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劣等貴族のレクイエム -訳アリ転生の人生劇- (休載中)  作者: 山海ハルト少佐
第三章・南北戦争編
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48話 再熱

『ピュウゥゥゥゥ…ッ!』


やたらとデカい鳥の声。冗談抜きでうるせぇ。

しかもよく見れば、あのデカ鳥の背中には人間が乗っているじゃないか。


さっきリンクランツの前線の情報が入ったが、、

街を守っていた師団はどうやらアレに空中から攻撃されたらしい。

それで戦線は崩壊。市街地への撤退を余儀なくされたようだ。


「ヴァルター…あのデカい鳥から魔力をビンビン感じるぜ…!」 

「やっぱりありゃ魔獣か…。お前の魔力感知は便利だなぁ。」

「あぁ…ビンビンだ…!」

「ビンビン?」 

「そう、ビンビン。」

あまり言わない方がいいね。


それはさておき、俺たちが今どこにいるかって。

目の前にいる軍勢を見りゃわかる。


「アレが南軍の本隊…。テントがあちこちに設置してあるな…。」

「あぁ…、あの中に敵の司令官がいるはずだ…!」

「ていうか司令官って、どうやって見分けるの?」

「そりゃお前、服装とかだよ。明らかにTHE・将軍って感じがする奴。」


俺たちがいるのは、リンクランツを攻めている南軍の本隊。

要するに心臓部分だ。

ここまで来るのに、途中であのデカ鳥に見つかるんじゃないかと思ってたけど、案外大丈夫だった。

というか俺たちが着ている緑の軍服のおかげ。

やっぱり迷彩効果ってすげぇな。



―――――――――――――――――――――


― 遡ること少し前 リンクランツより西に十数キロの丘 ―


「それで…私たちは何をすればいいの?」


穴から這い出したレイナが俺に尋ねてくる。

這い出てきた時にチラ見えした胸元で内心ちょっと喜んだり。

そのくらいの余裕が今の俺にはあるという事だ。


「簡単さ。帝国軍の連中が正面からドンパチやってる間に、俺たちは美味しい所だけ持っていけばいいんだよ。」

「具体的には…?」

「説明してやるから来い。クリスも、それから小隊長もだ。」


俺は十数人単位で分けた小隊のリーダーも呼び寄せ、地面に地図を広げる。


「いいか?リンクランツを奪いに来た南軍は、街の正面で守っていた帝国軍とぶつかった。…まぁ当の連中はこっぴどくやられたようだが…。」

「そりゃそうだわ。リンクランツを守る部隊のほとんどは軍人じゃない。歴戦の騎士軍様は他の地域に送られちまったんだから…。」

「私たちの故郷には優先的に守る価値が無いんだね…。」


レイナさん田舎の自虐はよしてください。

と言いたいがコイツはあの街に実家がある身だ。

俺たちの中で誰よりも守るという意志が固い。


そこで、一人の小隊長が論点を戻した。


「それで?今から街に行って味方を援護するのですか?」

「いや、そんなことしても焼け石に水だ。 …要は、()()()()()()()()()()()()()()()()があればいい。」


俺は例題を出してみることにした。

クリスみたいなバカでもわかりそうな例題。


「そこでお前らに聞こう。例えば…脳みそを失った生物はどうなる?」

「死ぬ奴もいるんじゃね? 脳みそぶっ潰しても生きてる魔獣はいたぜ?」

「クリス…魔獣狩りの観点で話すなよ。――もういいや、お前に難しいことは言わん。」


「はい!脳が無くなったら死にます。もしくは動けなくなります。」


「レイナ君よろしい。じゃあ…指揮官(脳みそ)を失った組織ってどうなると思う…?」



賢い奴ならこれでわかるだろう。

賢くないクリスなどは…知らん!

ただ軍隊みたいな組織の構造って、割と人体の機能に似ていたりする。

だから脳である指揮官が突然いなくなれば、、、



「―――統制が取れなくなった南軍は自壊する…。そう言いたいんだね?」

「ご明察ですね…ジャックさん。」


俺の問題に答えたのはレイナでもクリスでも、H・Cの隊員でもない。

丘上の木に寄りかかって偉そうにしている、軍服の男。


〈ジャック・ファドラー〉 帝国警備隊(警察)の人間…だと思っていた。


「いやはや…まさかあなたが騎士軍の人間だったとは思いませんでしたよ。」

「ま、普段は警察の制服を着ていたからね。」


過去に俺とアルザスは二度、この男に会っている。

一度目はグランドル近衛連隊の本拠地で、二度目はブラムナスから帰る時。

シュタウゼン大佐やアルグレイとの関係性から、なにか特殊な立ち位置の人間かと思っていたが…。


要約するとこうだ。

ーーー

政治家との癒着や、組織の内部腐敗が進んだ帝国警備隊。

その状況を正すべく(クーデターのため)()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

そのスパイこそが、このジャックさんだという事だ。


やたらと騎士との関りが多いと不審に思っていたが、これで全ての辻褄(つじつま)があった。

ーーー


リンクランツの街でアルグレイが言っていた、H・C(俺たち)への()()()()()

