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第85話 使者が来ましたわ

 布教活動と妨害工作を続けるある日、リエンが報告にやってきた。

 彼は珍しく困惑した様子で切り出す。


「神聖国から使者が来たぞ」


「使徒ではなく使者ですか?」


「ああ、使者だ。なんでもマリスと話したいことがあるらしい」


 あまり想定していない展開だった。

 私は真っ先に浮かんだ疑問をリエンにぶつける。


「あなたの結界で来訪を防げなかったのですか?」


「ああ、よく分からんが素通りされた。妙な能力を持っているらしい」


 リエンは悔しげに唸る。

 結界による防備に相当な自信があったのだろう。

 難なく突破されたことでプライドを傷つけられたらしい。

 話を聞いていたレボが間に割って入りながら発言する。


「罠の可能性あり」


「レボの言う通りだ。わざわざ相手をしてやる必要もない。なんなら俺が殺してくるか」


「いいえ、私が出向きましょう。その使者とやらに興味がありますわ」


 私は歩き出した。

 魔力感知を発動し、使者の位置を特定して向かう。

 すぐにリエンが追従してきたので指示を送る。


「使者が囮の可能性がありますわ。周囲の警戒をお願い致します」


「おう、任せとけ」


 リエンと別れて足早に移動する。

 数分後、到着した来賓室には一人の男が座っていた。

 年齢は三十代半ばくらいで、神聖国の高官用の制服を着ている。


 男は仮面のように嘘くさい笑顔を貼り付けていた。

 姿勢よく座る様も演技がかっており、一目で信用ならない人間なのが分かる。


 私は男を観察しながら対面のソファに座った。

 足を組んで優雅に見つめて微笑む。


「お待たせしましたわ」


「いやいや、お気になさらず!

こちらから急に来たわけですから、むしろ時間を取ってくださりありがとうございます!」


 男は大げさに反応しながら立ち上がって頭を下げた。

 不自然すぎるほど慇懃な態度である。

 座り直した男は元気に名乗る。


「はじめまして、僕は神聖国の使者ユウトと申します! よろしくお願いしますー!」


「マリステラ・エルズワースですわ。こちらこそよろしくお願いします」


 挨拶もそこそこに、私はさっそく本題へと移る。


「それで用件は何でしょう? 我々は平和的に対話できる間柄ではないと思うのですが」


「決め付けは良くありませんよ、エルズワース様! 確かに僕達は戦争中です。しかし! それを止める方法があります!」


 使者ユウトは前のめりになって熱弁する。

 見開かれた目は瞬きせずに私だけを凝視していた。

 ユウトは両手を広げて、歌うような調子で提案をする。


「僕達が停戦協定を結べばいいのですッ! レッツ平和! ゴートゥーハッピー!」


 そのふざけたテンションと勢いに、私は固まってしまった。

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