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劣等貴族のレクイエム -訳アリ転生の人生劇- (休載中)  作者: 山海ハルト少佐
第二章 評議大会編
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35話 太古の魔石龍

夜明けだ…!異世界の夜明けぜよ…!

ブラムナス山地を越え、煌々と照り付ける朝日…!

そしてこの光は俺の気分をより爽快なものにしてくれる…!

俺はこの土地に自分から望んできた訳じゃない。

バスキーの野郎にイチャモンつけられて引っ張り出されただけだ。

だから絶対に勝利を望んだわけじゃないし、今までの行動はできるだけ最善を尽くした結果だ。


だがバスキーを上から見下して「降参」を引き出したときのあの顔…!最高でぇす!

自分の中でも、『金と権力の差別主義者ども』に「金も力もない劣等民族の俺』が実力で打ち勝ったという実績を持てた。だから心の中でいろいろ整理もできた。

まだ全てが終わった訳じゃないが、今はとにかくその気分に浸りたい…。



――――――――


それはさておき、状況は非常に改善された。

今俺たちがいる場所は、ブラムナス高地のバスキーらが居座っていた拠点だ。

なぜ俺たちがそこにいるかって?それは…


「――ヴァルちゃん、レイナちゃんも無事でよかったよ…。」

「アルザス…!お前らもよく無事でいてくれた。」


激闘から数時間。俺はアルザス達との合流することができた…!

