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第62話 繋がりは大切ですわ

 封じられた冥王の自我は、私にとって逆転の糸口となる要素だった。

 ミアの支配が表面的なもので、絶対的ではないことの証明だからである。


 死の概念が浸透した私の身体は砂のように崩れていく。

 再生魔術も機能していない。

 既に手遅れな領域まで至ったせいだろう。


 それでも私は冷静だった。

 刻一刻と迫る死を認めつつも、震えて動かない冥王に注目する。

 私に思考を覗き込まれた反動なのか、先ほどよりも意識が強まっていた。

 同時に抵抗力が増し、ミアの命令に逆らっているようだ。


「何してんのよ! 早くぶっ殺しなさいって!」


 ミアが怒鳴り散らすも、冥王は従わない。

 今にも攻撃を再開しそうだが、紙一重のところで耐えていた。


 千載一遇のチャンスを得た私はケルベロスの頭部に改めて注目する。

 これは単にミアの悪趣味なイタズラというわけではない。

 きっと魔術的な意味が込められているのだ。


 まず醜悪な獣の頭を繋げるという行為で、冥王の存在の規格を落とす。

 さらに地獄の"番犬"という属性を与えて使役しやすいように改造したのだろう。

 首輪と鎖も分かりやすい象徴である。


 本来、冥王は個人が操れる存在ではない。

 たとえミアが大幅なパワーアップを遂げても同様だった。

 だから彼女は、隷属させるための細工を施したのだ。

 狂ったように振る舞いながらも、実際は巧妙に準備を進めていたのである。


 仕組みを理解した私は、すぐさま吸魂の魔術を発動した。

 このまま丸ごと取り込むことができれば楽なのだが、生憎とそれは不可能に近い。

 私と冥王では存在の規格が違う。

 ケルベロスの頭部で格落ちしても結果は変わらず、逆に吸い尽くされそうな勢いだった。


(だけどこれでいい。これがいいんだ)


 死の概念による共感と、魔術を介した魂の綱引き。

 二つの繋がりを築くことが、私の狙いだった。


 これで私と冥王は疑似的な運命共同体となった。

 一方が生きている限り、もう一方が死ぬことはない。

 私達の間であらゆるダメージが共有されるため、無敵に近い冥王を傷つけることができる。

 死の概念による崩壊も踏み倒し放題だった。


 私はそのまま冥王の身体をよじ登り、至近距離でケルベロスの顔面と見つめ合った。

 そこでほくそ笑み、ミサイルを創造して三つの口に詰め込む。


「ICBMですわ」


 間もなくミサイルが作動し、視界が閃光に包まれた。

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