第96話 何事も傾向と対策ですわ
脳天を粉砕するチェーンソーの猛撃に、神がたまらず後ずさった。
私はその分だけ距離を詰めて電動ドリルと丸鋸を振り回す。
神は白銀の槍でどうにか防いでいるが反撃を返す余力はなさそうだ。
傷の再生も遅く、明らかに間に合っていない。
切り飛ばされた指を見て、神は感情的になって叫ぶ。
「なぜ、これほどまでに痛い……神に攻撃が通じるわけがないというのに!」
「その思い上がった考えが原因ですわ」
私は腹部に埋まるようにマシンガンを創造してぶっ放す。
ばら撒かれた鉛玉は神の全身を容赦なく耕した。
ふらついた神は辛うじて槍を振るう。
白銀の刺突が伸びてマシンガンの銃口を潰し、そのまま私の脇腹を焼き削った。
私は故障したマシンガンを引きずり出して捨てると、笑みを崩さずに跳びかかる。
「神聖国に来た私は、この国の魔力傾向を分析しました。魔力の構成や属性を知ることで、ある程度の対策ができるからです」
「そんな話に興味はない」
「淑女の言葉には耳を貸すべきですわよ」
丸鋸の一閃が神の両目を切り裂く。
神は顔を押さえながら槍を滅茶苦茶に振るう。
その間合いから外れた私は、脇腹の傷を撫でながら説明を続ける。
「分析を進める中で、私は信仰心がもたらす特殊な力に気付きましたわ。信仰心が人間のスペックを飛躍的に高めているのです。これはあなたの生み出した法則ですね」
「ああ、信者を集めるのに都合が良くてね。選別された民が神を崇めることでさらなる力を得ることができたよ……まさか邪教を広めて対抗してくる冒涜的な者がいるとは思わなかったが」
目の再生を終えた神が刺突を放つ。
連撃が私の手足や心臓、顔面を貫いた。
しかしこれくらいで私が死ぬことはない。
増殖させた魂で回復しつつ、電動ドリルで神の顎に穴を開けた。
「実際に信仰心の影響を受けたことで、私はその構造を理解し、魔力の波長を合わせられるようになりました。普段は何の役にも立たない技能ですが、信仰心の力をベースにした存在には効果抜群ですわ」
「……つまり、神への対抗策か。だから攻撃が通じているのだね」
「ご名答ですわ」
頭突きと同時に額のチェーンソーを押し付ける。
刃先が神の首と胸元にめり込み、悲鳴を上げながら潜り込んでいく。
神は槍で押し返しながら絶叫する。
「狂人のくせに小癪な真似を! 神の力を横取りするとは無礼だと思わないのかッ!」
「生憎と無神論者ですの。あなたの戯言なんて興味ありませんわ」
そう言い放った私は、首を引いてチェーンソーを抜く。
神は吐血して地面に膝をついた。