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第23話 何事も上手くはいきませんわ

 爆風で宙を舞った私は、リエンに受け止められた。

 リエンは気楽そうに話しかけてくる。


「おお、すごい傷だな。大丈夫かい?」


「ご心配には及びませんことよ」


 私はリエンを振り払って自力で立つ。

 至近距離でゴーレムが爆発したので身体はボロボロだ。

 高熱を浴びた皮膚は焼け焦げて、所々にゴーレムの金属片が突き刺さっている。


 とりあえず再生魔術を使いながら金属片を引き抜いて捨てていった。

 放っておけばすぐに回復するので問題ない。

 血みどろで破れた衣服も物質創造で新調したいが、どうせ帰り道で汚れるのでそのままにしておく。


 私はゴーレムの残骸を一瞥してから部屋の奥を指差した。


「邪魔者は消えましたわ。聖なる宝珠を入手できます」


「しかし、こんなに強いゴーレムなら、誰が来ても負けることはなかったんじゃないか?」


「世の中に絶対はありません。より確実性の高い手段を選ぶのが一流ですのよ」


 乙女ゲームのシナリオを知る私は断言する。

 他でもないリエン自身がゴーレム討伐を達成する展開も存在しているのだ。

 今後、誰かが同じように攻略する可能性は十分に考えられる。

 だからこうして先回りしているのだった。


 部屋の奥には宝箱が置かれていた。

 開くと中には、白銀の輝きを帯びた水晶があった。

 これが聖なる宝珠だ。

 私は痛みを堪えるように目を細める。


「忌々しい光ですわね」


 肌がぴりぴりと違和感を覚える。

 例えるなら日焼けしすぎた時の感覚に近い。

 どちらかというと不快だ。

 宝珠のそばにいるだけでそんな状態になっている。


 邪悪な魂を浄化する機能を持つ聖なる宝珠は、私にとって有毒なのだ。

 リエンが平気そうにしているのは、彼の性根は邪悪とは違うからだろう。

 精神的に移ろいやすいだけで、リエンは善良な人間にもなり得る。

 一方でマリスはどの世界戦でも悪人である。

 改心ルートはあれど、浄化の対象内となるのは至極当然だった。


 ちなみに宝珠には他にもアンデッドを滅する効果がある。

 増幅装置として使えば、大規模な聖魔術を発動させるための礎にもなる。

 世界有数の秘宝として扱われるのも納得の仕様と言えよう。 


 とにかく聖なる宝珠は非常に希少で、性能面でもかなり便利だ。

 持っておくだけで役に立つものの、第三者の手に渡るリスクを残したくない。

 だからここで破壊する必要があった。


 私は手をかざして魔力を圧縮させていく。


「残念ですわね」


 魔力を撃ち出そうとしたその時、出入り口から騒音が響いた。

 私は手を止めて音の正体を確認する。

 鉄扉を破って侵入してきたのは、溢れんばかりのゾンビだった。

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