第88話 意地の攻めですわ
銃撃を受け切ったユウトは澄まし顔で頭を掻いた。
そして丁寧な口調で私に解説する。
「僕は色んな耐性系スキルを持ってるんで、即死級の攻撃でも通じないですよー」
「知ったこっちゃないですわ」
私はゴーストモードでマシンガンを打ち続ける。
黒炎を纏う弾丸がユウトに当たるも、やはり手応えはない。
ユウトは欠伸を漏らして鼻を鳴らした。
「いやいや効きませんて。学習してくださいよー」
弾切れのマシンガンを捨て、魔術による爆撃を始める。
周辺一帯を消し飛ばす勢いで仕掛けるも、ユウトはその場から動かずに棒立ちしていた。
傷一つ負うことなく、ユウトは聞いてもいない自分語りをする。
「察しちゃってますよねえ? 実は僕、異世界人なんですよ! しかもチートてんこ盛りのレベル999! 無双俺TUEEEってやつですよ、なはは!」
「あなたの素性なんて興味ありませんわ」
私は駆け出した。
両手に丸鋸と電動ドリル、額からチェーンソーを生やして突進する。
予想外だったのか、ユウトが間抜けな声を出した。
「ほ?」
「私の前に立ちはだかるなら、何者だろうとぶっ殺すだけですわ」
丸鋸がユウトの肩に食い込み、電動ドリルが股間を捉え、チェーンソーが眼球に刺さる。
三重奏の稼働音に合わせて、ユウトが甲高い笑い声を上げた。
「ぎゃひひひい、ひひひひっひひひははははは!」
ユウトの両手が丸鋸と電動ドリルを掴む。
どちらも皮膚すら切り裂けずに勢いが殺されていく。
無傷の眼球でチェーンソーを押し留めながらユウトは嘲笑してくる。
「だぁかぁらぁ! 僕は完全無敵なんですって! 何度言ったら分かるんですかねえ! 馬鹿は理解が足りないから困――」
ユウトの言葉が途中で止まった。
彼の胴体を囲うように小型の魔法陣が形成されていた。
その魔法陣が瞬時に縮んでユウトを締め付ける。
ユウトは目を見開いて呻いた。
「おびょっ!?」
「愛する女を悪く言う奴は許ねえよ」
静かな怒りを滲ませて現れたのはリエンだった。
彼の制御により、ユウトを拘束する魔法陣がどんどん縮小していく。
それにしたがってユウトが苦しそうに抵抗する。
「うぐぐぐぐぐっ!?」
先ほどまでの演技とは明確に違う。
ユウトは驚きと苦痛に苛まれ、必死に拘束を抜け出そうとしていた。
口の端からは血も垂れている。