諜報能力に長けたこの男が、その役目を任されたという事らしい。


「まったく…あんたらは俺たちの保護者かっつーの。」


「文句はさておきだ。…つまりは敵の指揮官を殺せばいい、ということだろう?ヴァルター・ヒューリーズ君。」

「そーいうことです。敵の脳みそさえ潰せば、少なくとも状況の改善は見込めるかと。」



さて、こいつらに説明するついでにだ。俺の作戦をまとめてみよう。


ーーーーー

司令官ってのは基本的に、兵隊の後ろも後ろにいるもんだ。

だから俺はこの丘で時を待った。敵の目が街の帝国軍(アルザスたち)へ釘付けになるまで。


H・Cが来ている服は全て、()()()()()()()()の軍服だ。

要するに迷彩効果があると思って構わない。

しかも少ない人数であるが故に、遠回りをして接近しても気付かれにくい。


敵さんがドンパチやっている間に…俺たちは後方の敵司令官を殺す‼


俺たちにできる最大限の事はこれくらいだ。

でもそれなりの重たい一撃になるはず。

ーーーーー


「友人を囮に使うとは…、ハハハ…随分と姑息な作戦だな。」


ジャックさんは嘲笑して見せた。

弱い奴なりに考えたいい作戦でしょう?と言ってやりたいな。


「――理論上はいい案だ。…しかし勝てる見込みは?君たちだけで敵司令官を討ち取れるとは、到底思えないなぁ…ハハハ。」


んだよ、また笑いやがった。

バカにされたような気がしたのか、レイナが反論して見せた。

目上の人間に…珍しい。


「きっと大丈夫です。よくわからないけど…ヴァルターについていけば大丈夫。私たちはそうしてここまで来たんです…!現に死んでません!」


「おいおい…そこまで言われちゃプレッシャーかかるじゃねぇかよ。」


やめてくれ。と言いたいところだが、ここはその期待を否定する場面じゃなさそうだ。

なにより俺はそこまで信頼されていたんだ。


「――でもありがとな…。よし!この戦争が終わったら例のケーキ奢ってやる!」

「え!ホントに? やったぁ!」


「ヴァルター君?それフラグだから、このあと絶対死ぬ奴のセリフだから。」

「ジャックさんナイスツッコミ。」


部隊内で少しの笑いが生まれた。

戦争なんで、そりゃ緊張で顔面蒼白の隊員もいたが、場が和んで何よりだ。


「――実際の所…勝ち筋なしでこんなことするほど、俺もバカじゃありませんよ。」

「なるほど…言いたいことはわかった。君たちの主力武器である()()()()()()()…ってことだろう?」


おお!またもご明察!

この人は俺の考えが読めるのだろうか…。思考パターンが似てるのかな?



「まぁ確かに…歴史上でも〈最強の騎馬隊を銃の戦列で倒した〉という事例だってあるからね。悪くない。」


「―――あれ? あの…、、」

「レイナ、どうした?」


突然、困惑したような表情を見せた。

何かおかしなことがあったかな…。

コイツ、たまにめちゃくちゃ勘のいい時があるからなぁ。



「―――ッ隊長!ヴァルター隊長…‼」

「…ん、偵察隊員か。 どうした⁉」


レイナの疑問符がなにか、訪ねておこうと思った時だ。

戦場の偵察に出ていた仲間が、急いで丘を登ってくる。


「帝国軍が後退します…!街に入って防衛を続けるようです!」

「――連中は街を戦火に巻き込む選択をしたわけだ。…南軍は⁉」

「後退した帝国軍を追うみたいです!」



――来た…!絶好の機会!

敵は追撃戦に移行して市街地へ突入、または包囲するだろう!


それすなわち、敵の最前列と後方の司令官との距離が開くことを意味する…!

エミリオよ…今回ばかりは運命が味方してくれたようだぜ…!



