第70話 宗教戦争ですわ
この状況下でもリエンは涼しい笑みを浮かべていた。
彼は合掌し、練り上げた魔力で術を構成する。
「魔術の神髄を見せてやるよ」
周囲に薄紫色の結界が展開された。
そこに光の矢が炸裂するも、一本たりとも突破してこない。
属性や術式の相性を考慮した完璧な結界なのだろう。
手軽にやっているように見えて実際は絶技に等しかった。
よく見ると、結界の表面に光の矢が堆積している。
粒子状に変形しながらも消えずに残っていた。
リエンは悪い笑みで指を鳴らす。
「そら、食らいな」
次の瞬間、結界が破裂した。
その弾みで粒子の光がロボット群に向けて拡散された。
ロボットは粒子に撃ち抜かれて次々と爆発していく。
防御系の魔術を使っているものの、あえなく貫かれていた。
攻防一体を実現したリエンは、じりじりと前進して破壊領域を広げていった。
一方、レボも動き始めていた。
スライム形態で素早く地面を這い進み、ロボットとの距離を詰めている。
光の矢が何度も直撃しているが、魔王の加護でしっかり吸収していた。
その影響なのか、移動スピードがどんどん上がっている。
「我は無敵なり」
勢いよく跳ねたレボがロボットの内部に侵入した。
ロボットは光の矢を他の機体に乱射して同士討ちを行う。
レボが内部から操っているらしい。
なかなか面白い戦法を考えるものだ。
「私も活躍しますわ」
ゴーストモードを発動し、黒炎を放射してロボットを焼き尽くしていく。
ついでに吸魂の魔術で回復も済ませておいた。
ロボットに魂はないが、代わりに燃料の魔力を奪うことができる。
私達が相手なので雑魚キャラ扱いになっているものの、ロボットは非常に高性能な上に潤沢な魔力を有している。
回復手段にはちょうどよかった。
仕上げに何度かミサイルを叩き込み、私はロボット群を再び殲滅した。
リエンとレボも無事に生き残っていた。
「ふう、第二波も終わりか。キリがないからそろそろ進もうぜ」
「そうですわね。このまま計画を進めましょう」
隠密効果のある結界で居場所を誤魔化しつつ、私達は草原を移動する。
はるか先に魔力反応が集まっている。
おそらくそこに街があるのだろう。
術の維持をしつつ、リエンが私に問いかけてきた。
「なあ、さっきの計画って何だ。信仰が標的とか言ってたのと関係あるのか」
「我も興味あり」
レボも話に食いついてきた。
私は端的に目的を明かす。
「この神聖国で邪教を広めるのです。恐怖で洗脳して、私がアイドルとして君臨するのですわ」