表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/105

第64話 あっけない最期ですわ

 冥王が猛攻がミアをボロボロに壊していく。

 満身創痍のミアは無抵抗に殴られるばかりだった。

 まともに再生できていないのは、絶え間なく死の概念を叩き込まれているからだろう。

 魔王ジキルの力を手に入れて、数多の亡者の魂を吸収した状態でも、怒り狂った冥王の暴力には抗えないのである。


 一度は使役まで至ったはずだが、両者の実力差は決定的だった。

 冥王の怒りを加味しても圧倒的な隔たりがあるように感じる。

 おそらくミアは奇襲に類する方法で勝利したのではないか。

 首を切断するだけのパワーはあったようなので、不意打ちで戦闘不能に持ち込んだに違いない。

 死後、彼女が掴み取った能力は凄まじく強い。

 やり方次第では、格上の冥王を仕留めても不思議ではなかった。


 私は手出しせずに傍観に徹する。

 ミアが無惨な肉塊になっていく様は痛快だった。

 この手で始末したい気持ちも山々だが、こうして眺めているのも悪くない。

 私は創造した衣服を着込みつつ、その場に座り込んで時間を潰す。


 そうして日が沈んだ頃、冥王がようやく攻撃を止めた。

 執拗に殴られたミアは肉のスープになって痙攣している。

 人間らしき部位が一つも残っていないが、あの状態でも生きているらしい。

 信じがたい生命力である。

 特殊な手法で蘇ったことで生死が曖昧になっているのだろう。


 冥王がミアの残骸に顔を近づけて凝視を始める。

 肉スープのミアが泡立って蒸発し、そのまま消えてしまった。

 死の概念のダメ押しで魂が潰れたようだ。


 戦いを終えた冥王が私のもとまで歩いてきた。

 すぐそばで立ち止まり、無言で見下ろしてくる。

 死の概念を与えるためではない、感謝の念を込めた眼差しだった。


(まさか解放の礼を言いに来たのか?)


 一切喋らないので正確な意図は不明だが、冥王に攻撃の意思はないようだ。

 私の爆発でミアの使役から抜け出せたと理解しているらしい。

 もしかすると、私が善意で助けたと思われているかもしれない。


 冥王の考えを推測した私は微笑を返した。

 そしてゆっくりと片手を伸ばす。


「礼には及びませんわ」


 私の手を引き裂いて現れたのは、赤黒い錆に塗れた禍々しいチェーンソーだった。

 黒い火花を散らして、けたたましい稼働音を響かせながら刃を回転している。

 振り上げたチェーンソーが冥王の顔面を叩き割った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