第一話
「はぁ、はぁ。」
私は息を荒げながら歩き続ける。
自由に伸び散らかす草をかきわけながら、月明かりに照らされた夜道を進む。
私を取り囲むように生える木々。
私のことをこの森から出そうとしない。
私が森から出ていくのを拒むように生えている。
この森に迷い込んで数日が経った。
私の体もすでに限界に近い。
そのとき、私の視界に立派な神社がうつった。
ところどころ古びており、だいぶ昔に建てられたであろう建物だが、それでも立派な神社だと思える。
私はその神社に吸い込まれるように足を踏み入れた。
大きな鳥居をくぐる。
神社の周りは薄暗く、明かりと言えるようなものは数えられるほどの松明しかなかった。
神社の雰囲気に押しつぶされそうになるが、それでも私は神社から出ていくことはしなかった。
ここ以外行くあてがない。
圧に負けて神社を飛び出したとしても自分の家まで生きて帰れるかわかったものじゃない。
それならこの神社で助けを待つほうがいいと考えた。
森を彷徨っているよりも神社の中にいたほうが見つけてもらえると考えたからだ。
森の中にぽつんと立つこの神社が目立たないなどということはないだろう。
広い神社の敷地をまっすぐと進み本殿の目の前までやってくる。
本殿に入ろうと一歩足を踏み出したときだった。
後ろから物音がした。
反射的に音のした方に目をやると、そこには一人の男性が立っていた。
整った顔立ち、夜風になびかれている美しい髪。
美少年とはこの人のようなことを言うのだろうと感じた。
男性は驚いているようだったが、すぐに表情は戻り、私に話しかけてきた。
「ここで何をされているのですか?」
「森で迷ってしまって、しばらくの間ここにいてもいいですか?」
私は男性に尋ねた。
この男性はこの神社の神主さんなのだろう。
「……いいですよ。」
神主は少し間を開けてから返事をした。
私はその言葉の間に少し違和感を覚えた。
第二話は14時30分に投稿します