第72話 ロボット大戦ですわ
一時間後、私達の頭上ではロボット同士で殺し合っていた。
迸る熱線が天井を焼き切り、爆発した機体が精密装置を吹き飛ばす。
SF映画のような大迫力の戦いが繰り広げられていた。
落下してくる金属部品を弾きつつ、私は心を躍らせる。
「壮観ですわね。神聖国に来た甲斐がありましたわ」
私の魂を植え付けたロボットは反旗を翻し、現在進行形で破壊活動を行っていた。
暴走状態で地下施設の機能を叩き潰している。
魂が入っていない正常なロボットが鎮圧に動いているものの、激戦のせいであまり上手くいっていない。
戦力が拮抗していることに加えて、互いに新たなロボットを投入するせいで膠着状態に陥っていた。
そのような環境で、私達は優雅に地下空間を見学している。
ついでに構造を調査して、神聖国の内部事情を解き明かそうとしていた。
まずこの国は地下全体が工場になっている。
その広さは果てしなく、いつまでたっても端に辿り着かない。
どこまでも無尽蔵に増築を繰り返して今の状態に至ったようだ。
未確認だが、地上からは人間の気配がする。
おそらくは民の街があるのだろう。
そこに繋がる道が見つからないので現状は放置している。
まあ、その気になれば力任せに地上までぶち抜けるのだがそれではロマンに欠ける。
時間はいくらでもあるのだから、後ほど調べればいいだろう。
戦闘はロボットに任せて歩いていると、前方の自動扉が開いた。
現れたのは数十人の人間だ。
揃いの軍服で武装した彼らは、銃に近い形状の魔術杖をこちらに向けている。
リエンは面白そうに身構えた。
「おっ、あいつらは誰だ」
「神聖国の軍……いえ、特殊部隊かもしれませんね」
私達はおよそ二十メートル程度の距離を置いて対峙する。
睨み合いの中、先頭に立つ銀髪の男が前に進み出た。
その顔に見覚えがあった。
(……ここで攻略対象が出てくるか)
銀髪の男の名はアレム。
ゲーム本編における留学生キャラだ。
優等生の魔術師で、神聖国の首席という設定である。
どこかでとっくに死んでいるかと思っていたが、まさかこんなところで出会うとは思わなかった。
アレムは肩に銃を担いで私に告げる。
「魔女よ。俺様の妻になってくれ」
「夫は一人で十分ですわ」
即答した私は、創造したミサイルを彼らに向けて叩き込んだ。