表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/105

第5話 この想いは誰にも止められませんわ

 私は悠然と廊下を歩く。

 口笛で乙女ゲームの主題歌を奏でながら、握ったナイフを前後に振る。

 靴が血で濡れているせいで、赤い足跡ができていた。

 制服も返り血で汚れているからあとで着替えないといけない。


 階段を上がったところで、前方から数人の守衛が来た。

 彼らは剣や槍で武装している。

 杖を持っているのは魔術師だろう。

 決死の形相の守衛達を見て、私は笑みを深める。


「上等ですわ。悪役令嬢の暴力をお見せ致しましょう」


 身体強化の魔術を発動し、床を蹴って加速した。

 守衛達の間を駆け抜けながらナイフを振り回し、突き当たりの壁に触れて止まる。

 ゆっくりと振り返ると、守衛達が首から鮮血を噴き出していた。

 彼らは悲鳴も上げられずに崩れ落ちる。

 血だらけの廊下で私は気分よくステップを踏む。


 一週目の記憶と経験が役に立っていた。

 魔女になって大暴れしたマリスは、戦い方をよく心得ている。

 最終的に力を奪われて幽閉されたものの、その技術は今も残っている。

 おかげで学園の守衛くらいなら簡単に殺すことができる。


 歩き出そうとした私は、前腕の切り傷に気付く。

 どこかで相手の武器が掠ったらしい。

 そこまで深い傷ではないものの、わざわざ放っておくものでもない。


 再生魔術を行使すると、傷はあっという間に消えた。

 常時発動は消耗が大きすぎる術だが、一瞬だけ使うことで応急処置として機能する。

 その気になれば致命傷からでも復帰できるため、何度も命を助けられていた。

 物質創造に並んで便利な魔術である。


 私は守衛の死体を漁る。

 使っていたナイフは腰のベルトに差し込み、代わりに剣を手に取った。

 物質創造は長持ちせず、魔力消費も激しい。

 力の温存を考えると武器の調達も必要になってくるのだ。


 魔術師の死体からは、銀の指輪を拝借する。

 表面に刻まれた術式を見るに、魔力消費を軽減する効果があるらしい。

 これはシンプルかつ利便性が高い。

 今の私にぴったりの装備だった。


 戦利品に浮かれながら、私は学園内を闊歩する。

 途中からテンションが上がり、思わず歌を口ずさんでしまった。


「さつりくー、さーつりくー、さつりくですわぁー」


 その後も守衛を殺しながら進み続ける。

 辿り着いたのは学園長室の前だった。

 制服を整えた私は重厚な扉をノックした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