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劣等貴族のレクイエム -訳アリ転生の人生劇- (休載中)  作者: 山海ハルト少佐
第三章・南北戦争編
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56話 フィオナの行方を追え

「――ではこれより…救出作戦を開始する!」

「了解…!」


 ――俺は決心した。今だけは復讐も、敵対心も、血筋もすべて忘れて戦うと。

南軍に誘拐されたであろうフィオナ皇女を見つけ出し、帝国の決定的な敗戦だけは阻止する…!

俺が守りたいと思ったものの為、俺が生きた証の為、戦いに価値を見出すため…、


俺自身が成したことによって、その価値を図るため。



「ちょーっと待て待て…。まず、その皇女様とやらはどこにいるのかわかってるのか…⁉」

「私たち、無駄な戦いはしたくないですよ…?」


 悪態をつくクリスとレイナ。

事態はとにかく急を要した。だから(ヒューリーズ)C(コマンド)の全員を動かしている余裕も時間もない。

結果、部隊は信頼できる仲間に託し、リンクランツの街へ残してきた。

この作戦に参加するのはジャックさん、俺、レイナ、クリス、それと搔き集めた数人の騎士。


「言っただろ? 誘拐されたフィオナ様の居場所なんてわかるはずないって。だから僕らが捜すんじゃないか!」

「そんな簡単に言ってくれて…、」

「しっかりとした説明を求む。」



なら説明しよう、救出作戦の概要を…!

―――――――――

前提として、フィオナ皇女を誘拐したのは南軍。これはまず間違いない。

そして今、その犯行グループと皇女はどこにいるのか、それがまずわからない。

さてどうしようか。


しかしながら、犯行グループの行動が予想できないこともないのだ。


皇女を誘拐した目的は、この戦争における南軍の優勢を確実なものとするためだろう。

フィオナという一人の少女を手に入れただけで、それは大きなカードになる。

なにせ、人質として扱うことが出来るんだから…!


なら敵の行動は簡単だ。

敵はどんな手を使ってでも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

だったらどんな手を使うか…。答えは明白だ。

――――――――――



「―――俺だったら…、皇女を連れたまま真っ先に味方と合流したいところだね。」

「僕も同感だ。味方の軍勢に守られて、さっさと帰ってしまえばいいんだから。」


これが答えだ。


「なるほど…! つまり、それっぽい敵を片っ端から叩き潰せばいいんだな!」

「まぁそんなところだ…! そこまで脳筋ではないけど…、」


「――誘拐事件からの経過的に、敵はまだ遠くへ入っていないはず…。少なくとも南ヴィクタリアへ逃げおおせたことはないだろう…!」

「現に南軍主力は撤退しないし、むしろこの間から攻勢が強まってるみたいですからね。帝国軍の将校がボヤいてましたよ。」

「つまりは、誘拐グループとフィオナ皇女をお出迎えする準備か…!」



―――――――――――――――――――――



「――てなわけで! 最初の目標があの敵部隊だ!」

「誘拐グループの予想進路に近づく敵を片っ端から制圧する! そのお客様第一号がアレだ。」


俺たちが今どこにいるかって?

リンクランツから東へ数キロ、ワーグランツの近郊で陣取っている。

そして目前には敵部隊…! 数十人の手ごろな相手だ!


「とりあえず上っ面だけは理解できた! …久々の戦闘に血がたぎるぜ…!」

「やってることは盗賊みたいだけど…、ヴァルターがやるって言うなら私も戦うよ!」


 作戦のメイン。

今日から俺たちで敵を襲いまくる。

拷問でもすればそのうち、犯人と皇女に近づけるかもしれないしな。


「――よし、それでは作戦開始だ…!」

「いつも通りだ…レイナは魔術を、俺は射撃を…! クリスとジャックさんは突っ込め!」

「「シャアァァァァァァァ…!」」


― 久しぶりの戦闘開始だ ―

さて、当たりは引けるかな…?



