第82話 運命的な宿敵ですわ
私が降壇すると、そこではリエンとレボが待っていた。
他にもこの街の責任者達がいるが、こちらに来ようとしないばかりか、目を合わせようともしない。
下手に関わるとろくなことにならないと理解しているのだ。
実に賢明な判断である。
リエンは拍手をして私を出迎えた。
「見事な演説だったな。これで信者はさらに増えるはずだ」
「当然の結果ですわ。入念に練習をしていましたもの」
地下のロボット工場を壊滅させた後も、私達は神聖国での虐殺を繰り返していた。
村や街に出向いては脅迫に等しい形で名ばかりの邪教を宣伝している。
先ほど演説を聞いていた民衆もその犠牲者であった。
逆らえない状況下に置かれた彼らは、国を裏切って邪教に傾倒したフリを強いられている。
ある意味では一番の被害者かもしれない。
無論、そのような展開を神聖国が許すはずもない。
派遣された現地軍と何度も交戦したが、私達が負けることはなかった。
無茶な深追いはせず、向こうの戦力を削りながら居場所を誤魔化して、ゲリラ的な動きで錯乱させている。
別に正面戦闘でゴリ押しは可能だが、消耗戦になると余計なリクスが増えて面倒だ。
神聖国のテクノロジーを考えると、不意のミスで形勢を覆されるパターンも十分にありえる。
現段階では積極的に攻め立てる必要もなく、あくまでも布教がメインの目的のため、ヒットアンドアウェイ戦法を意識していた。
今はじっくりと盤面を進めていきたい。
静と動を使いこなすのだ。
破滅を経験した私ならば、それができる。
私は人間形態のレボを見て、微笑みながら尋ねる。
「先ほどのパフォーマンスはいかがでしたでしょうか?」
「完璧である」
「まあ! 嬉しい評価ですわ」
私が喜んでいると、リエンが手を打って注目を集めた。
彼は話を本題へと移していく。
「次はどうする。そろそろ首都に乗り込むか」
「いいえ、まだ準備が足りませんわ。ここでしくじると、すべて破綻しますので慎重に進めます」
「意外だな。マリスなら速攻で乗り込むかと思ったんだがね。宗教活動が楽しくなったか?」
リエンが茶化すように言う。
私は意味深に首を傾げてみせると、彼が怪訝そうな顔をする。
私は伝えていなかった新たな真実を告げる。
「この国には神が降臨します。対策しなければ私が滅ぼされますわ」