表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
劣等貴族のレクイエム -訳アリ転生の人生劇- (休載中)  作者: 山海ハルト少佐
第二章 評議大会編
20/76

第19話 予定通り

― ブラムナス高地 展望ポイント ―


 始まった。とうとう始まった評議大会。

今大会の参加人数は、総勢150名。

25年前の前回大会が約200名であった為、多少の見劣りはあるが。


いや、そもそも前回が規格外過ぎたのだ。

選りすぐりの秀才を集めて模擬戦をしつつ、陣取り合戦など。

その中には、後の帝国屈指の騎士や、魔法省の大魔術師までいたんだ。

そんな連中が本気で潰し合えば、死人が出て当然だ。


 その150人が集ったこの土地を高地の端から見下ろすは、ライドル・C(コライズ)・バスキー。

腕を組み、大股で立ち、ラスボス感満載の佇まいで見下ろし続ける。

否、見下しているのだ。

今か今かと、格下ライバルたちが潰し合いが始まるのを待っている。


この総勢150名の中で、彼らバスキー組の勢力は40人だ。

約三分の一が、彼のの仲間で埋め尽くされている。

既に高地確保というアドバンテージを得た今、ここからの1か月を優勢に進められるのは、間違いなくバスキー組だ。


「バスキー、拠点の設営は終わったぞ。あとは予定まで、ここに居座るだけだ。」


仲間の一人、同じ三学年のテロイが報告に来た。

バスキーの目は、眼下の森林から逸らされた。


「おう。みんなご苦労だった。だがテロイ、居座るだけという程簡単ではないぞ?」


「あ、あぁそうだな。敵も雑魚ばかりじゃないもんな?」


雑魚ばかりじゃない。参加者は各地方の選りすぐりなのに、雑魚。

バスキーはニヤッと小さく笑む。


「フッ…そうだな。北東の領地・エルゴシュタットからの〈クリス一行〉なんか特にな。奴らは強敵だ。数こそ少ないが、一人一人がバケモンだと聞いている。」


バスキー商会は、物理的支援だけを寄こしてくれた訳じゃない。

傘下の商人たちを伝って、情報までを寄付してくれる。


「でもバスキー、君の狙いはそんな強敵じゃないだろう?」


「あぁその通りだ。…あの二人、ヒューリーズとヨースター…!」


バスキーは、今までの余裕そうな声色と表情を変えた。

感情が高ぶる。なんとなくイライラする。

バスキーは気を紛らわすため、無意識に爪を噛んでいる。


「あの赤髪のほう(アルザス)は別にいい…。だがヒューリーズはダメだ…‼」


「本当にそうだよ…。あいつらのせいで、俺達上級生がどれだけ割を食ったと…!」


次第にテロイも、憤りを思い出し始めた。バスキーと同じ苛立ち。


「平民のぽっと出新入生が栄誉勲章…、奴が注目を集めたせいで!俺たちが3年かけて積み上げた実績は霞んでしまった…!」


バスキーが力んだあまり、かじっていた爪がパチンと切れた。

不規則な切れ味の、憎悪の籠った爪はパラパラと舞い落ちていく。


「だからここで、あの生意気な下級生どもを叩きのめす…!そうだよな⁈バスキー‼」


「あぁ!奴らには、栄誉勲章に似合わぬ醜態を晒してもらう‼そして俺たちの実力を誇示する‼」


 彼らは志を同じくしている。きっと40人の仲間だって…。

少なくとも、下級生コンビの活躍によって、彼らと同じ思いをした者は、きっと彼らの同志であろう。

それが全員であれば、彼らや同志たちにとってもこれ以上ないほど嬉しく、強固な共同体になるはずだ。

彼らの上級生としての、高い身分のプライドが、全員にあればの話だが。


「生まれの良さも力のうち!この世界で、力なきものは淘汰される!それを奴に教えてやる…!」



―――――――――――――――――――――


― ヴァルター一行 拠点 ―


 既に大会開始から2日だ。

俺たちは一応、臨戦態勢で構えていなければならない。しているつもりだ。


 しかし見かけだけは、呑気なピクニックである。

草の上で呑気に昼寝してるアルザスとバイマン。

食べられそうなものを収集するレイナに、お花と薬草集めをするリオデシア。

お得意の鍛冶技術スキルで、みんなの武器を手入れするスレアム先輩。

