第69話 光の尖兵ですわ
草原を歩いていると、退避していたリエンとレボがすぐに追いついてきた。
二人は苦々しい顔で文句を言ってくる。
「危ないことをする時は事前に言ってくれ……」
「生命の危機」
「あら、ごめんあそばせ」
私は微笑を張り付けたままお嬢様っぽく謝る。
その直後、あちこちから大音量のサイレンが聞こえてきた。
破壊した防壁に警報系の術式が仕込まれていたのだろう。
私がまとめて吹き飛ばしたことで一斉に機能したようである。
間もなく草原の地面がめくれ上がり、内部からスマートなフォルムのロボットが何体も出現した。
背中には天使のような羽が付いて、光り輝く弓矢を持っている。
ロボット達は神聖国の警備兵だろう。
登場の仕方も含めて、世界観を無視しすぎではないか。
ゲーム本編ではここまでのオーバーテクノロジーは出てこなかった。
もしかすると秘匿した技術なのかもしれない。
私達のもとへ駆けつけるロボットを見て、リエンは大げさに嘆く。
「こんだけ派手にやればそりゃ見つかるか。もう少し賢くやろうぜ」
「コソコソするのは性に合いませんわ。最大火力で突破するのが最も利口ですのよ」
「そうかいそうかい……まあ文句は言わねえよ。俺達は休んでるからさっさと片付けてくれ」
「承知しましたわ」
頷いた私は両手を前にかざして構える。
徐々に青い光が発生して指先に注がれていった。
光が最高潮となった瞬間、私はそれを一気に解き放つ。
「冥王の力をお見せしますわ」
青い光が前方に波及した。
それを浴びたロボット達はあっけなく崩れ落ちて砂と化す。
警備兵は一秒と持たずに全滅してしまった。
今のは死の概念だ。
冥王と同じように付与したのである。
物理的な破壊力は皆無だが、耐性がなければ生物だろうと機械だろうと即死させる理不尽な技だった。
腕を下ろした私は、息切れを自覚する。
魔力も枯渇寸前だった。
(射程の短さと消耗の激しさは練度の問題か)
防壁の破壊とロボットの殲滅のたった二発で、私はガス欠しかけていた。
調整が完璧でなかったのが原因だろう。
冥王の力は強力だが扱いが難しい。
大規模攻撃は普通の魔術の方が良さそうだ。
一部始終を目撃したリエンは拍手をして私を褒め称える。
「さすがマリスだな。今の戦力を一撃かよ」
「壮観なり」
レボも恭しい態度で感激している。
そんな二人のリアクションに満足していると、空の彼方から数百体のロボットが追加で飛んできた。
私は深呼吸をして二人に告げる。
「第二波が来ますわ。今度は手伝ってくださいね?」
「おう、任せとけ」
「承知。魔王の威光を知らしめよう」
光の矢が降り注ぐ中、私達はそれぞれ動き出した。