第25話 クリス・ラビンスキー
久しぶりの投稿じゃあ。
ー世界はクソだ。人間は愚かだ。
そもそも人間ってなんなんだろうか。そんな括りはいつ誰が決めた?
少なくともそのくくりのうちに入っているはずなのに、俺たちは虐げられる。
学びを得ることも、飯にありつくことも、ここで生きることさえ許されない。
だから母ちゃんは病で苦しんだままだ。
弟や妹は腹を空かせたままだ。
だから強くならなきゃいけねぇ。
村の連中は俺に教育なんて与えてくれたが、俺に必要なのは学じゃなくて力だ。
早くこのクソみたいな人生から抜け出すために。ー
「でもまさか、こんな楽しみを教えてくれるとはなぁ。悪いことばっかじゃねえな。」
クリスはアルザスと対峙する。
正確にはアルザスと、その後ろに控えている連中。
その中には間違いなく、碧髪の氷女もいる。
クリスは動かなかった。
(ここで突っ込んでいけば間違いなく集中攻撃だからな…そこまでバカじゃねよ。)
自分のリーチを見極めていた。
攻めは悪手。引きが良策。しかし守りでは主導権を握れない。
相手はいつも相手取る魔獣とは違う。
知性を持ったヒトである。
「レイジング スパークッッ」
アルザスが閃光と共に、思い切りのいい踏み込みを見せる。
アルザスそのものが雷のよう。
勢い任せの斬撃が、クリスに向かってくる。
クリスもカウンター狙いに動く。
「わざわざこっちの土俵に来てくれるとはァ!いい度胸d…」
「今だッ…撃てぇッ‼」
「ッッッ⁉」
突撃の最中、アルザスは言い放つ。
それに呼応し、後方から感じられる因子が強くなった。
クリスの足が咄嗟に鈍くなった。
一瞬の出来事だが、何が起こるかクリスにはわかった。
魔法が飛んでくる。しかし、
(因子のパワーがこの距離にしては弱い…?何をする気だ…⁉)
「ブラスト…ッッ‼」 弓持ちが見えた…!風の音がこっちまで伝わる。
「風魔術か…⁉何を飛ばして…」
鋭い破裂音の後に、気体が押し出される音。
弓は外れた。いや、外したのか…。
音と視界、空気でわかる…!
奴がわざわざ風魔法で飛ばしたのは矢ではなく…
「クソッ‼…あの時の煙か…‼」
以前にヴァルターが撒いたものだ。
白い煙に視界が塞がれ、身動きを制限される。
明らかに吸ったらアウトで、息苦しさというデバフも追加される。
「うォラぁぁぁッッ‼」
「させるかぁぁぁッッ‼」
煙を割いてアルザスが突進する。
強烈な雷の斬撃。
クリスの大剣が受け止めるが、重い。
アルザスは手を止めない。
「スパーク バラージッッッ‼」
「グオォ…‼」
一進一退の攻防、にはならない。
止まらない連撃。
ひたすらがむしゃらで、考えを捨てるような顔つき。
クリスは、以前とは違う剣筋を感じた。
アルザスの腕前が、この短期間で上がった訳じゃない。
クリスが衰えたわけでもない。
「…そうか‼ようやく躊躇いを捨てたかァッ‼ 以前の軽さがない‼」」
「それは結構なことだッッ‼」
以前と違うのは、アルザスが剣を振る躊躇いを無くしたこと。
だとしても、心の内からの性質はそう簡単に治るもんじゃない。
「だけど捨てたわけじゃないッ…!ただ、感じないようにしてるだけだ‼」
(なるほどね…ひたすらの攻撃は、考えなくてもいいようにってことか。)
なら話は早い。
考えなしに剣を振り、魔術を使えばすぐに力尽きる。
弱い奴の負け方のお決まりだ。
クリスの脳内でプランが定まる。
「こいつの力が弱まった時、一撃で仕留めるのみ‼」
「フリージングッ‼」
「イグナイト ブレス」 「ブラストッッ‼」
煙の向こうから、氷魔術による妨害。
小規模な炎に風と弓を掛け合わせた攻撃。相乗効果によって威力上昇。
アルザスの放つ因子が強すぎて、すぐには気づけなかった。
連携の取れた妨害ほど面倒な集団はない。
知性のない、魔力だけの魔獣と戦ってきたクリスには荷が重い。
「しかし姑息な戦い方だァ!前に言ってた騎士道はどこに言ったのやらッ⁉」
「…それを…言うなッ‼…ハァ…ハァ!」
妨害攻撃を回避、馬力をかけ過ぎたアルザスへの攻撃。
妨害回避、アルザスの反撃。跳んで、回避。
埒が明かないのを悟った。
クリスは一旦、大きく距離を取ろうと試みる。
「視界が悪い…!何とか、煙の外へ…!」
四方八方飛び回り、やっと外気と光を浴びた。
息苦しさからの解放。連撃からの離脱。
距離を離したことで、妨害の勢いも衰えた。
「上出来だ…」と感じる…。
その刹那、、
「ガウガウ ガウガウガウガウ ガウ ガウガウガウ ガウガウッッ‼」
「なッ…⁉ 野獣だとッ⁉」
別方向から突然、クリスに迫ってくる野獣の群れ…!
