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劉備が勝つ三国志  作者: みらいつりびと


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政略恋愛結婚

 劉備一行が建業に着くと、孫権と彼の重臣、張昭、張紘、魯粛らは、丁重にもてなした。

 彼らは孫劉同盟が揚州の安定のために不可欠であると知っていた。

 一方でその同盟は、孫家のさらなる発展に対する縛りでもあった。荊州への侵攻はできない。呂蒙や陸遜らの武官は、それが不満であった。彼らは劉備たちを冷ややかに見ていた。

 孫権は、武闘派が劉備暗殺などの妙な動きをしないか、気を配っていた。

 周瑜は領土拡張主義的な考えを持っていたが、孫権は領土保全主義的であった。なによりも揚州の安定と繁栄が優先で、版図拡大は二の次。


 劉備と孫尚香が出会う日が来た。

 建業城の貴賓室に、劉備と孫権が対面して座り、それぞれの背後に張飛と趙雲、甘寧と周泰が立っていた。

 そこへ男装の尚香がやってきた。彼女は槍を持っていた。

 孫権はうろたえた。

「おまえ、着飾って来いと言ったのに、なんだそのなりは? それに槍など持ってなんのつもりだ?」

「劉備様は英雄であるとお聞きしています。わたしは前から、英雄と槍の試合をしたいと思っていたのです」と尚香は言った。


 劉備は内心でかなり驚いたが、妻になるかもしれない女性相手に見苦しいところは見せたくないと思って、おおらかに笑ってみせた。

「孫尚香殿、英雄とは、武術がすぐれた者のことではない。その者たちを率いている者のことを言うのだ。ちがうかい?」

「なるほど、そうかもしれません」

「おれは張飛や趙雲を率いている。ふたりは一騎当千の豪傑だ。英雄の威力を知りたければ、彼らと試合をしてみればよい」

「なっ」

 孫権は仰天した。妹が張飛や趙雲と槍の試合をすれば、殺されてしまうかもしれない。

「劉備殿、冗談はやめてください」と言おうとしたが、その前に尚香が「それではぜひお願いします」と言ってしまった。男勝りの性格をした女性である。


「だいじょうぶですよ、孫権殿。女性相手に無茶はしません。そうだな、子龍?」

「はい」

 劉備から名を呼ばれて、趙雲が尚香の前に立った。彼は素手であった。


「趙雲様、わたしの槍は本物ですよ?」

「かまいません。本気でかかってきてください。私を殺すつもりで……」

 尚香は趙雲を見つめた。

 剛の者が持つ迫力が感じられた。槍を持っていても気圧される。

 これほどの人とは戦ったことがない、と彼女は思った。

 わくわくした。闘志が湧いてきた。本当に殺すつもりでやらせてもらうわよ……。


 尚香は槍を突き出した。

 趙雲はひらりとかわした。

 何度真剣に槍を突いても、趙雲の体にはかすりもしなかった。やがて尚香は疲れて、息が荒くなってきた。

「あなたの視線や腕や肩の予備動作で、私には槍の軌道が事前にわかるのです」と趙雲は言った。

「侮らないでください! わたしだって、鍛錬をしているのです!」

 尚香が渾身の突きを繰り出した。

 趙雲は槍の柄をぱしっとつかんだ。

「勝負ありですね」と甘寧が言った。

 尚香は唇を歪めた。悔しい……。


「尚香、こちらへ来て座れ」

 孫権は手招きした。

「まだです。張飛様とも試合をさせてください!」

 強気な尚香が叫んだ。

「いいのか、おれは趙雲ほどやさしくはないぞ」

 張飛が立ち上がった。


「劉備殿、止めてください!」

 孫権は慌てていたが、劉備はもう落ち着いていた。面白い女の子だ、と思っていた。

「尚香殿、そんなにも戦いたいのかい?」

「はい!」

「張飛、豪傑とはどういうものか、教えて差し上げろ」

 張飛はうなずき、素手で尚香に向き合った。


 尚香は敵の強さもわからないような半端な修行はしていない。

 むしろ相手の強さに敏感だった。

 張飛の体躯や動作をすばやく観察している。そして、その殺気をひりひりと肌で感じていた。

 この人はとてつもなく強い。気迫で負けてはいけない……!

 彼女は一撃で殺すつもりで、「やあーっ!」と叫び、槍を突いた。

 張飛は拳で、その槍を真っ二つに折った。

「やれやれ、大人げない」と甘寧はつぶやいた。


 尚香は劉備の前の席に座った。試合で全精力を使い果たし、肩で息をしていた。

「よく戦われた。あっぱれな人だ」

 劉備はそう言って、微笑んだ。

「ありがとうございます。英雄がどういうものか、少しわかった気がします」

 尚香も笑った。

 ふたりの間に、自然な好意が漂っていた。


 十日後、建業城で盛大な結婚式典が開かれた。

 それは政略結婚であったが、恋愛結婚でもあった。

 劉備の横にしあわせそうに孫尚香が寄り添っていて、呂蒙らはまったく手出しすることができなかった。

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