運が重なったのか、俺たちがトラップで敵を引き付けている間に移動を続け高地を登り、バスキーら40名の拠点を制圧したらしい。

休む間もない中、こいつらは最善を尽くしてよくやってくれた。


「うん。でもバイマンは…、、、死んだ。」

「あ…、そうか。  …クソッ!」


先の混乱した戦闘の中で敵に捕らえられたバイマン。

彼はクーベルトだからヘイトが高かったんだろう。

混乱の最中でただ一人、誰にも看取られず死んだらしい…。まさに戦死に近い死に様だ…

俺は恐ろしくなった。評議大会は志願制とはいえ、若い学生がこんな…と。


「いつか弔ってやろう…。」

「そうだね…。」


「――なぁ。ところでどうやってこの拠点を奪ったんだ?」


お通夜ムードを打ち消すように口火を切ったのはクリスだ。


「だってここにはバスキーの砲撃術師がいたはずだろう。だが見たところ…戦った形跡はねぇな。」

「なんならそこにいるしね…敵の術師。悠長に飯食ってるよ…。」


俺がアルザスから「拠点を取った」と聞いたとき、俺はてっきり争奪戦の上での話かと思った。

だがそうじゃないらしい。

敵の術師はなんか…随分余裕そうだな…。


「まあ順を追って説明するよ…。」




―――――――――――――――

その少し前

― ブラムナス高地 バスキー一派拠点 ―


実に奇妙な展開だ。

敵の目を掻い潜って高地に上って来たアルザス、ダイン、スレアム、リオデシア。

とは言っても、体力のないリオデシアを支えながらだったから時間はかかった。

夜明け前に再開された連中の拠点からの砲撃魔術。

アルザスたちは現在、その砲撃術師と物騒なにらめっこをしている。

100メートルくらいの距離まで接近に成功し、大声で話しかけてみた。


「えー、砲撃術師のみなさーん。ちょっとお願いがあるんですけどー…。」

「なんだねー?俺たち一応君たちの敵なんだけど。」

「あのですねー、砲撃魔術やめてくれませんかー?」

「それは無理だね。こっちもバスキーの指示に従わないといけないんだよ。」


―――見れば彼らの耳は尖っている。クーベルト人だ、なるほど。

道理でそんな上級魔術をポンポン打てる因子量があるわけだ。

しかしバスキーのような男の部下に下位民族(クーベルト)が…。あの男が下位民族を快く仲間に入れるとは思わないし…。

と、アルザスには思うところがあった。ダインたちも同じことを考えていた。


「それであれでしょ?俺の仲間を狙ってんでしょ?」

「そうだよ。たった今、君らの仲間を追っかけてたバスキーから指示があったからね。」

「だからその…もうあんたたちの勝ち確定でしょ?無駄な犠牲はないほうがいいと思うんだけど…。」

「こっちも大人の事情があるからね。指示に従うしかないんでーす。」


なんだよ…。なんでそんなに、あんな男の言いなりになるんだ。

彼らだって下位民族だ。だったらいい気はしないはずだ。

これ以上続けるならアルザスは彼らを倒さなくてはならない。でもそれは避けたい。

もう殺生はうんざりなのとアルザス自身も疲労困憊。


「あっそうかい。なら力ずくで止める…!」


アルザスが少しばかり回復した因子で、雷を展開しようとする。

体力的にきついが仲間の為だと思い、力を出すその時。


「―――あッッ⁉ちょっと待った!」

「なんだ。何かあったのか?」


敵の真ん中で望遠鏡を覗く観測手が叫んだ。

恐らく彼が攻撃地点を砲撃術師に伝える。帝国軍でも用いられる手法だ。

その観測手が何かを見たのか。


「なんか…バスキーたち全員、やられてね?」

「うっそ⁉え、なにどういう状況?」

「いやなんか…全員川に落とされて。 あいつら罠にハマってらぁ⁉」


「えっと、、、なんかあった…?」


砲撃術師は全員魔術の展開をそっちのけにして望遠鏡を覗き始めた。

随分混乱しているようだが…。

すると、術師のリーダー風の男が振り返ってこう言った。


「ああ、そこの赤髪の君、」

「はい?」  アルザスが呼ばれた。

「なんかねぇ…、君らの仲間がバスキーを打ち負かしたっぽいよ?」

「うん。溺れそうなバスキーを見て高笑いしてるよ。」

「はぁ…、って⁉ アイツらが? そんなあっさりいう事じゃないでしょぉ…。」


もの凄くナチュラルに告げられた現状に、別の意味でアルザス達は驚いた。

しかしそれだけではない!さらに続くカミングアウト。


「なぁどうする?()()()が負けたんなら俺たちもう、いいんじゃね?」

「ん?雇い主?」


「あ、えっと…実を言うと我々、バスキー商会のコネで雇われただけの他所の術師なんよ。」

「だからまぁ、雇い主も負けちゃったことだし?もう魔力も限界だし?正直あいつウザイし?」

「…休戦しよっか。」


「こ、これでよかったんだろうか…。」




――――――――――――


「って感じ。」

「なんだそれ…。てかあの術師は雇われ人だったのかい。」


世の中結局金か…。

まぁ、金に頼って力を持つ。バスキーもその程度の男だったという事か。

今まで忌々しくデカく見えていた存在が、急に小さく見えるもんだなぁ…。

あぁ…安心したら…急に力が…抜けてきた…。


「とりあえず…終わったんだね、、」

「あぁ…あと2日ちょいでこの評議大会ともおさらばだ…。」

「この一か月で、一生忘れられん体験をした…。俺たちはどのくらい成長できただろうか…。」


そういえばこの評議大会の目的って…結局何だったんだろう。

帝国は若い学生たちを集めて、こんな秘境で戦わせて…、一体何がしたかったんだ。


「ヴァルター…腹が減ったぞ…。」 ダインがか弱い声で言った。

「俺もですよ…でも今はちょっと、、、眠い…」


俺だけじゃねぇよ…全員目が虚ろだ。

俺たちゃ不眠不休で飲まず食わずで戦って…魔力的にも体力的にも限界…。

「「「「「zzzzzzzzzzzzzzzzz」」」」」


日光の温もりで心地よい睡眠が促進される。

評議大会の意味は…あとで考えよう。



――――――――――――――――


― 河川周辺のバスキー一派 ―


「ぶえっくしょいッッ!…あぁ寒い…。」

「日が差してきたのが幸いだよ…。」


河から引き揚げられたバスキーたち。

もはやヒューリーズたちを追う気力も体力もなく、おまけに空腹だ。

全員の腹を満たすことは難しい。各々が食料を自力で見つけるほかない。

腹を満たさなければ体力回復できず、魔術で温まることも不可能。よって死だ!


「見ろ…!木の実だ!」 美味そう!

「鶏肉だ…!」    早く焼こう!

「このキノコ美味そうだな!」  それ毒キノコだぞ。


なんてみんなが調達を進める中。

一人森の中から何かをとっ捕まえて戻ってきた奴がいた。


「バスキー、お前ら見ろ!こいつは…」

『キュウうううううううう…!』

「お前それ…()()()()か⁉」


緑の体色。短い尻尾。つぶらな瞳。明らかな爬虫類。 竜だ!

周囲の人間が自分を欲望の眼差しで見ているのがわかったのか、尻尾を掴まれて宙づりになる竜は泣き叫んでジタバタする。


「竜ってたしか…肉美味いんだっけ?」

「少々臭みはあるが…栄養価は高いらしい!」

「早速こいつを捌いて…!」

『キュウうううううううううううう!』



====…ゴゴゴゴゴゴゴ…ゴゴゴ…ゴゴ…====


周囲が揺れる。地震だ。

しかしいつもの揺れとは違う。今度は横揺れが激しい…。


「なんだ…また地震か?」

「ホントなんなんだろうなぁ、この土地は。」

「それよりも早く食おうぜ…⁉」


====ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ====


「おい…なんか長くねぇか?」

「すげえ揺れてるぞ…!」

『キュウううううううううううううう‼』


明らかな異常事態…。内陸でこれだけの規模の地震はおかしい。

全員がうろたえる。森の鳥獣が叫ぶ。逃げ惑う。

何かが来る…?



!======================================!


突然だ。周囲に粉塵と岩が飛ぶ。まるで隕石のように、岩が空中から彼らへ向けて落下する。

同時にとてつもない突風。立ったままでいられる奴なんかいなかった。

だが爆発だとかそういう規模じゃない。だが状況を掴める者もいない。

一つわかるのは、地中から何かが出てきたという事だ。



『グギャオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』




――――――――――――――――――


やっと眠りにつけた俺たちは、たったの数時間で夢の世界から呼び戻された。

突然の巨大地震。その後に響く轟音。大気に木霊する、耳を割くような音。

高地にいる全員が状況確認の為に、展望スポットへ寄る。


「おい…なんだよあれは…!」


真っ先に動いたクリス。盆地を見渡したと思ったら、まるで絶望したかのように肩を落とした。

俺の目にもすぐに、状況が入ってくる。

高地のすぐ下から広がる粉塵。

そして、その粉塵に紛れて岩を吹っ飛ばしながら直進する『巨大な何か』。

俺は目を疑った…。「いくら異世界とは言え…こんなのありかよ…。」と


そして、アルザスがその何かに向けて言い放った。


「龍だ…太古の魔石龍だ…!伝説上の…」


一難去ってまた一難。いや、百難か…。

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