じっくりと地図を見ながら、食事の支度をするダイン先輩。


そして、特にやることのない俺。


 だって水源も確保済み、簡易的な家もできた。

ここにいれば、他チームと早々に衝突しなくて済むし。

そもそも7人しかいない俺たちは、こんな序盤から他勢力とやり合ってしまえば後が持たない。

暇なのは、仕方ないことなんだ。うん。


 しかしまぁ、今こうして俺が暇している間にも、他の連中は勝利へ向けて有意義な時を過ごしていることだろう。もどかしい。


「なんか…、なにかしないとなぁ…。」


なんてぼやきが出てしまった。

食事の支度をしていたダイン先輩が、俺に言う。


「暇なら、鍛錬の一つでもしてみたらどうだい?因子はあり余っているだろう?」」


「鍛錬ですか。と言っても俺、基礎魔術しか使えませんよ?(かろうじて)」


因子はあり余っているっていうか、元々あんた達より絶対量が少ないんだけどね。

それは内緒。正体バレるヒントになっちゃう。


「あ、そういえば。みんなの能力は表立ったことしか聞いてなかったな…。」


ダイン先輩は完全に手を止め、こちらと向き合って話している。

武器の手入れをしていたスレアム先輩も、こっちの話に興味を示したようだ。


「俺は剣に風魔術の応用だ。スレアムはさっき見たように、土魔術みたいな実用的な魔術を好む。」


次にスレアム先輩が苦笑しながら、


「むしろ、あまり使い道のない風魔術しか使わないもんだから、バスキーに散々卑下されてたよね。ダインは。」


「黙れよスレアム。お前こそ、『帝都の学校まで来て鍛冶屋を目指す土使い』なんて言われてだろうが。」


うへぇ…。二人とも散々バカにされてたのね…。

てかバスキーって、話聞いただけでも予想以上のクソ野郎だな…⁉

まぁ俺も!部屋荒らされたりしたけど!奴のせいで今こんなところにいるんだし!


「あの野郎…!自分が士官学校志望だからって見下しやがって‼」


「まぁとりあえず、嫌な話題は変えましょ?あとは…バイマンかな。」


バイマンは池の畔でアルザスと昼寝している。

呼んで起こそう。呼んで起きないなら叩き起こそう。


「バイマーン!こっち来て話そうぜー!」


眠りが浅かったのか。バイマンは一声で反応した。

だるそうな体をムクっと起こして、こっちに来る。

ついでにアルザスも目を覚ました。


「お前、鳥獣探索が使えるのはわかったけど、あとはどこまで獣を使えるんだ?」


「あぁ…、今は猛獣とかを扱えるように特訓してます…。でも帝都じゃ動物会えませんからね。あまり修業が積めませんよ。」


寝起きの少し枯れた声。ごめんな、起こしちゃって。


「じゃあ丁度いいじゃないか。ここなら猛獣くらいいるだろうし、周りを気にせずじっくり鍛錬を積めるじゃないか。」


「あぁ…、はい。はいはい。」


たしかに名案だ。バイマンの実力を見るのにもいい。ついでに先輩方にも一肌脱いでもらおうと思う。


「バイマン、ちょっとやってみろよ!」 と、アルザス。急に元気になったな。


「……‼いいですよ…⁉折角だしやってみますか‼」 先輩方、アルザス、拍手喝采。


 でも…なんかコイツ、ちょっとボケっとしてる?寝起きだから?

ちょっと怖いんだけど。

猛獣とか、扱いミスったら危険なのでは?


「それでは…!ッッッ!」


両手を出して、パンサーニャの時と同じ体勢に。

今回はデカい獣だからか、少々時間がかかっているようで。

集中して、集中して、集中して。


「ッッお⁉かかったッ‼あとは言うこと聞かせるだけ…、、、、ん?」 


「、、、、、ん?」 と、一同。その辺にいたレイナも、何かに反応した。


なんだ?何が来る?

あ、なんか聞こえてきた。

これは…足音?それも相当デカい、、、


「バイマンが呼び寄せた奴が来たのか?」

「それにしてはなんか、、、足音が多くないか?一体じゃないぞ。何匹かいる。」


「おいバイマン!めっちゃ来てるみたいだけど、ちゃんと加減したのか?」

「猛獣なんか、一度にいっぱい来たら手に負えないだろ?」


そいつを聞いたバイマンはゆっくりと、俺達のほうを見る。

キョトンとした目で。

え?なに、どしたの?


