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第22話 ジャイアントキリングですわ

 ゴーレムが私を狙って腕を振り下ろしてくる。

 強力だが単調な動きだ。

 私は身体強化で加速すると、スライディングで躱して丸鋸を振るう。


 火花を迸らせながら、丸鋸がゴーレムの腕に切り裂いた。

 数センチ程度の小さな損傷だが確かに破損している。

 すぐさま叩き込まれた反撃を避けつつ、私は微笑した。


(思った通りですわ)


 ただの丸鋸なら絶対に弾かれていた。

 だから私は工夫を凝らした。

 丸鋸を創造する際、刃をゴーレムと同じ魔術合金に変えたのである。


 同じ素材ならば問答無用で負けることはない。

 さらに魔力で切れ味を限界以上に引き上げることで、不敗神話を誇るゴーレムにも通用するわけだ。

 ゴーレムの猛攻を捌きつつ、私は心の底から笑う。


「あとは削り合いですわ」


 真っ向勝負が始まった。

 私を脅威と見なしたのか、ゴーレムの攻撃が激しくなっている気がする。

 連続で叩き込まれる拳は人間を木っ端微塵にするだけの威力があった。

 私はそれを紙一重で受け流すか、避けてみせる。

 神経を使うやり取りだが、焦りや恐怖は感じなかった。

 そういった感情は、もうとっくに捨て去っている。


 と、思いきや私は足を滑らせた。

 体勢を崩した瞬間、突き出されたゴーレムの拳が眼前にあった。


「あら」


 渾身のパンチが胴体に直撃し、私は吹っ飛ばされて岩壁に激突した。

 力が入らずうつ伏せに倒れ込む。

 殴られた右半身がぐちゃぐちゃになって原形を留めていなかった。

 肉も骨も内臓も混ざり合って痛みすら感じられない有様だ。


「……油断、しましたわ」


 全身を再生させながら立ち上がる。

 追撃を狙うゴーレムは、大地から溢れ出す氷に捕まって足止めされていた。

 力任せに砕いても、それ以上の速度で氷が生成されるせいで動けないようだ。

 術を発動させたリエンが呑気そうに私のもとまでやってくる。


「おいおい、大丈夫か?」


「サポートを……お願いしたはずなのですけれど」


「すまんね。君の戦いぶりに見惚れていた」


「クソッタレですわ」


 私の苛立ちに呼応したように、額を割ってチェーンソーが飛び出した。

 つんざくような鋭い痛みが頭の中を支配する。

 苦しくて、心地よい。

 どうにも最高の気分だった。

 世界最高の美酒でもここまで酔えないはずだ。


 こぼれ出す脳漿で顔を濡らしながら、私はゴーレムめがけて走り出した。


「ぶった斬ってやりますわァ!」


「化け物モードだな。敵味方の区別は付くのか?」


 リエンのぼやきを無視してゴーレムに跳びかかる。

 まっすぐに打ち下ろされた両腕を避けて、丸鋸で付け根から切り裂いた。

 完全には切断できなかったが、ぷらぷらと揺れるばかりで動きそうにない。

 これで攻撃手段を大幅に狭められた。


 私はゴーレムの胴体をよじ登り、電動ドリルを頭部にねじ込んだ。

 当然ながらドリルも魔術合金にしている。

 鉄壁の防御力も、私の暴力の前では無に等しい。


「頭部に核があるのは知っていますわぁ!」


 電動ドリルを押し込んで頭部を一気に貫く。

 ゴーレムが大きく痙攣し、これまで以上の抵抗を始めた。

 致命的なダメージを受けて危機を察知したようだ。

 私は必死にしがみついてドリルを掻き回す。


「これでフィニッシュですわ!」


 額のチェーンソーを刃渡り三メートルまで巨大化させて、キスを迫るようにゴーレムの頭部に当てる。

 そこから勢いを付けて首を振る。

 暴れ狂う刃が核を真っ二つにし、そのまま胴体まで引き裂いた。

 重要部品を破壊されたゴーレムは大爆発を起こした。

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[一言] 「クソッタレですわ」  私の苛立ちに呼応したように、額を割ってチェーンソーが飛び出した。  つんざくような鋭い痛みが頭の中を支配する。  苦しくて、心地よい。  どうにも最高の気分だった。…
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