第24話 ゾンビパレードですわ
室内に大量のゾンビが侵入してくる。
ゾンビはなぜか私と同じ学園の制服を着ていた。
顔も何人か見覚えがある気がする。
たぶんあそこで死んだ者達だろうが、どうしてここにいるのか。
続々と雪崩れ込むゾンビを前に、私は当然の疑問を抱く。
(誰かが蘇らせてここまで誘導した?)
目的は不明だが、使役する死霊術師がいるのは間違いない。
ゾンビは私達を凝視し、呻き声を上げて歩み寄ってくる。
ゆっくりとした動作ながらも力は侮れない。
とりあえず敵意があるのは確実のようだ。
私は涼しい顔でリエンに提案する。
「転移魔術で逃げましょう。相手をするのは面倒ですわ」
「いや、無理だ。迷宮内は魔力の流れが不安定すぎる。無理やり転移すると、壁の中に飛んじまうかもしれない」
「それなら皆殺しが最適ですわね」
私は右手にショットガン、左手に斧を創造した。
身体強化を発動して即座に突進する。
斧を横殴りに叩きつけて、噛みつこうとする数体のゾンビをまとめて切断した。
斬撃を食らったゾンビの上半身が回転しながら飛んでいく。
断面から臓腑が噴き出して、鼻の曲がりそうな臭いが爆発した。
ドリアンをドブに漬けて熟成させたかのような悪臭だった。
顔を顰めつつ、私はさらに踏み込んで斧を振り回す。
身体強化がもたらすダメージはゾンビの人海戦術を軽く凌駕していた。
押し潰さんばかりの勢いで迫る彼らを、私は斧だけで迎撃する。
ゾンビは単調な動きしか取らないので楽勝だった。
斧が間に合わない局面では、ショットガンをぶち込んでおく。
弾が切れれば新たな銃を創造し、ゾンビを追い出すように攻撃を重ねていった。
後方で術の構築を進めていたリエンも途中から参戦した。
彼は億劫そうな声を洩らしながら魔法陣を展開する。
「あーあ、ゾンビとは言え生徒を傷つけたくないんだがなぁ」
ぼやきながら放たれる高火力の魔術は、容赦なくゾンビを抹殺していく。
躊躇いと呼ばれる感情は一切見受けられない。
言葉とは裏腹に、生徒に危害を加えることを何とも思っていないのは明らかだった。
まあ、リエンの性格からして納得の行動である。
むしろここで攻撃できなかったら偽物ではないかと疑うところだった。
それにしても、魔術の流れ弾が私にまで命中しているのは勘弁してほしかった。
後でお返しに斧を叩き込まねば、と私は心に誓った。