「…加減、、、いっぱい、、、猛獣、、、野獣、、、へ?」

「え?」 と一同。


 全員が、嫌な予感を感じ取った。

そして、自分たちの軽率な行動を悔いることになる。

寝起きで頭が働いていない奴に、こんなことさせるんじゃなかったと。

そして、過酷な自然界の猛獣を、簡単に扱おうとするんじゃなかったと。


「ヴぅッ‼バゥッ‼バゥッ‼」 『ドドドドドドドドド…』


やってきたのは、、、、オオカミの群れ⁉⁉はあぁぁぁ⁉

数は⁉…一、二、三…なんて数えてる余裕ねぇぇぇッ‼


「おいバイマン⁉なんじゃありゃッ‼おいどうにかしろ‼」

「あ、えっと、、、流石にあれは制御不能ですね、ははは。なので、、、みんな逃げてくださぁぁぁぁぁぁいッ‼」


あ!バイマンの野郎!一番先に逃げ出しやがった!

次にスレアム、ダイン、俺、アルザスの順で逃げ出す‼

気分はまさに‼ト〇と〇ェリー‼ んなこと言ってる場合じゃねぇ‼

いやマジでッ‼マジでヤバいの追ってきてる‼


「ちょいちょいちょい⁉あれ捕まったら終わりだよね⁉食われるよね⁉」

「バイマーンッ‼なんであんなの呼んだんだよ⁉」

「あんたらがやらせたんでしょうが⁉そもそも寝ぼけてたんだから上手くできるわけないでしょッ⁉」

「開き直ってんじゃねぇぇぇぇぇッ‼」


うおぉぉぉぉぉ‼必死の陸上走りじゃぁぁぁぁ‼



― その間レイナとリオデシア ―


「うわっ‼…、、、何やってんの…?あの人たち。」

「さ、さぁ…?」


静かに、狼に駆られる俺たちを見守っていた。


――――――――


― 俺達 ―


 拠点からだいぶ離れた所まで逃げた。

全員、そろそろ体力が尽きる。

冗談抜きで全員食われるかもしれない。こんなくだらないことで死ぬのか…。


 その瞬間。アルザスがクルっと身を返す。

立ち止まって、、、、迫りくる群れに対峙した…‼


「アルザス⁉何やってんだ⁉」 ダインの叫び。

「まさか…!自分が囮に…⁉」 スレアムの叫び。

「アルザス…!お前の雄姿は忘れない…!」 バイマン、お前は一番諦めるな。


「このまま逃げても埒が明かないでしょ‼予備の短剣、懐に入れておいてよかった‼」


 アルザスは深く姿勢を落とす。剣を後方にのけぞらせ、、、抜刀の構え!

