第41話 ダークフレイム・スケルトン・チェーンソーですわ
勇者が日本刀を弾き、滑らかな動きで斬りかかってくる。
私はショットガンを創造して連射した。
剣を前に向けた勇者は、刃が発する光を広げて盾にして防御する。
そのまま強引に突進してきた。
加速した勇者に撥ね飛ばされた私は派手に地面を転がった。
止まる頃には全身の皮膚が破れて出血している。
手足の指も何本か折れてしまったようだ。
咄嗟のことで受け身を取れなかったのが要因だった。
(思ったよりも速い……これが光の加護か)
感心する間もなく、勇者が光の斬撃を飛ばしてくる。
さすがに何度も連続で喰らうのは不味い。
私はゴーストモードに変身し、黒炎を放出させて光の斬撃を遮った。
互いの攻撃がぶつかって破裂し、なんとか相殺に成功する。
ところが、その中を勇者が突っ切って聖剣を振り下ろしてきた。
私はショットガンの銃身で受け止める。
普通なら紙のように切り裂かれるところだが、黒炎を纏わせることで強度を上げたので耐えることができた。
攻撃を防がれたことに勇者は驚愕する。
「な……ッ!?」
「今度はこちらの番ですわ」
私は身を翻して短いステップで殴りかかる。
黒炎を纏う骨の拳は勇者の肩にクリーンヒットして彼を吹き飛ばした。
勇者は何度もバウンドし、通りの店に激突する。
そのまま建物の奥まで転がって姿が見えなくなった。
チャンスと思った私は、すぐさま周囲のゾンビを店の中へと殺到させる。
しかし、数秒も経たないうちに、強烈な光と共にゾンビ達は追い出されてしまった。
殴られた肩を庇う勇者は、聖剣を握って外に出てくる。
私を睨む眼差しは、未だ絶望に屈していないようだった。
気丈な振る舞いは決して虚勢ではなく、彼が真の英雄であることの証明と言えよう。
喜びが高まってきた私は人間に戻り、片腕を引き裂く形でチェーンソーを創造させた。
半端に再生した骨や筋肉が絡まって回転刃の角度を固定する。
獰猛な稼働音が鳴り喚いて血飛沫を散らした。
その様を目にした勇者が嫌悪感を露わに眉を寄せる。
「禁忌の力か……なんという禍々しさだ」
「まだまだこれからですわ」
私はチェーンソーに黒炎を付与する。
血飛沫がどす黒い液体に変わり、回転刃が骨になった。
ギョルギョルと気味の悪い音を立てて際限なく加速している。
こんなものに当たったら、人体なんて一瞬で削れるだろう。
実に素晴らしい凶器が出来上がってしまった。