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第十二話
これがあの本に載っていたブラックアンバーという宝石なのだろうか。
鬼は落ちていたことに気が付かずに、その宝石に触れてしまったのだろうか。
なんだか分からないが、とりあえず命が助かったので良いとしよう。
私は状況が呑み込めず混乱気味である自分を落ち着かせ、落ちていた宝石を拾う。
もしこれがブラックアンバーという宝石なのなら、本殿に行って御神体として飾れば、鳥居が現れて外に出ることが出来るのではないだろうか。
私はそのことを嬉しく思ったが、どこか寂しいような、不思議な感情を覚えた。
何かが足りないような、そんな感覚を。
ひとまず私は本殿へと向かう。
そして御神体を飾ると、遠くから大きな音がした。
私はこの音が鳥居の出現した音なのだと、すぐに理解した。
なぜなら、私がここへと来る時に聞こえた音と同じだったからだ。
私は鳥居があった場所へと足を動かした。
私の予想通り、そこに鳥居の姿はあり、私はその大きな鳥居をくぐりぬけた。
鳥居から神社の外へと出てからの、私の記憶は無い。




