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第54話 またもや再会ですわ

 通りをしばらく進むと、巨大なレンガ造りの建造物が見えてきた。

 元はさぞ立派だったのだろうが、外壁が崩れて内部が丸見えだ。

 廊下を歩く人間が私達を見て仰天し、どこかへと走り去っていく。

 私達の到来をどこかへ報告しに行ったのだろう。


 あの建物こそ大統領の官邸である。

 かつてリエンが暗殺のために潜入した場所だ。

 外観が半壊しているのも彼の魔術が原因と思われる。

 案の定、リエンは苦笑気味に呟いた。


「おお、ぶっ壊れたままじゃねえか。修繕の余裕もないのかね」


「それだけ政府の機能が鈍っているのでしょうね。この街がまだ平穏なのが奇跡に近いですわ」


「その奇跡を台無しにするのが俺達だけどな」


 嬉しそうに身構えたリエンは、魔術の構築を始めた。

 大いなる力の渦を感じる。

 初手で強烈な術を叩き込んで勝負を決めるつもりらしい。

 情けも容赦もなかった。


「さて、臨時の大統領と平和的に話し合うか」


 リエンが術を放つ寸前、突如として官邸が木っ端微塵に吹き飛んだ。

 建物全体が一瞬にして瓦礫の山となり、辛うじて残っていた原形すら失われる。


「あぁ?」


 魔術を中断したリエンは怪訝そうにする。

 とびきりの攻撃を撃ち損ねたことでやや不機嫌だった。

 それでも即座に魔術探知を発動する辺り、彼の根本的な力量が窺える。


 官邸跡の上に人影が浮いていた。

 私は目を凝らして驚く。

 腕組みをして堂々と見下ろしてくるのは、死んだはずの主人公ミアだった。


「ようやく見つけたわ。クソ女」


 憎悪を剥き出しにしたミアが睨み付けてくる。

 彼女は首から下をぴっちりとした黒い布を何重にも巻き付けて覆っていた。

 布は魔力が物質化したもののようだ。

 属性は闇や影だろうか。

 古代の魔王ジキルと同じ気配を感じる。


 服装だけでなく、ミア自身も何かおかしい。

 纏う雰囲気が以前までと別物だった。

 肉体から生気が抜け切っており、冷気に近いものを内包している。


 使役されたアンデッドとは根底から違う。

 純粋に進化を遂げて、そこに突然変異を加えたような印象だ。

 経緯は不明だが、死から蘇ったことで存在としての臨界点を超えたらしい。


(まさか二度も復活するなんて……)


 私は隠さずに舌打ちする。

 いくらなんでもしつこすぎるのではないか。

 地獄以外でミアと再会する羽目になるとは思わなかった。

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