聖因子を漲らせたオーラが、体から溢れ出す。

短剣に、リオデシアを助けたときと同じ、雷属性魔術が宿っていく。

アルザスの因子に、魔法が強く共鳴しているんだ。


「そこぉッ‼」  一瞬の間に、強く踏み込んだ。


跳びかかってきた狼たちの隙間を縫って、アルザスの短剣が入っていく。

一匹、また一匹。野獣のどす黒い血が、剣を振ると同時に飛び散っていく。


 走り疲れてちゃんと見ていなかったが、気が付くと全て片付いていた。

頭部と胴体を斬り離された狼。

腹部を斬り裂かれ、臓物がドロドロ出てきた狼。

斬られ方のバリエーションがとっても豊富。

いらねぇバリエーションだぜ。


「お、おう…、流石だなアルザス…。リオデシアを助けたときみたいで、カッコよかったぞ…。」


しばし立ち尽くすアルザス。血の滲んだ自分の手を眺めている。

そしてゆっくりと、俺のほうに向き合って、


「あ、うん。あの時、カッコよかったんだね、俺。よかったよ。」


あ、この感じは、、、


 どうもアルザスは、やはり命あるものを斬る感覚がダメらしい。

前もこんな感じで、『感覚が手に残っている』とかいって萎えてたな。

と言っても、前に斬ったのは人間だったから…主に罪悪感とかだろうけどさ…。

人外でもここまで萎えちゃうとは…。優しい野郎だ…。


「い、いやぁアルザスすげーなぁ‼お、お前ならやってくれると思ってたぜ…‼」

わざとらしくスレアム先輩が取り繕う。


「いやあんた‼早々に俺を見捨てようとしたじゃねぇか‼」


「い、いやでもホント、エライ目にあったもんだねぇ…!」 と、バイマン


「お前が全ての元凶だろ⁉」


 アルザス君の渾身のツッコミを聞いたところで、ダイン先輩を見てみよう。

木陰から何かを、遠くを見ている。


「おい、みんなちょっと見ろ。」


なんだなんだと、3人そろって木陰でくっつく。

眼前に広がる光景。俺たちの脳内位置情報が更新された。


「ここって、川じゃん。地図でいうところの仮名称 アルファ川か。」


俺達はいつの間にか、ブラムナス高地から流れる二本の川のうち、左の川まで来ていたようだ。

俺達の位置は、川岸から100メートルほど離れた、少し高い位置だった。

自然と、川を見下ろす形になっている。


そして、、、川周辺ではまさに、俺が予想した通りの状況が構成されていた。

対岸に5人、、、6、7、いや20人前後だろうか。

人間がいる。何が起こっているかと言えば、、、他チーム同士の衝突だ。


――――――


― 対岸の他チーム ―


 それぞれが、各々の持ち回りで、自らの役割を全うする。

そうすることで、チームと言う名の組織構造が成立する。


「ふんッ‼ッッッヤァッ‼」 剣士は気迫の声と共に、鋼の剣を振るう。


「ストーム ウォール‼」 後方支援にあたる魔術師が、剣士の突撃を援護する。

強力な風魔法で嵐の壁を築き、風圧を利用し投石。


「おのれッ‼」 もう一方の突撃役も負けられない。槍使い(ランサー)が相手方の剣を弾く。

激しい鍔迫り合い。死線というものに初めて足を踏み入れた時の目をしている。


その仲間たちも、各々の力を引き出し、ひたすら入り乱れて戦っていた。

魔術を食らって動けなくなった者、怪我を負ってリタイア、医術師の所へ下がる者。

これはもう、単なる学生の大会じゃない。

本当に、『学生たちの小さな戦争』

いや、戦争なんて大層なものではない。ただの、、、なぶり合い。


 この川岸周辺は、地理的要因から誰もが欲しがる。

ここを抑えきらなければ、後に響くのだ。

最悪、この戦闘で受けたダメージから、チームが立ち直れないかもしれない。

引けぬ戦いである。


 『ヒュンッ‼』  耳をかすめる嫌な音。何かが視界を通過した。

明らかに危険なサウンド。思わず背筋が縮まる。


「ッッッ⁉ッグハッアァ⁉」 激痛。肉を抉られた痛み。崩れる体勢

矢だ。矢が、ランサーの肩に刺さった。


 魔術師よりもさらに後方からの、アーチャーによる狙撃。

腕が使えなくては、これ以上の近接戦は不可能。ランサーはゆっくり退く。

それを察知した相手の剣士も、攻撃の手を止めた。


 ランサーのチームは、戦闘継続不能に。皆が肩を抱え合い退却していった。

勝者に軍配が上がる。この地点は、彼らの縄張りに入ったのだ。

その縄張りがいつまで持つかは、誰にも分らないが、、、。


―――――――――――――


― ヴァルター達 ―


 この地点にたどり着いてから30分以上が経過。


あぁ、勝敗がついた。敗北者の背中と言うのは、なんとも見ていられないものだ。

しかし、負けたほうの敗因は結構わかるぞ。

逆に、勝ったほうの勝因も。


前者はあまりにも、チーム全体が前に出すぎたのだ。

遠目で観戦していたが、アーチャーでさえ、ランサーのすぐ後方にいたほどだ。

乱れた戦い方。まったく統制が取れていない。

なんなら歩くのもままならない負傷者が、本来隠れているはずの医術師の下へ、自力で行けるほどの距離感だったんだ。


逆に後者は、剣士は突貫、魔術師は突撃支援、アーチャーは援護射撃と、役割を明確に意識していた。

一人一人の腕前はそこまで高いわけではないが。

いや違うな。アルザスの剣術が鬼すぎるだけか。

とにかく、ああいうチームは強い。

各々に欠点はあっても、それを統制という()()()()()()()()()できる。


