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虚無  作者: 春風 凪
1/1

傾き

「村田、何度言ったらわかるんだ」

村田は、挨拶が小さい。

上級生を前にして、きちんと挨拶をしないことはマナーに反する。そのため厳しく指導する必要がある。

下級生の教育は、上級生の責務である。

指導が終わると、村田は地べたに膝をついて、頭を抱えた。

呼吸が荒い。

「ごめんないごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

こちらは謝罪を要求している訳ではない。

改善を要求しているのだ。

その点についても、厳しく指導する必要がある。

私は、村田が大きな声で挨拶出来るまで丁寧に指導し続けた。

同級生の城田がやってきて、私に言った。

「なぁ斉藤、さすがにやりすぎじゃないか?村田、体調悪そうだし保健室に連れて行こうぜ」

出来ないことを出来ないままにしておくことは本人の為にならない。

それに下級生への指導を放棄することになる。

私は村田を見捨てない。

その日、村田は練習に参加させなかった。

その代わりに、大きな声で挨拶する練習をさせた。

部活動が終わり、帰路につく。

一人で居残り練習をしていたため、帰りが遅くなってしまった。

帰り道、前方からランニングをする男が近づいてくる。

見覚えるのある体格だ。

男の顔をみた。

村田だ。

部活動とは別に自主練習に励むことは良いことだ。

自主練習に取り組む下級生にすれ違ったら、上級生は労いの言葉をかけるべきだろう。

村田に声をかける。

村田が私に気づく。

途端、村田は動きを止めた。

村田は肩を上下させ、口を両手で覆った。

村田が地面に膝をついた。

「大丈夫か」と声をかけ、村田の肩に手を置く。

村田は、奇声を発しながら私の手を払った。

今の村田の態度は、上級生にとるべき態度ではなかった。

部活動以外でも、上級生は、責任を持って下級生を指導するべきである。

私は村田を叱った。

村田の目が泳いでいる。

上級生である私の話を聞いていない証拠だ。

私は村田の胸ぐらを掴んだ。

村田が奇声を発しながら抵抗する。

村田は私の手に噛みつき、車道に飛び出した。

村田は車にはねられた。

村田は動かない。

村田に「大丈夫か」と声をかけたが、反応がない。

事故現場に遭遇したら、速やかに救助して警察に電話しなければならない。

村田は動かないため、救助は必要ないだろう。

警察に電話だ。


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