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第9話 絶体絶命ですわ

 魔術と銃弾の殺戮を経て、広間から生徒がいなくなった。

 生き残っている者は逃げ出しており、残されたのは死体だけだ。

 静寂に包まれた室内に拍手の音が響き渡る。

 出入り口から顔を出したリエンは、手を叩いて私を称賛する。


「凄まじい才能と力だな。只者じゃないのは分かった。気を抜いたら死んじまいそうだ」


「お褒めに預かり光栄ですわ」


 指先に魔力を圧縮し、レーザーのように発射する。

 それはリエンの胸に命中して外套を貫いた。

 リエンは僅かに仰け反るも、倒れることはなかった。

 飄々とした顔付きに変化はなく、こちらの反応を楽しんでいるようにさえ見える。


 リエンは嬉しそうに外套をめくった。

 そこには漆黒の鎖帷子があった。

 魔力耐性の高い金属に特殊な加工を加えた防具だ。


「俺に魔術は効かんよ。対策はしっかりやってる」


 笑うリエンが人差し指を上に向ける。

 すると、床を破って爆炎が噴き上がった。

 爆炎は次々と炸裂しながら私にもとへ迫ってくる。


 私は跳躍し、折れた日本刀で天井を切り割った。

 上の階によじ登った直後、足元を掠めるように爆炎が通過する。

 あと少し遅ければ丸焼きにされていた。

 私は早足で別の部屋に移動しながら考える。


(高火力の魔術を無詠唱で連発してくる……厄介極まりない)


 限りなくシンプルな戦法だ。

 それでいて弱点らしい弱点がない。

 攻撃魔術の達人と称されるのも納得である。

 魔女として恐れられた全盛期のマリスでも苦戦しかねなかった。


「ちくしょうですわ」


 思わず悪態を洩らしていると、近くの階段をリエンが上がってきた。

 彼が片手をかざした瞬間、周囲一帯が凍り付く。

 私は反射的に飛び退くも間に合わず、膨張する冷気に触れてしまった。


 刹那、全身から温度を奪われていく。

 足腰に力が入らないせいで滑って転んだ。

 右脚に亀裂が走り、硬い音を立てて崩壊する。

 凍って脆くなっていたようだ。


 再生魔術を発動させるが、断面が凍っているせいで上手く治らない。

 よく見ると、付着した氷が魔力を奪って阻害している。

 間違いなく意図的な効果だろう。


 立ち上がれない私に対し、リエンは余裕綽々な態度を隠さない。

 必要以上に距離を詰めずに、彼はただ冷気の放射を続ける。

 このまま私を氷漬けにするつもりなのか。

 表面上は飄々としているものの、実際は用心深く他人を決して信用しない。

 攻略対象の一人である彼の性格はよく分かっていた。

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