俺が、劣等人の脆弱な聖因子を補うために、基礎魔術を応用したライフルを自作して、力を持ったように。



 さて、ほとぼりが冷めた川周辺を、を4人で仲良く眺めております。

前世日本人の俺の脳内では、あの有名な大歌手の、あの曲が再生されていた。

俺は2000年以降の生まれなので、サビしかわからないけど。


 狼の群れからここまで逃げて、他チームの戦闘を見て、いいもん見たなって感じです。

しかし、拠点に女子二人を置いてきてしまった。

いや、拠点と言うより隠れ家のほうが適切か。

早く戻らないと。

でも走り疲れたから、もう少し休みたい。

水流の音、風が草を揺らす音、木漏れ日。

全てがマッチしている今日は、ヒーリング効果が絶大だ。


「ねぇねぇ、みんな。」 


大活躍のアルザス君が、俺の袖を引っ張りながらみんなの顔を窺う。


「なんだぁ?また突拍子の無いこと言い出すんじゃ…。」


しかしなんだ、さっきの気持ち悪そうな顔とは変わって、今度はポケーっとした面持ちだ。

これはあれだ。アルザスがバカなりに何か考えたときの顔だ。

脳みそに栄養が行きわたってくれた証拠である。


「さっきの奴らもさ、水を確保したくて戦ってたんだよね?」

「そだな。序盤に生命活動の基盤を固めれば後々困らないから。」

「だからみんな水辺を探すよね?あの二つの川以外でも、、」

「そだね。俺達みたいに、人目に付かない水辺を探す奴もいるはずだ。」

「………、、、」


少し間をおいたアルザス。何かを頭で整理しているのがわかる。顔に出ている。


「俺たちがあの場所を見つけられたのは、ラッキーだったのかな?」

「ラッキーと言うか、獣使いの能力で見つけたんだから、運ではないだろ。」

「てことはさ、俺達以外でもそれはできるわけだ。」

「ソダネ。…ん?」

「人間みんな、考えること同じだよね?噂広めるみたいに。」

「あ、、、うん、、、」

「もしもどっかの奴が同じことしてたらさ、割とすぐ見つかるんじゃない?あの隠れ家。」

「Oh My Gar、、、」


 俺たちの落ち着いた口調の会話。

先輩たちもそれに同調する。


「ちょっと待て。今は割と多くの敵が、この辺に集まっているよな…?」 ダイン

「ここは水も食料も確保しやすい、戦略上の要所ですからね…。」 俺

「じゃあ、、もうすぐ見つかっちゃうんじゃ…?」 スレアム

「ま、まさかそんなすぐにねぇ…。一応隠れた場所にあるわけだし…?」

「いや、そんな場所なら尚更、誰だって欲しいでしょう。さっき言ったように、人間は考えること皆同じです。」



 唐突なアルザスの気付き。

俺は急に、変な感情に襲われた。

恐怖?不安?自分たちの安息地に敵が来るかもしれないという緊張?

いや、それもあるだろう。だがもう一つ。

自分の完璧だと思っていたプランが、トンだ節穴で破綻するとわかった悔しさ。


いや、そんなものは経験の一つに過ぎない。

そんな失敗なんぞ、あとで挽回すれば済む話。

しかしなぜ、こんなにも『腹が立つ』んだ。



 

 状況の変化は、突然訪れる。

『ドンッ‼』という強い衝撃の音。

『脳が揺さぶられるような、魔法の発動音』

『耳の奥を引っ掻かれるような、鋭い金属音』


間違いなく、これはさっきも聞いたサウンド。

どこかでまた衝突が起こっている。

俺の想定も間違ってはいないようだが、一部補完が足りなかったらしい。

それはアルザスの言ったことで、少しばかり埋められた。


「あ!またどっかでドンパチ始まったか⁉」

「ていうか、隠れ家に女の子二人残してきたけど、大丈夫か?」


先輩2人、状況を察知。


「いや、二人だけはまずいですよ。やっぱりここら、、、というかこの土地の似たような場所には、俺らと同じこと考えてる奴が集まってきてます!」

「じゃああの場所も危ない…‼急ぎ戻ろう。」


 三人とも、狼に追われてきた道を折り返し、走る。

俺も彼らの背中を逃す前に、重い足を動かした。


クソっ…‼結局縄張り争いに参加しなきゃならないのかよ⁉

なんでこんな簡単なことに気付かなかった⁈

慢心か?自分の作戦が、生き残る最善の道だと思い込んでいた?


あぁ…、でも俺は知っている。これはあれだ。

『期待』だ。自分と、この先に対する『淡い期待』だ‼

結局、いい方向に転がると考え始めたらロクなことにならないんだ。

だからこうして、惨めで、理不尽な苛立ちを感じる結果になるのだ。

前世でも現世でも、それは嫌と言う程実感しているはずなのに。



 


― 大会3日目  各ポイントで抗争確認  予定通り

         最有力候補 クリス・ラビンスキー ―










                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                             



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] もっと可愛いアリが見たい! [気になる点] とても不思議な小説! [一言] 引き続き注目いたします
2023/10/27 13:25 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