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第7話 いけ好かない男は血祭りですわ

 強烈な閃光が網膜を焼く。

 その直後、大爆発によって私は吹き飛ばされた。


 数秒の浮遊感を経て地面に激突した。

 数メートルほど転がってから無様に倒れ伏す。

 高熱の苦しみを味わいながら私は吐血した。


 三階にある学園長室の壁に穴が開いて、そこからリエンが見下ろしている。

 あそこから私は落下したらしい。

 額が切れたのか、視界が赤く染まり始める。


(予想外の力……迂闊だった)


 火球が眼前で破裂した。

 私が回避も迎撃もできないタイミングだった。

 緻密な魔術制御が前提となる技を、リエンは挨拶代わりに放ってきたのである。


(まさかここまでの強さだったとは)


 一週目の世界で、私はリエンと戦わなかった。

 彼は学園側の人間だが戦闘訓練の指導官に回っており、戦場に出向くことを面倒臭がった。

 だから直接的に敵対することはなかった。


 乙女ゲーム由来の知識も心許ない。

 リエンがシナリオ内で活躍する場面は何度かあったものの、いずれもテキストや一枚絵で分かる範疇だ。

 アクションゲームではないため、そこまで詳しく描写しているわけではなかった。


 設定上、普通の魔術師より優れているのは間違いない。

 ただ、リエンが具体的にどれほどの力量かは不明だ。

 それを今、私は誰よりも実感していた。


 私は立ち上がろうとして、右腕の肘から先が欠損していることに気付く。

 断面が焼け焦げて骨が露出していた。

 爆発で吹き飛んだのだろう。


 見れば両足もそれぞれ損傷し、ほとんど千切れかかっている。

 まともに立てない状態なのは言うまでもない。

 傷口から断続的に血が噴き出している。


「クソ痛えですわ……」


 呻く私は再生魔術を行使する。

 すぐさま断面から真新しい手足が生えてきた。

 物質創造で制服も修繕したいところだが、魔力に余裕がないため後回しにする。

 折れた日本刀を片手に立ち上がり、裸足で大地を踏み締めた。


 一方、リエンが学園長室から飛び降りた。

 彼は魔術の風で落下速度を緩めて着地すると、これ見よがしに両手を広げて微笑する。

 飄々とした態度が鼻につくが、見合うだけの実力を備えている。

 リエンは赤髪を掻きながら話しかけてきた。


「完璧な再生魔術だな。温室育ちのお嬢様が使えるもんじゃない。何者だ」


「ただの悪役令嬢ですわ」


 答えながらマシンガンを創造して撃ち込む。

 リエンは隆起させた大地を盾に弾を防ぐ。

 彼はひょこりと顔を見せて苦笑した。


「まあ落ち着けよ。俺は殺し合いに来たわけじゃない」


「では何の用かしら」


「手を組みたい。一緒に世界を引っ掻き回そうぜ」


「お断りですわ」


 走り出した私はマシンガンの弾をばら撒いた。

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