。
しかし瞳の宝石は切られていないようだった。
私の目にはあの時とは変わらない形の宝石が光っているのが見えた。
宝石が欲しい、そう思って手を伸ばそうとしたが、今はそんなことをしている暇は無い。
私は自分の足を精一杯動かし、鬼から逃げた。
その時の私の頭には鬼から逃げることしか考えられなかった。