―――――――――――――――――――――――



「――いやぁ…! 痛いよッ放してぇ…!」

「おっと! あんまりうるさくすると、もっとキツイお仕置きが来ますぜ? 皇女様よ…。」

「うぅ…いやだぁ…、」


薄暗い空間で泣き叫ぶフィオナ。

その幼い少女を強制的に泣き止ませる、武器を携えた男がいた。


「――あんまり手荒なことはしないでよ? その子の可愛いほっぺに傷がついちゃうでしょ…?」

「我々の任務は、皇女を生きたままレッドモンドへ持ち帰ることだ…。傷を負わせれば評価が下がる。」

「…へいへい、すみませんでした。」


「うぅ…うっ…うぅぅ…、」


 手荒な真似はよせと指示する、フィオナを誘拐した女スパイ。

自分たちの評価について語るのは、ガジリス首相を暗殺した男。


就寝中、寝巻のまま攫われてきたフィオナは、その豪華な寝巻を剥ぎ取られてしまっている。

服装一つで、誘拐された皇女だとバレてしまうから当然だ。

だから今は平民の娘に扮するため、ボロ衣で作られた洋服を一枚着ているだけである。

この女スパイはその母親役だ。


「しっかし…帝国のおバカさんたちは疑いもしないのね! ここに来るまで何人かの運び屋や軍人に会ったけど…、」

「あぁ、誰もフィオナ皇女だとは気が付かない。それだけ社会階級に固執する国という訳だ、帝国は。」

「平民風情が王族を見るべからず…ってか? ――いいご身分だなぁ皇女様よ!」


「いやぁ…⁉ お願い…怒らないでください…、怖いの…嫌です…!」

「へっ! 敬語か。言葉遣いだけは一丁前ですなぁ…流石は高貴な血筋のお方だ!」



 泣き叫ぶことしかできないフィオナ。

少女が唯一できるのは、創造主ヴィクダスに祈ること。

帝国軍が自分を助け出してくれるように…。


創造主に、救世主の到来を祈ることしかできないのだ…。


――――――――――


「…隊長、少しいいですか?」

「ん、なんだい?」


フィオナと共に女たちが潜伏する、真っ暗な部屋。

その外からやって来た、部隊の下っ端が報告する。


「実は…我々を迎えに来るはずだった師団の先兵が、何者かの襲撃によって壊滅したそうです…。」

「壊滅…? 何者かってなんだ、帝国軍の迎撃じゃないのか?」

「いえ…情報によれば、帝国軍ではないそうです。軍服を着ていないうえ、少人数の精鋭だったそうで。」



 南ヴィクタリアまではまだまだ距離がある。

彼らだけで、しかも帝国軍にバレずにフィオナを連れ帰るのは難しい話だ。

その為に、攻勢を強めていた第3軍団の部隊が、彼らを迎えに来る手はずだったらしい。

それがやられたって言うんだ…。


「…ヴィクダス様…? 祈りが…通じたの…?」



―――――――――――――――――――――



「――フリージング バレット…ッ!」

「続けて一発…、〈フレイム グレナディア〉」


氷の弾幕に続き、魔石龍の力で生み出したグレネードランチャー…!

このコンボで十人は倒した…!


「アルケミーアーム  アイアンスピア…ッ!」

「な、なんだ…⁉」

「腕が槍になった…⁉ ば、バケモノだ…魔獣だ⁉」


「――死ね…ッ!」


原理不明のオリジナル技、錬金術で敵を串刺しにしていくジャック。

その技もさることながら、近接戦の腕前も上等…。

色々な面で恐ろしい男だ。


――――――――――


「さて…これで制圧できたかな?」

「そうですね。…さて、話してもらおうか! お前たちはここで何をしていたのか!」


一人だけ、確保できた捕虜がいる。

恐らくはこの部隊の隊長だ。

ジャックさんは捕虜の頭を掴み、荒々しくもてなす。


「――アァ゛…やめろ! お、俺を尋問する気か⁉」

「尋問で済むかどうかはお前次第だ…! 全て吐かないと拷問になるよ⁉」


うひゃあ…怖い。


「ねぇ…ジャックさんってなんかこう…取り調べ的なの得意なのかな。」

「わからん…。だが彼の職務上、拷問の経験くらいありそうで怖い…。」


レイナが俺に耳打ちし、俺もそれに答えた。



「お前たちはどこかで、誰かと合流するように命じられていたんじゃないのか? そうだな…例えば、金髪碧眼の少女を連れた連中とか。」

「――い、いやッ知らない! …知るかそんなこと…!」

「……、よし分かった。拷問をお望みのようだな。」


そういってジャックさんが、ギラリと光る鉄の腕を見せつけると、


「ひぃぃ…わかった! 知っていることは話すから!」



ジャックさんの目が相当怖かったのか、男は慌てながら洗いざらい話し始めた…。


「女が一人と男数人の部隊が、主への道を通ってやってくると聞いて…。そいつらと合流するように師団長から命じられたんだ!」

「…他には――?」

「あんたの言うとおりだ…! その部隊は小さな少女を連れているって聞かされた…!」

「その少女についての詳細は?」

「そこまでは聞かされていない…。 ――ひいぃ⁉ 本当だ…下っ端の我々にはそれくらいしか伝えられていないんだ! 頼む…許してくれ…。」


男はとうとう泣き出し…しまいには小便まで漏らし始めた。

それを見た俺、れいな、クリスはドン引きする…。

その男にじゃない。尋問慣れしたジャックさんにだ。



「―――ヴァルター君、どうやらこいつらは外れらしいね…!」

「そうみたいですね。 ……ジャックさん?」

「あ、えっと…大丈夫ですか…?」


 なぜか、ジャックさんの様子が目に見えておかしかった。

これは…苛立ち? いや、焦りか?


「―――時間がない…時間がないのに…!」

「ジャックさん、まだ作戦は始まったばかりで…、」

「そんなこと言ってられない…! 帝国が負けてしまう…ヴィクタリアが負けてしまう…。この不信仰者どもに…!」


そういうとジャックさんは、男に手を上げる…。


「僕は…証明しなくちゃならないんだ…! 僕が成したことによって…その価値を…! 僕の闘争の価値を…!」


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