「スピード、これ大事。 ――ッ全員武器を持て!作戦を開始する。」


―――――――――――――――――


― 現在に至る ―


「クリス、魔獣が攻撃してきたら頼むぜ。」

「おうよ!それが俺の本業だからな!」


「レイナ、お前の氷は爆弾並みの威力だ。いざって時は盛大にぶちかませ…!」

「了解…!ご褒美のケーキ忘れないでね!」

「わかってらぁ。」


俺は一度振り返り、後方で待機する百人越えの仲間たちへ、


「さぁみんな!これから本当の戦いに突入するわけだけど、覚悟はできたか⁉」

「「「「「 おぉォォォォ! 」」」」」」


「祝杯用の酒は持ったか⁉」

「「「「「 おぉォォォォ! 」」」」」


うん。みんな元気があってよろしい。

そして予想してたことだけど…、、


「ヴァルター君、みんなが()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「あちゃ~、やっぱり? まぁその方がやりがいあるっしょ。」



実は今まで、木属性魔法で身を隠していました。

だから意外にも気付かれませんでした。

でも今の意気込んだ大声で気付かれたみたいだ。


敵陣の様子を伺えば…こちらに魔術槍兵やら魔術盾兵やらを展開し始めた。

やはりヴィクトル人の軍勢ともあって、兵士一人一人が魔術を扱う前提のようだ。

さすがは優等…武器に頼らなきゃ戦えない俺とは違うってか…!



「ヴィクトル人様のお出ましだぁ! 劣等の魔獣狩りがその首貰っていくぜ…‼」


「私の故郷を…家を…思い出を…絶対に奪わせない…!」


「しかたない…、僕も手を貸すとしようか。」


そうやらジャックさんまで一緒に戦うようだ。これで戦力は+1かな。

臨戦態勢。戦いに臨むと書くだけあって、それだけ緊張感のある局面だ。

だが…あの魔石龍を倒した(倒すところだった)俺に、人間の軍勢が怖いわけがない…!


「クリス、レイナ、みんな…。〈俺は常に諸子の先頭にあり。一層奮励努力せよ…!〉」


***************



『―――かかれぇぇぇ…!』 『『『 突撃ィィィ…‼ 』』』


敵陣から響いた突撃の合図。 

その直後に響き渡る、南軍が前進する足音。兵士たちの怒声。

それらが土の粉塵を巻き上げ、軍勢の屈強さを表していた。



「お前ら…!銃を構えろ‼  レイナ…!氷の弾幕だ‼」


忠実な俺の隊員たちは、すぐさま教育したとおりの動きを開始してくれた。

星硝石と弾丸を装填し、敵の戦列に向けて照準を合わせる。


レイナはブラムナスでも愛用していた杖を構え、魔力の充填を始めた。

たぎる聖因子が空気を揺らす…。

将来、大魔術師になる女の力をそこに集中する…!



「連中を効率よく地獄へ送ってやれ! ――ッ撃てぇ…ッ‼」

==================


一斉に放たれたヒューリーズ製ライフルが火を噴き、大量の硝煙を発生させた。

無数のマズルフラッシュが、敵陣へ向けて死をお届けする。


「フローズン バレット(弾幕)…‼」

===================


無数の氷塊が展開され、それがライフル弾に続いて敵陣を襲う…!

こちらから見える最前列では、兵士の体から血しぶきが出ていた。



『盾だ…!盾兵を前に出せ…!』

『サーフェイス リフト』 『フリージング バウンダリー』


前列を守るために前進した盾兵。

土魔術の壁に、氷の壁か…、

しかし! 科学兵器の前では無駄だ…!


「戦列交代…!射撃用意…、――撃てぇ…ッ!」」


さっき射撃した列が弾を装填する間、後列と交代。

すぐさま射撃し、それを繰り返す…!


この世界における〈戦列歩兵〉の誕生だ…!


こちらのライフル弾は敵の魔術をなんなく貫通する…。

氷の壁は少し硬かったが、それでも数撃てば破壊可能だ。


「どんどん撃て! ありったけの酒がお前らを待っているぞ…!」



敵陣に流れるたくさんの血…。

それを見て少し喜ばしい俺は常軌を逸しているだろうか…。


いや違う…ここリンクシュタットは俺の故郷であり、家族が殺された場所だ!

エンティオ人を劣等だと言って迫害し、何の罪もない家族の命を奪ったヴィクトル人たち…!

その軍勢が今、俺の下した手によって次々と倒れていくじゃないか!


「そうだ…俺がこの戦争に賭けているのは…復讐らしさか。」


心の隅で俺は、この戦いがヴィクトル人への復讐へ繋がると意識していたんだ。

確かにあの敵兵たちは、家族を殺したヴィクトル人ではないし、無関係の人間だ。

だがそれを全体と捉えて倒すことで!俺の心は強くなれる…。


長い年月を生きて忘れかけていた復讐心が、最熱したような気分だ…!


これも神の定めた運命と言うものなんだろうか。

まさか全てが始まった地で、こんなことを自分が成し遂げるとは…。



「さて…そろそろ魔獣が襲ってくる頃か。 クリス、出番だ!」


俺は煮えたぎる思いをぶつけるように、敵陣へ突っ込みたい衝動に駆られた。

このために用意した新型ライフルに弾を込め、特製の銃剣を装着する。


「いよいよこれを使うのか…。力を貸してもらうぞ、魔石龍…‼」



年末年始だから休みましょうかな。課題もやらないと

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