森林に生息する肉食獣『ガルフ狼』が牙をむき出しに向かってくる。
クリスは休む暇もなく、大剣を振りかざす構えを取る。
跳びかかるガルフ狼を纏めて斬殺する。
切断した肉体から、どす黒い血が流れ出る。
「なんなんだ…!何だってんだ⁉」
「…ナイスタイミングだぜ…!バイマン…。」
「そうか…。仲間に獣使いがいやがったのかッ…!」
掴みかかる狼を振り払い、斬る。
何回か奴らの牙が、クリスの肉に突き刺さった。
それでも動きを止めない。痛みなど感じないほどの恐ろしい胆力。
そしてまた、氷と火矢が飛んでくる。
次第に周囲は、アルザス達の因子で色濃くなっていく。
徐々に、徐々にクリスは焦りを感じていた。
(因子が濃い…!どこから魔術が飛んでくるか、これじゃ目で見なきゃわかんねぇッ‼)
「スパーク ディープチャージッッ‼」
アルザスがヘロヘロのまま、雷の爆発技を発動させる…。
因子のパワーと共に濃くなる敗色。
クリスの理性はそれと反比例して薄れていく…。
ーーーーーーーー
薄れる理性の中で脳裏によぎる。
ベッドに横たわる母の顔、細い腕。
魔獣狩りからの帰りを待つ弟妹の小さな体。
ネスト、マニー、村の奴ら。
…俺は何のためにここに来た…?
金?名誉?それとも…強さを求めて?張り合いのある敵を求めて?
それでここまで来て、みすみす負けの烙印を背負うのか…?
違う…!俺の原動力はそんな安っぽいモノじゃねぇ…!
全ては…あいつらの為だ…‼‼
ーーーーーーーーー
「負けない…負けられない負けられない負けられない負けられない負けられない…‼‼
ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛アアァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ」
心からの叫びと、心からの一振り。
一瞬の一太刀が、途轍もなく強大な力に見える。
クリスにまとわりつくガルフ狼が、全て薙ぎ払われた。
そして、その衝撃はアルザスにまで波及する。
「なッッッ…⁉うそだr」
「…ッ!死ねえェェェェェェェェェェッッッ‼」
勢いに乗った剣筋の乱舞が、無防備なアルザスを襲う。
力のこもった大剣がアルザスの肉体に…、、、到達しなかった。
間一髪のところで防ぎきる。
が、豪快に吹き飛ばされる。そのまま後方の仲間の元まで。
「ガハぁ…ッ⁉ ってぇぇ…!」
「アルザスしっかり‼また骨折してないよね…⁉」
「まじかよあいつ…!」
背中から倒れ込んだアルザスを、仲間が支える。
そして、彼らはクリスを見つめる。
目に見える殺意に満ちた凶戦士に、恐怖した。
「俺は負けねぇ…。お前らは全員殺す…!
俺達は人間だ…!お前らと同じように生きたいだけの‼お前らと同じ人間なんだァ‼」
荒々しく大剣を構える。
「俺は魔獣狩りの…いや、クリス・ラビンスキーだッ‼」
クリスの体には、痣のような変化が訪れていた。
ここ2、3週間ほど更新が止まっちゃってました。
三泊四日の旅行があったり、運悪く旅行直前にパソコンが壊れて、修理に出すのが旅行後になったり。
やっと今日修理から帰って来たので、更新できました。わっふい。




