第84話 信者と書いて儲けですわ
神聖国に侵入してからおよそ三ヶ月が経過した。
来たる使徒や神との戦争に向けて、私は着々と計画を進めている。
まずは神聖国の各所に拠点を作り、堂々と反逆活動を開始した。
徹底して相手の信者を減らしつつ、不意の襲撃にも備える。
今の私ならば瞬殺されることはないだろうが、用心するに越したことはない。
一周目は慢心で台無しにされたので尚更だ。
私が虐殺と勧誘を行う一方、正規軍からの攻撃はリエンとレボに守らせている。
未だかつてない損害を受けた神聖国は焦っていた。
私達の殺害ばかりか、寝返った民すらも標的に定めており、無差別攻撃が実施されている。
今のところはリエンの結界で防衛できているが、このまま長期戦になると不利だ。
せっかく集めた信者を皆殺しにされるのは避けたい。
そのため、私は正規軍の進路を妨害するように反撃するようにした。
執拗な襲撃が功を奏したのか、最近では膠着状態が続いている。
「異教徒はすべからく処刑ですわぁ!」
広場で宣言する私の前には、串刺しになった生首が並べられていた。
私の邪教に抗議運動を行った者達の末路である。
昨日は公開拷問の後にギロチンで首を切り落とした。
そのおかげで話題性は非常に高く、今も民衆が恐怖に怯えながら見守っている。
とにかく思い付く限りの残虐行為を見せつけることが重要だった。
私達に歯向かうことが何を意味するかを伝えねばならない。
これで裏切ろうという考えは萎えるはずだ。
「晒し首は人間として最大の恥ですわ。つまりこの方々は限りなく愚かなのです。どうしてこうなったか分かりますでしょうか?」
私が問いかけると、一人の信心深い青年が挙手をした。
青年は興奮気味に答えを叫ぶ。
「マリステラ様の素晴らしい教えに異を唱えたからです!」
「その通りですわ。皆様はこの方々のような愚行を犯さないよう気を付けなさい」
そう言い残して私は広場を立ち去る。
信者達は慌てて道を開けると、私を賛美しながら平伏した。
しっかりと教育が行き届いているようだ。
私は民衆の間を闊歩しながら、洗脳魔術を振り撒いていく。
赤い粒子が散布されて、それを吸った民衆の目つきが変わる。
言葉だけの忠誠も、やがて本物になっていくだろう。
ちなみに、呼びかけの途中で発言した青年は魔術で洗脳した仕込みだ。
事前にあのタイミングで周囲を扇動するように命じていたのである。
既に青年のような傀儡は何人も用意している。
彼らは私の命令ならばどんなことでも実行してくれるはずだ。
(この街の信仰心は十分に高まっている。他の拠点も同じように盛り上げなければ)
信仰心が理外の力を生み出す。
それは神聖国の専売特許というわけではない。
数々の布教により、私の力も徐々に増大していた。
この調子で決戦の支度をするつもりだ。