第21話 脳筋戦法は最強ですわ
私とリエンは大迷宮を迅速に攻略していく。
立ちはだかる存在を問答無用で抹殺し、時には床を破壊して強引にショートカットした。
そうして、あっという間に最下層へと辿り着く。
そこで待っていたのは魔術合金のゴーレムだった。
見た目は五メートルくらいの高さの銀色の箱で、頭部らしき膨らんだ部位が点滅している。
戦闘態勢に入ると柱のような手足を生やして殴りかかってきた。
このゴーレムは無敗のボスだ。
大迷宮が一度として完全攻略されたことがない主因である。
周囲には白骨死体となった冒険者の死体が散乱していた。
「ぶっ殺してやりますわぁ!」
私はガトリングガンを創造してぶっ放す。
大股で接近してくるゴーレムに次々と命中するも、甲高い音を立てて弾かれていた。
まったくのノーダメージである。
銃弾程度では破壊できないようだ。
それを見たリエンが私の前に割り込んでくる。
彼は両手に魔法陣を保持していた。
「ここは俺に任せておけ」
リエンが手を振ると、ゴーレムの足元から氷が発生した。
氷は瞬時に成長して動きを阻害しにかかる。
ゴーレムは勢い余って転倒し、そのまま厚い氷に覆われて停止した。
リエンは手をかざしたまま観察する。
「やったか?」
その直後、氷に亀裂が入った。
高熱を発するゴーレムが無理やり立ち上がって突進を再開する。
絡み付く氷を砕きながら、ゴーレムは腕を叩きつけてきた。
私とリエンはそれぞれ飛び退いて回避する。
危ういタイミングだった。
ミンチにされてもおかしくなかった。
私はジト目でリエンを睨む。
「誰に任せればいいですの?」
「……しょうがないだろ。戦いには相性ってもんがある」
リエンは、ばつが悪そうにぼやく。
言い訳がましいが、彼の弁明は間違っていない。
目の前のゴーレムの素材である魔術合金は、ほぼ完璧に近い耐性を持つ。
魔術が効きづらいのは当然なのだ。
むしろ多少なりとも術が通用しているリエンが異常であった。
(まともに戦っていても倒せませんわね)
乙女ゲームではミアの無属性の魂が討伐の鍵となった。
ゴーレムにとって唯一の弱点らしく、攻略対象にミアの魔力を付与して倒し切るのだ。
ゲーム内では軽く経緯に触れるだけで、戦闘描写があるわけではない。
だからこうして対峙すると、反則的な能力を実感できる。
私は横目でリエンを見て告げる。
「サポートをお願いしますわ」
手のひらを突き破って電動ドリルが登場した。
もう一方の手を裂き割って丸鋸の刃がせり出してくる。
耳障りな稼働音と共に鮮血が散る。
こうなったらシンプルな泥仕合で削り殺す。
身体強化で底上げしたパワーなら、魔術合金を突破することもできるはずだ。
負傷前提の作戦だが、再生魔術を持つ私ならば不可能ではない。
高笑いを上げた私は血を振り払って疾走を開始した。